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介護保険における訪問介護事業への支援策~関連する障がい福祉サービスの訪問系事業への影響は?NEW

2024.10.21

 

令和6年9月12日に介護給付費分科会において、訪問介護事業への支援についての方向性が示されました。

居宅介護、重度訪問介護などの障がい福祉サービスの訪問系を実施する事業所の中には、介護保険での事業を実施している事業所も少なくないと思います。

今回は、関連する厚生労働省が介護保険分野で進められている訪問介護事業への支援策についてお伝えします。

【目次】

  1. 訪問介護事業への支援強化パッケージ
  2. 人材確保のため処遇改善加算の上位区分取得も検討

 


1. 訪問介護事業への支援強化パッケージ

厚生労働省は、主に訪問介護事業の人材不足への支援として3つの対応方針を示しました。

 

  1. 地域において、利用者へ必要なサービスを安定的に提供できるよう、特に小規模な訪 問介護等事業者が行う人材確保に向けた研修体系の整備のほか、ヘルパーへの同行支援 に係るかかり増し経費経営改善に向けた取組などを支援。
  2. 都道府県の介護保険部局が主体となって、地域の介護分野の業界団体のほか、都道府 県労働局や都道府県福祉人材センター等が連携した介護人材確保のための協議会を設置。 管内各地域において、ハローワークや介護事業所等が協力して行う職場説明会、職場見 学会・体験会などを実施する取組を推進。
  3. ヘルパーの仕事のやりがいや実際のケアのイメージなど仕事の魅力について、学生を はじめ、介護業界を新たに目指す人や介護現場で働いた経験のある人などに広く周知す るために、ヘルパーに関する広報事業を実施し、ヘルパーの人材確保を促進

※詳細は下記を参照

厚生労働省が人材不足への支援を訪問介護事業に対して行ったと考えられる理由は、施設介護員より訪問介護職の方が、採用が難しいからです。

具体的には、有効求人倍率が14.14倍であり、これは施設介護員の有効求人倍率と比較して約4倍も高いことが示されています。

採用が難しい主な理由は、一人で利用者宅に訪問してケアを提供することに対する不安が大きい、利用者宅までの移動にかかる業務負担がある、他の介護サービスと比べ、実質的な拘束時間が長い割に効率的に収入が得られないということがあげられています。

また障がい福祉の訪問系サービスでも同様の理由で採用が難しい現状が想定されます。

しかしこの支援策は、障がい福祉サービスの訪問系事業も活用ができるようになるかは分からないため、まずは介護保険の訪問介護の指定番号を取得している場合には、うまく活用できるのか検討するといいと考えられます。

下記は、主に事業者が実施主体となる支援策として示されている2つの支援概要です。

  • 人材確保体制構築支援事業

経験が十分でないヘルパーでも安心して従事できるよう、研修体系の構築や他事業所と連携して行う取組を支援されます。研修カリキュラムの作成やキャリアアップの仕組みづくりに要する経費、経験が十分でないヘルパーへの同行支援に係るかかり増し経費、経験が十分でない介護職員のスキルアップのための研修受講に要する経費等が想定されています。

 

  • 経営改善支援事業

持続的な経営に向けた経営計画を作成した上で行う人材確保の取組や事業者との連携の取組等を支援されます。経営改善の専門家の活用等に係る経費や経営改善に向けた取組を行う際の事務員等の臨時的な雇用等に要する経費、ホームページの改修やチラシの作成など介護人材や利用者の確保のための広報に要する経費等が想定されています。


どちらの支援事業もかかった費用に対して補助率 (定額)をかけて、補助されるため、支払いが先になることが想定されます。

そのため支払いが先行し、補助金の入金は後になるため、資金繰りにはご注意いただく必要がありそうです。

 

2.人材確保のため処遇改善加算の上位区分取得も検討

令和6年度の報酬改定で一本化された新処遇改善加算は、加算率が従来よりも高くなったことから、多くの事業所で加算取得が進められています。ただ現在は移行期間中で、いくつか経過措置となっている項目があります。

人材確保の対策の一つとして、より上位区分の処遇改善加算を取得することが望ましいですが、上位区分を取得するためのハードルとして、「職場環境等要件」を満たす必要が来年からできました。

特に上位区分の処遇改善加算を取得するためには、職場環境等要件を区分ごとに2つ以上、生産性向上に関する取り組みでは3つ以上(うち要件「現場の課題の見える化」は必須)満たすことが求められます。

具体的には、必須要件の「現場の課題の見える化」を満たすために、職員や会社で行っている業務の洗い出しを行い、業務の無駄を抽出することから始めるといいと思います。厚生労働省も上位区分を取得するための支援として、今後モデル賃金体系や運用の事例集など作成を進めることが予定されているようです。

今回は、介護保険における訪問介護事業への支援策から関連する障がい福祉サービスにおける訪問系事業への影響についてお伝えしました。

少しでも活用できる制度は、可能な限り活用していくため、行政からの最新情報や通知を定期的に確認していく必要はありそうです。

 

参考)厚生労働省 介護給付費分科会 第242回(R6.9.12)資料2

 

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筆者:日本クレアス税理士法人

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