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業務継続計画(BCP)の策定義務化後の見直しポイント 研修・訓練などの要件など

2024.09.24

 

2024年度(令和6年度)より、すべての障害福祉サービス事業所等において以下の2種類をBCPの策定することが完全義務化されました。

  1. 自然災害発生時対応のBCP
  2. 感染症発生時対応のBCP

各事業所は、それぞれの状況に応じてこれらのBCPを作成しなければなりません。

一度策定後、見直しが必要ではないということではなく、定期的なBCPの見直し、研修や訓練を行う必要があります。

今回は策定後に見直しを行うポイントなどをお伝えします。

 

【目次】

  1. 策定後のBCPで見直すポイント事例
  2. BCPの研修とは
  3. BCPの訓練とは

 


1.策定後のBCPで見直すポイント事例

〇職員状況への周知や通知

BCPを策定しても、従業員に内容が十分に周知されていないケースがあります。これにより、緊急時に適切な行動がとれず、計画が機能しない事態に陥る可能性があるため、策定したBC Pの周知と理解を進める必要があります。

研修・訓練を定期的に年1回行なうこと(※サービス種類による)、新規採用時にBCPについて伝えておくことが推奨されています。

 

〇災害があった際の復旧目標の見直し

災害発生後の通常営業を行なうまでの復旧目標が現実に即していないため、実行不可能なBCPになっているケースがあります。具体的には:

・備蓄品や施設・職員の状況を遥かに少ない/超えた目標設定 各種インフラの復旧時間の設定

・職員の参集基準

・営業開始の時期

・営業休止にする時期

・利用者のサービス継続の優先順位

・お風呂が使用できない場合の対応

・感染症の利用者へのサービス提供の対応

・感染症の利用者へサービスを行った職員の対応 など

 

〇代替案の見直し

適切な代替案が定まっていないために、実際の災害時に行動に移せないケースがあります。例えば:

・バックアップ施設の未確保

・代仕入業者の未選定

・重要データの分散保管の不備

・利用者の受け入れ施設

・パソコンが使えない場合

・車両が使えない場合

・水の未確保

・食料の未確保

・暖房機器の未確保

・職員が出勤できない場合の対応

・職員が感染症に発症した際の対応 など

 

〇通信手段の見直し

電話やFAXによるコミュニケーションが重要な役割を果たしている場合が多く、通信手段の対策が不十分なケースがあります。例えば:

・災害時の通信手段の確保不足

・重要データのバックアップ不足

・従業員の安否確認システムの未整備

・LINE含めた複数の連絡手段の確保

・連絡をする優先順位

・連携事業所の連絡 など

 

〇設備・備蓄品の見直し

設備関係の定期的な見直しや改善を怠ると災害時に大きな被害が出ることがあります。例えば:

・事業所設備の劣化確認

・備品の耐用年数の確認

・備蓄品の期限の見直し

・保険関係の補償内容の見直し

・車両の置き場所など環境の見直し

・車両に持参する物品の見直し

・最新のハザードマップを確認の上で新たなリスクの見直し

・感染症発生時の隔離対応 など

 

巨大地震注意時の対応

先日初めて南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)が発表されました。今後も同じ注意情報が発表されることが予測されるため、巨大地震注意が発表された後の対応についてBCPに追加する方が望ましいと考えています。参考として巨大注意情報についてBCPを見直すポイントをまとめます:

基本的な姿勢

  1. 通常の生活を維持しつつ、地震への警戒を強める
  2. 事前避難は必要ないが、すぐに避難できる準備を整える

具体的な対応策

 1. 日頃の地震への備えの再確認

・非常用持ち出し袋の内容確認と補充

・事業所内の備蓄品の場所を再度確認

・家具の固定や転倒防止対策の点検

・避難経路や避難場所の確認

 2. 迅速な避難準備

・避難時に必要な物品をすぐに持ち出せるよう整理

・家族との連絡手段や集合場所の再確認

 3. 情報収集の強化

・テレビ、ラジオ、インターネットなどで最新情報を継続的に確認

・自治体からの防災情報に注意を払う

 4. 職場や学校での対応確認

・勤務先や学校の方針を確認

・帰宅困難時の対応や連絡方法を再確認

 5. 地域での連携強化

・近隣住民との情報共有

・要支援者の確認と支援体制の再確認

 6. 生活必需品の確保

・食料、飲料水、医薬品などの備蓄状況確認

・必要に応じて追加購入(ただし、買い占めは避ける)

 7. 心構えの強化

・家族や職場で地震発生時の行動について話し合う

・過去の地震被害や教訓を振り返る

巨大地震発生の可能性が高まっている状況下で、個人や組織が適切に準備を整え、迅速に行動できる態勢を整えることが重要です。

 

上記が策定後見直しをしていく見直しのポイントになります。

事業所においてリスクが異なるため、事業所に応じてBCPの内容は異なります。

 

2.BCPの研修とは

BCPの研修は何をすればいいのか?何をしなければいけないのか?研修を実施する際のポイントをまとめます。

1. 研修の内容

BCPの具体的内容を職員間で共有

平常時の対応について確認と理解の促進

緊急時の対応について確認と理解の促進

ハザードマップの確認

各種連絡先の順序の確認

利用者宅、職員宅のハザードマップを確認

2, 研修の形式

集合研修: 講義形式で基本的な内容を伝える

オンライン研修: 動画配信などを活用し、柔軟に受講できる環境を整える

ワークショップ: グループディスカッションなどを通じて理解を深める

3, 対象者別の研修(仮に分けて考える場合)

管理者向け: BCPの重要性、策定・運用の責任について

一般職員向け: 自身の役割、具体的な行動手順について

4, 定期的な実施

1回以上の実施が必要です(※サービス種類による)

新入職員に対しては入職時に実施が推奨される

5. フィードバックの機会

研修後のアンケートや報告書の記載を求める

報告書などをもとに意見交換会の実施を行う

職員からの質問に回答し懸念事項への対応を行う

6. 継続的な改善

研修結果を踏まえたBCPの見直しと改善

最新の情報や法令改正を反映した内容更新

7. 外部リソースの活用

専門家や行政機関による講習会への参加

他の事業所との合同研修の実施

これらのポイントを考慮し、各事業所の特性や規模に合わせた効果的な研修を計画・実施することが重要です。また、研修内容を定期的に見直し、常に最新の情報等を反映させることで、BCPの実効性を高めることができます。

 

3.BCPの訓練とは

BCPの訓練は何をすればいいのか?何をしなければいけないのか?訓練を実施する際のポイントをまとめます。:

 

訓練の種類(机上訓練がまずはおすすめです)

1. 机上訓練

シナリオに基づいて、対応手順を確認する

参加者が役割を演じながら、緊急時の対応を疑似体験する

2. 実地訓練

避難訓練や安否確認訓練を実際に行う

代替施設への移動訓練を実施する

3. 総合訓練

複数の要素を組み合わせた大規模な訓練を行う

 

訓練の内容

1. 利用者の安全確保

障害特性に応じた避難誘導の実践

個別支援計画に基づいた対応の確認

2. 職員の安否確認

緊急連絡網を使用した連絡訓練

参集ルールの確認

3. サービス継続手順の確認

優先業務の特定と実施手順の確認

代替サービス提供方法の検討

4. 備蓄品の確認と使用

非常食や医薬品の使用訓練

福祉用具の緊急時利用方法の確認

5. 関係機関との連携

地域の防災訓練への参加

他の福祉施設との相互支援訓練

 

訓練の実施方法

1. 定期的な実施

1回以上の実施が必要です(※サービス種類による)

2. 多様なシナリオ

自然災害や感染症など、様々な状況を想定する

(例)震度6の地震が発生したときにどのように行うか、感染症になった利用者へのサービスはどこまで実施するか、職員は家庭でどのくらいの備蓄品が必要になるか(参考)東京備蓄ナビを参考に、必要備蓄品を確認しながら、事業所で必要な物を想像してみることがおすすめです。

https://www.bichiku.metro.tokyo.lg.jp

3. 振り返りと改善

訓練後に課題を抽出し、BCPの見直しを行う

4, 職員・利用者の参加

可能な範囲で利用者も訓練に参加してもらうと理想的です。

ただし利用者が参加することは難しい場合が多いため、まずは職員のみで参加対応する

5. 記録の保管

訓練の内容や結果を記録し、当日訓練風景を写真に残すことが必要となる

 

これらの訓練を通じて、BCPの実効性を高め、緊急時に適切な対応ができるよう準備することが重要です。また、訓練結果を踏まえて定期的にBCPを見直し、改善していくことが望ましです。

 

 

BCP策定、研修、訓練は、運営基準違反、減算になるため、対応を進める必要はある。また災害が起こった際に事業所が想定できているかで利用者は安心して利用でき、職員が安心して働くことができると考えられます。また日頃から対策について想定していることで、実際に災害が発生した際に対応できると考えられます。

一度策定し完成ではなく、何度も見直し、研修訓練をすることで精度が高くなります。その結果、実効的なBCP策定ができると考えられます。

 

 

参考)厚生労働省 感染対策マニュアル・業務継続ガイドライン等

   障害福祉サービス施設・事業所職員のための感染対策マニュアルについて

 

 

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筆者:日本クレアス税理士法人

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