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減算リスクをゼロに!通所系サービスの法改正に対応した安定経営の実現~新年度に向けたBCP策定から処遇改善加算、生産性向上の最新事例~

2024.10.08

 

 【目次】

  1. 半年で対応を完了させるべき事項の存在
  2. 「地域包括ケアシステムの深化・推進」の分野
  3. 処遇改善加算の一本化への対応
  4. 通所系サービスにも生産性向上の取り組みは必要

 


1.半年で対応を完了させるべき事項の存在

令和6年度の介護報酬改定から半年が過ぎました。目の前の法改正対応は完了し、落ち着きを取り戻したという事業所も多いのではないでしょうか。

しかし、今回の改定では、令和7年3月を期限として、来年4月以降に大きな影響を及ぼすポイントが何点かあります。これを見落としてしまっていた場合、直前になって慌てて対応をしなければならない、もしくは対応が間に合わず思わぬ損害を被ってしまう可能性があります。

今回は、通所系サービスにフォーカスしながら、残り半年で完了しておかなければならないことを、改めて確認していければと思います。

尚、本稿と同一テーマでより詳細な解説をお届けする無料オンラインセミナー「減算リスクをゼロに!通所系サービスの法改正に対応した安定経営の実現~新年度に向けたBCP策定から処遇改善加算、生産性向上の最新事例~」20241031日に開催されます。どなたでもお気軽に参加いただけますので、是非、ご参加いただければと思います。

 

2.「地域包括ケアシステムの深化・推進」の分野

「地域包括ケアシステムの深化・推進」の分野においては業務継続計画未策定減算が創設されました。これは、業務継続計画、いわゆるBCPの策定が、感染症若しくは災害のいずれか又は両方おこなわれていない場合、所定単位の1%が減算されるという大きなものです。

 

「令和6年度介護報酬改定の主な事項について」[ⅰ]

 

経過措置期間は1年間となっており、来年の4月以降、BCPの策定が間に合っていない場合、減算が適用となります。

特に通所系サービスの場合、施設とは異なり、それぞれ環境や状態の異なる在宅の利用者の対応も検討しておく必要があります。理想としては、サービス担当者会議の際に対応を確認・合意し、それをBCPに盛り込みたいところです。そこまでおこなうとなると、1ヶ月程度では到底完了しませんので、まだ策定がおこなえていない事業所は早急な着手が必要です。

尚、減算の適用は計画の未策定のみとなり、研修の未実施、訓練(シミュレーション)の未実施は減算の適用要件とはなりませんが、義務化されているものとなりますのでこれらも併せて実施する必要があるので注意しましょう。

また、高齢者虐待防止の観点から高齢者虐待防止措置未実施減算も創設され、これは既に適用される状況となっておりますので、未対策の場合は早急な対応が必要です。委員会の開催、指針の整備、研修の実施、担当者の設置の4点を確認しましょう。

また、身体的拘束等の適正化の観点から、運営基準に基本原則の記載も必要となっています。もしまだ対応が出来ていない場合は、こちらも早急に対応しましょう。

 

3.処遇改善加算の一本化への対応

処遇改善加算の一本化も大きな変更点となりました。今年度内は移行期間として、処遇改善加算Ⅴの算定をおこなうことでいったん継続しての算定が可能ですが、来年4月にはそれが廃止され、完全に新しい処遇改善加算に移行しなければなりません。従来の処遇改善加算では要件とされていなかった事項が新しく要件となっている部分がありますので、それらの移行を年度内に完了する必要があります。

「介護職員の処遇改善 一本化詳細説明資料(実務担当者向け)」[ⅱ]

 

移行の対応は上記の様になりますが、特に◎で示されている事項は、新加算で新しく取り入れられる要素となりますので、対応が完了しているか確認が重要です。

 

①月額賃金要件Ⅰ
新加算Ⅳの加算額の1/2以上を基本給や毎月定期的に支払われる手当等として支給しなければならないというものです。月額賃金要件自体、従来は介護職員等ベースアップ等支援加算の要件でしたが、一本化されるにあたり処遇改善加算そのものに組み込まれました。支給額の振り分けや、給与規定の改定等も必要になることに注意が必要です。

 

②職場環境等要件
介護職員等特定処遇改善加算の要件であった、職場環境等要件の各区分の1つ以上の取り組みの実施が組み込まれたものとなります。従来の処遇改善加算では全ての区分での実施は求められていなかったので、これも大きな変更点といえます。

 

「介護職員の処遇改善 一本化詳細説明資料(実務担当者向け)」[ⅱ]

 

重要なのは、上記のいずれも上位区分の要件ではなく、どの区分であれ処遇改善加算を算定するためには必ず満たさなければいけない要件であるという点です。これらの対応が年度内に間に合わない場合は大きな打撃となってしまいますので、最新の注意が必要でしょう。

 

4.通所系サービスにも生産性向上の取り組みは必要

今回の改定の大きなテーマの1つとなったのは生産性向上の取り組みです。一部サービスでは委員会の設置が義務付けられ、加算も新設される等しました。

これらの動きは一見、通所系サービスとは無縁に見えますが、実は通所系サービスにおいても生産性向上の取り組みはおこなう必要があります。なぜなら、処遇改善加算の職場環境等要件の区分に設定されているからです。

特に重点化されている項目なので、下位区分であったとしても2つ以上の取り組み、上位区分の場合3つ以上の取り組みが求められます。これらをクリアするためには、本腰をいれて対応をおこなう必要があります。

「生産性向上(業務改善及び働く環境改善)のための取組」の内容は下記の通りです。

 

⑰厚生労働省が示している「生産性向上ガイドライン」に基づき、業務改善活動の体制構築(委員会やプロジェクトチームの立ち上げ又は外部の研修会の活用等)を行っている

⑱現場の課題の見える化(課題の抽出、課題の構造化、業務時間調査の実施等)を実施している

⑲5S 活動(業務管理の手法の1つ。整理・整頓・清掃・清潔・躾の頭文字をとったもの)等の実践による職場環境の整備を行っている

⑳業務手順書の作成や、記録・報告様式の工夫等による情報共有や作業負担の軽減を行っている

㉑介護ソフト(記録、情報共有、請求業務転記が不要なもの。)、情報端末(タブレット端末、スマートフォン端末等)の導入

㉒介護ロボット(見守り支援、移乗支援、移動支援、排泄支援、入浴支援、介護業務支援等)又はインカム等の職員間の連絡調整の迅速化に資するICT機器 (ビジネスチャットツール含む)の導入

㉓業務内容の明確化と役割分担を行い、介護職員がケアに集中できる環境を整備。特に、間接業務(食事等の準備や片付け、清掃、ベッドメイク、ゴミ捨て等)がある場合は、いわゆる介護助手等の活用や外注等で担 うなど 、役割の見直しやシフトの組み換え等を行う。

㉔各種委員会の共同設置、各種指針・計画の共同策定、物品の共同購入等の事務処理部門の集約、共同で行うICT インフラの整備、人事管理システムや福利厚生システム等の共通化等、協働化を通じた職場環境の改善に向けた取組の実施

※生産性向上体制推進加算 を取得している場合には、「生産性向上(業務改善及び働く環境改善)のための取組」の要件を満たすものとする

※小規模事業者は、㉔の取組を実施していれば、「生産性向上(業務改善及び働く環境改善)のための取組」の要件を満たすものとする

「介護職員の処遇改善 一本化詳細説明資料(実務担当者向け)」[ⅱ]

 

これらをどの様に満たすかの検討が必要になるでしょう。

一例として挙げるなら「生産性向上ガイドライン」の中に、通所介護において、インカムの運用ルールを制定することで生産性向上につながったという事例が紹介されています。

「居宅サービス分 介護サービス事業における生産性向上に資するガイドライン 改定版」[ⅲ]

 

「生産性向上ガイドライン」に基づいた業務改善活動の体制構築をおこないつつ、その中でこの事例の有用性を確認し、実際にインカムを導入したとなれば上の⑰と㉒を満たしたということになります。この様に、具体的に何をおこなうことで要件を満たせるかを確認し、実行に移していくことが大切です。

 

今回は紙面の関係もあり、概要の解説にとどまりました。職場環境等要件をどう満たすか、生産性向上の取り組みのより具体的なお話など、より詳細な解説につきましては、20241031日に開催されます無料オンラインセミナー「減算リスクをゼロに!通所系サービスの法改正に対応した安定経営の実現~新年度に向けたBCP策定から処遇改善加算、生産性向上の最新事例~」にてお届けできればと考えております。ご興味をお持ちの方は、是非、ご参加いただけますと幸いです。

【10/31セミナー申込URL】
https://mktg.emsystems.co.jp/seminar-kaigo-20241031

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[ⅰ] 2021年4月1日 厚生労働省 老健局 令和6年度介護報酬改定の主な事項について

[ⅱ] 旧3加算の算定状況に応じた新加算Ⅰ~Ⅳの算定要件(早見表)

[ⅲ] 介護サービス事業における生産性向上に資するガイドライン 改訂版

 

 

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著者
株式会社スターパートナーズ代表取締役
一般社団法人介護経営フォーラム代表理事
脳梗塞リハビリステーション代表
MPH(公衆衛生学修士)齋藤直路

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