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選ばれる高齢者施設になるには③

2021.10.29

 

【目次】

  1. 介護度が重くなった場合の対応
  2. 医療行為、医療依存度が高くなっても安心できる環境
  3. 施設を退去しなければならないケース
  4. 選ばれる施設になるためのポイント まとめ

 


1.介護度が重くなった場合の対応

入居者様の状態は、入居後に変化していく可能性が非常に高いです。そうした変化に備えて、施設はどのような準備を整えているかを入居前にご理解いただいておけば、「安心して入居できる施設」として選ばれるポイントとなるでしょう。

 

まず、要介護度について考えてみます。施設に入居される場合は、入居時には自立に近い状態の方でも、年数がたつにつれて要介護度が重くなるケースも多くあります。有料老人ホームのように自立から要介護度5までの入居者を受け入れている施設では、対応がどのように変化するのかをきちんと説明しておくとよいでしょう。

 

たとえば、部屋の移動が発生する場合もあります。施設によっては、重度介護者専用の居室を設けているところもあります。そういった場合は、介護度が重くなった際には専用の居室に移動する可能性もあることを事前に説明し、ご理解いただいておく必要があります。こうした専用の居室は、建物やフロアが別になっていて、介護用の居室は介護用ベッドが置かれていたり、クローゼットなどが少ないシンプルなつくりになっている場合もあります。また、浴室が室内にない場合もあるでしょう。

 

「有料老人ホーム」では、施設全体を使用する利用権契約になる場合もあり、居室専従の永住権ではないことも、事前に入居希望者、そのご家族にご説明しておきたいポイントです。要介護度が重くなった場合、追加費用が発生するか否かも大切な点です。金額によっては、資金計画にも影響を及ぼします。精算時にトラブルにならないためにも、事前の情報には含めておきましょう。

 

そのほか、寝たきりの状態でも入浴できる「機械浴」といった福祉用具がある、医師の指示にもと、医療的ケアができる看護師がいるなど、将来的に介護度が重くなった場合に利用して頂ける設備や体制についてもご案内しておくと、安心材料になります。

 

2.医療行為、医療依存度が高くなっても安心できる環境

介護度が高くなった場合に限らず、重度化が進み施設内では対応できなくなった場合についても伝える必要があります。 介護度が上がると必要な医療行為が増えます。医療的な処置が必要になった場合、どのような対応をおこなっているかは、施設選びにおいて重要なポイントの一つになります。

 

併設している、もしくは提携している病院があれば、入居者やご家族は安心されるでしょう。また、持病に関してはかかりつけの医師に継続して診てもらいたいという方もいます。そうした場合の情報共有の仕方や、処置の仕方なども丁寧にご説明しておくとよいでしょう。医療依存度が高くなった場合は、医療機関へ移ることも必要になってきます。併設する病院があればそちらへ移動となることが多いでしょう。併設する病院がない場合でも、関連する病院、提携している病院などをご紹介できるなど、対応をお伝えしておくと安心されます。

 

入居時の状況に応じた最適な環境をご提供できるのはもちろんですが、入居後に変化していく介護度の重度化に応じて、適切かつ安心していただける環境のご提案ができることが、選ばれるための要素になります。ぜひ、貴施設についてチェックしてみてください。

 

3.施設を退去しなければならないケース

これまで様々な観点から選ばれる施設になるためのポイントをお伝えしてきました。最後の観点になるのが、「施設を退去するケース」についてです。

 

これまでご説明してきたように、介護度が重度になった場合や医療的な処置が必要になった場合、自施設ではこれ以上の対応が困難になり、他施設もしくは病院に移る、ご自宅に戻っていただくといったケースもあります。看取りまで対応できる体制なのか、という点も施設選びの際に考慮されるご家族もいます。こうした場合、対応が可能なのか、可能でない場合、ご家族が安心できるような対応策をどのように考えているのかは、きちんとお話できるよう整理しておく必要があるでしょう。

 

金銭的な問題で入居を続けることが困難なケースもまれにあります。医療費など思わぬ出費が発生することも踏まえ、資金計画を考えていただくようにお話しする必要があるかもしれません。

 

また、入居者側の理由ではなく、施設側の経営上の理由で運営が困難になり、退去していただかなくてはならない事態も想定されます。介護事業者の倒産件数は年々増えており、今後も報酬減や人件費の高騰などの理由でますます増加すると予想されています。人生の終の棲家として、余生を過ごす覚悟で選ぶ施設ですので、そうした期待に応え続けられるよう、安定した経営というのは必須条件になるというのは言うまでもないでしょう。

 

4.選ばれる施設になるためのポイント まとめ

「プロが教える選ばれる施設になるためのポイント」について解説してきました。最後に、これまでのまとめとして、状況ごとのチェックポイントを一覧で振り返ってみたいと思います。

 

【見学時のポイント】

□ 職員の態度や身だしなみに問題はありませんか?
□ 見学にいらした方への挨拶はしっかりできていますか?
□ 施設内の雰囲気はよく、居心地がよさそうですか?

 

見学者やそのご家族は、職員の態度をよく観察しています。また、施設内の雰囲気、特に食堂の雰囲気は、明るく楽しい雰囲気でしょうか?

 

【食事のポイント】

□ 食べる楽しみのあるメニューになっていますか?
□ 入居者の要望に応えられる多彩なメニューになっていますか?
□ 食事の際の介助体制は整っていますか?

 

食事を楽しみにされている方は多く、選ばれる施設になるための重要なポイントです。特別なときだけでなく、日々の食事が楽しい時間になっているでしょうか?

 

【生活を楽しめる環境のポイント】

□ 施設の周辺は、出かける場所があるなど生活に張りが持てる環境ですか?
□ 家族や友人の面会、外出の自由はありますか?
□ レクリエーション、リハビリテーション、行事等にはどのようなものがありますか?

 

日々の生活を楽しめる環境は整っているでしょうか?施設内だけでなく、周辺の環境も含めて、入居者の方がいきいきと暮らせるかどうか、確認してみてください。

 

【入居前の確認ポイント】

□ 介護に対する理念を施設長がきちんと語れますか?
□ 介護度が上がった際の対応は考えられていますか?
□ 医療措置が必要になった場合の対応は考えられていますか?

 

対応できること、できないこと、できない場合の選択肢の提示など、入居を希望される方やそのご家族が、生涯にわたり安心できる条件が整っているでしょうか?

 

「プロが教える 選ばれる施設になるためのポイント」はいかがでしたでしょうか。入居を検討されている方は、不安や疑問を数多く抱えていらっしゃいます。ここで挙げた項目を軸にして、ぜひ選ばれる施設になるべく環境を整えていただければと思います。

 

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筆者:株式会社スターパートナーズ代表取締役
一般社団法人介護経営フォーラム代表理事
脳梗塞リハビリステーション代表
MPH(公衆衛生学修士)
齋藤直路

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