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【押さえておきたい新薬情報】人工妊娠中絶用製剤(メフィーゴ®パック)

2024.10.04

 

2023年5月、人工妊娠中絶用製剤、メフィーゴ®パック(一般名:ミフェプリストン/ミソプロストール)が発売されました。「妊娠中期における治療的流産」に適応のあるプレグランディン®膣坐剤(一般名:ゲメプロスト)はありましたが、妊娠初期においては、初めて承認された経口の人工妊娠中絶薬です。この薬の投与は、母体保護法指定医師による確認の下で行われます。

日本国内では、妊娠12週未満に対する中絶法は、麻酔下で行われる外科的中絶(吸引または掻把法)だけでした。妊娠63日(9週0日)以下に対する人工妊娠中絶に、経口薬という選択肢が増えました。WHOのガイドラインでは、外科的処置(吸引法)とミフェプリストンとミソプロストールの順次投与による中絶法が推奨され、WHOの必須医薬品にも指定されています。経口中絶薬は、避妊に失敗した場合に服用する緊急避妊薬(アフターピル)とは異なります。メフィーゴ®は、妊娠の継続に必要な黄体ホルモンの働きを抑えるミフェプリストン(プロゲステロン受容体拮抗薬)と子宮収縮作用により子宮内容物を排出させるミソプロストール(プロスタグランジンE1誘導体)が同梱されたパック製剤。母体保護法指定医師による確認の下にミフェプリストン1錠を経口投与し、その36~48時間後に再受診し、ミソプロストール4錠をバッカル投与して、ゆっくり吸収させます。同一成分薬に抗NSAID潰瘍薬のサイトテック錠(一般名:ミソプロストール)があり、子宮収縮作用のため妊婦に禁忌となっています。 

セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(性と生殖に関する健康と権利)が進んだ海外では、オンライン診療による「自己管理中絶」まであるようです。一方、日本国内では、プレグランディン膣坐剤と同様の厳重な薬品管理や報告義務、母体保護法指定医師による処方、配偶者の同意、当分の間、入院可能な有床施設で、ミソプロストール投与後は、胎嚢(レバー状の塊)が排出されるまで、入院または院内待機を必須とするなどの条件があります。そのほかにも、患者への説明と同意、管理・保管を行う薬剤師を含めたe-ラーニングの受講や医療機関の登録などが必要になります。服用後は、全例において下腹部痛や子宮出血が現れ、一定期間継続します。失神を伴う子宮出血が発現することもあるため、自動車運転等には十分注意します。また、子宮内避妊用具(IUD)またはレボノルゲストレル放出子宮内システム〔(IUS)商品名:ミレーナ〕を装着している人は、投与前に除去する必要があります。

商品名

メフィーゴパック

一般名

ミフェプリストン/ミソプロストール

会社名

ラインファーマ株式会社

効能・効果

子宮内妊娠が確認された妊娠63日(妊娠9週0日)以下の者に対する人工妊娠中絶

用法・用量

ミフェプリストン錠1錠を経口投与し、その36~48時間後の状態に応じて、ミソプロストールバッカル錠4錠を左右の臼歯の歯茎と頬の間に2錠ずつ30分間静置する。30分間静置した後、口腔内にミソプロストールの錠剤が残った場合には飲み込む

禁忌

ポルフィリン症の患者、全身性又は吸入の副腎皮質ステロイドを投与中でそれらの効果の減弱による状態の悪化や離脱症状の発現が懸念される患者、出血性疾患及びその疑いのある者、重度の肝機能障害のある患者など

相互作用

(併用禁忌)

 

抗凝固薬(ワルファリンカリウム、DOAC)、抗血小板薬(アスピリン、クロピドグレル硫酸塩、プラスグレル塩酸塩、EPA製剤など)、薬物代謝酵素であるCYP3Aを強くまたは中程度に誘導する薬(リファンピシン、リファブチン、カルバマゼピン、フェニトイン、セイヨウオトギリソウ含有食品、フェノバルビタール、ボセンタン、エファビレンツ、ダブラフェニブ、エトラビリン、ロルラチニブ、プリミドン、ソトラシブなど)

副作用

重大な副作用として、重度の子宮出血、感染症 その他の副作用として、下腹部痛、嘔吐、下痢、悪心、発熱、悪寒など

薬価

母体保護法の指定医師のもと、保険適用外

使用に際しては、必ず添付文書をお読み下さい。

 メフィーゴパックの投与方法

経口避妊薬、緊急避妊薬、経口中絶薬の違い

 分類

目的

服用のタイミング

代表薬

経口避妊薬
(低用量ピル)

着床の阻害

性交渉前から継続服用

トリキュラー
マーベロンなど

緊急避妊薬
(アフターピル)

着床の阻害

性交渉後72時間以内

ノルレボ
レボノルゲストレル

経口中絶薬

着床後の堕胎

妊娠初期(妊娠9週、63日以内)

メフィーゴ

 

 

 

この記事は…

大学病院で医薬品情報を担当していた薬剤師が、年に4回承認される新薬のなかから話題の新薬をピックアップ。その特徴や作用機序、必ず押さえておきたいポイントを分かりやすく解説します。


 

 

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筆者:浜田康次 一般社団法人日本コミュニティファーマシー協会理事

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