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PMH(Public Medical Hub)って知ってますか?(1)
2024.10.31
序文
デジタル庁は、2023年より自治体が実施主体の医療費助成、母子保健、予防接種、介護保険等分野の情報連携ネットワーク(PMH)を開発し、全国展開の準備を進めています。そこで、今回はPMHの取組について解説します。
【目次】
1.PMHとは?
PMHとはPublic Medical Hubの略で、デジタル庁が開発した自治体向けの医療費助成分野、予防接種・母子保健分野を対象とした情報連携ネットワークのことです。
開発の背景には、自治体が実施主体となっている医療費助成、母子保健、予防接種、介護保険等分野の業務について、国民、自治体、医療機関・薬局といった当事者にとって、紙での情報連携にかかる業務負担が多く、改善が必要な状況でした。この問題を解決するために、2023年6月2日に決定した医療DXの推進に関する工程表において、「関係機関や行政機関等の間で必要な情報を安全に交換できる情報連携の仕組みを整備し、自治体システムの標準化の取組と連動しながら、介護保険、予防接種、母子保健、公費負担医療や地方単独の医療費助成などに係る情報を共有していく」こととされています。
そこで、デジタル庁が、この情報連携の仕組みとして2023年に情報連携機能を有するシステム(Public Medical Hub:PMH)を開発し、希望する自治体向けに医療費助成分野、予防接種・母子保健分野を対象とした先行実施事業を開始しています。
2.現状の課題
自治体ごとに基幹システムの仕様や標準化に向けての対応状況は様々であり、公費医療費助成や予防接種、母子保健等の施策の業務要件は異なっています。そこで、現状に応じた情報連携の方式を考え、機能の整備を通して医療DXを推進することが必要であるとしています。
公費医療費助成については、保険証とは別に紙の受給者証等を持参しなければなりません。現状、マイナ保険証と受給者証の両方を医療機関受診の際に提示する必要があります。また、医療機関においても、オンライン資格確認とは別に、公費等の資格を個別に確認し、手入力する手間がかかっています。一方、自治体は、受給者証の申請、更新、転入、転出や、助成に係る請求等に関する事務に膨大なコストがかかっています。
予防接種・母子保健(乳幼児健診等)についても、予診票・問診票を何度も手書きしなければならず、健診結果や接種記録をタイムリーに確認することができません。また、医療機関においても、紙による費用請求に対して事務コストがかかっています。一方、自治体は健康管理システムへの情報登録の手間や誤登録のリスク、費用支払に対する事務コストがかかっています。
3.スケジュール
「医療DXの推進に関する工程表」においては、自治体・医療機関・介護事業所間の連携の構想が示されています。スケジュールを見ると、2023年から先行事例を開始し、2024年、2025年と進め、全国展開として2026年度を見込んでいます。内容としては、介護、予防接種、母子保健、公費負担医療、地方単独公費に関する情報共有をしていくとしており、公費医療助成と予防接種、母子保健において自治体の募集を募って進めていく形になります。
出典:医療DXの推進に関する工程表(全体版)2023.6.2(内閣官房)
4.PMHのメリット
PMHが全国で利用できるようになると、公費助成分野では、医療機関・薬局を受診する際に、マイナンバーカード(マイナ保険証)を医療費助成(地方単独公費:こども医療券、自立支援医療など)の受給者証として利用できるようになります。
予防接種・母子保健分野では、事前にインフルエンザ、新型コロナウイルスなどワクチンの予診票や問診票をスマホ等で入力し、マイナンバーカードを接種券・受診券として利用できるようになります。また、マイナポータルから接種勧奨・受診勧奨を行い、接種・健診忘れを防ぐとともに、接種履歴や健診結果がリアルタイムにマイナポータル上で確認できるようになります。
5.先行実施事業(令和5年度)
令和5(2023)年度には、先行実施事業が始まっています。内容としては、国の公費負担医療(難病等)、地方単独公費(こども医療等)、予防接種、母子保健について、マイナンバーカードを活用したデジタル化の取組を先行的に実施するために参加自治体の公募が行われました。公募の結果、合計で16自治体87の医療機関が採択され、内訳は医療費助成については5自治体32医療機関、予防接種については9自治体56医療機関、母子保険については9自治体13医療機関となっています。
仕組みとしては、複数の自治体ごとに、自治体独自のシステムがあり、それらの情報をPMHによって紐付けることで、医療機関は電子カルテやレセコンの改修をすることによって、簡単に情報取得が可能になります。
これまでは紙の受給証があったために、マイナンバーにせっかく保険証が変わろうとしているのに受給証を別に持ってこなくてはなりませんでした。また、公費等の情報は、オンライン資格確認でも情報が取得できず、保険証情報とは別に公費情報をシステムに手入力する必要がありました。PMHが導入されることで、患者は紙の受給者証を持参しなくて済み、医療機関も最新の正しい資格情報を取得でき、受給者情報の手入力がなくなります。
出典:医療費助成の受給者証や診察券のマイナンバーカード利用の推進について2023.12.22(デジタル庁)
6.先行実施事業(令和6年度)(令和5年度)
令和6(2024)年度は対象範囲が拡大しています。公費については、感染症医療(結核)、未熟児養育医療が追加されました。予防接種については、季節性インフルエンザ、高齢者の肺炎球菌感染症が追加されました。母子保健については、産婦健診、里帰り妊婦に係る自治体間連携が追加されました。
また、令和6年度は、全体で176自治体が採択され、これまで令和5年に先行実施していた自治体と合わせて取り組みが進んでいくことになります。
出典:医療費助成の受給者証や診察券のマイナンバーカード利用の推進について2023.12.22(デジタル庁)
(次回に続く)