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最新の動向を踏まえた介護人材採用成功事例

2024.11.14

 

【目次】

  1. 処遇改善加算の一本化が人材戦略に及ぼす影響
  2. 人材戦略に合わせて処遇改善加算を配分する
  3. 待遇面のインパクトを活かした採用活動
  4. まったく新しいアプローチ

 


1.処遇改善加算の一本化が人材戦略に及ぼす影響

先日、全国老人福祉施設協議会が今夏に実施した各種加算の「算定状況調査」の結果に関する報道がありました。それによると、特別養護老人ホームや通所介護などのうち、一本化された新たな処遇改善加算(IIV)を算定している施設・事業所は、今年6月で96.6%にのぼっていたとのことでした。その内、最上位の加算I77.3%と全体の4分の3を超えており、かなり高い割合の事業所が算定をおこなえているということがわかりました。[]

介護職員等特定処遇改善加算との一本化による職場環境等要件の引き上げや介護福祉士の割合の導入等、要件が厳格化したのに比べて、最上位区分を取得する事業所の割合が多かったという印象を持ちました。従来より、各種処遇改善加算に取り組んでいた事業所が多く、移行もスムーズにおこなえたという背景があるのではないかと考えています。

一方で、最上位区分を算定できない事業所にとっては、周囲との職員の給与格差が更に広がり、採用面についても厳しい状況となっていくことが予想されます。人材戦略は新たな局面に入ったということがいえるでしょう。

では、人材確保をおこなっていく上で、今後はどのような対応をおこなっていく必要があるのでしょうか。考えていきたいと思います。

 

まず、結論として、職員の処遇改善への取り組みを外すことはできないといえるでしょう。それは、処遇改善加算の最上位区分の取得はもちろんですし、より高い単価を獲得するための加算の算定とその職員への還元もおこなっていく必要があるのではないかと考えています。

そのためには、処遇改善加算はもちろん、特定事業所加算やサービス提供体制強化加算等、所定単位を底上げするための体制加算等を算定していくことが重要となり、そのためには介護福祉士の割合を高めるための取り組みが必要になってきます。資格取得の支援制度は処遇改善加算の職場環境等要件にも含まれていますし、処遇改善加算を資格手当の原資として重点配分する等、資格を取得することへのインセンティブを高めていき、事業所における介護福祉士の配置割合を安定させるという戦略を取ることが大切になってくるでしょう。

 

2.人材戦略に合わせて処遇改善加算を配分する

処遇改善加算の最上位区分の算定をおこなえる状態になれば原資も増えるので、更にできることが増えます。特に、必要な人員構成を実現したり、必要な人材を確保するために、特定の条件のもとに処遇改善加算を重点配分することをお勧めしています。

例えば、処遇改善加算を一律で配分している事業所と比較して、一定の経験年数や資格、特定の時間帯に勤務する職員を優遇するような配分をした時、それに該当する人にとっては一律で配分する事業所よりもより良い待遇を提供することができるようになります。

いくつか例を挙げていきます。

 

①夜勤手当への重点配分

(変更前)介護職員 月給200,000円~250,000
内訳:基本給160,000円 資格手当0~15,000円 処遇改善手当15,000円 夜勤手当25,000円(5回分)
 

(変更後)介護職員 月給225,000円~275,000円
内訳:基本給160,000円 資格手当0~15,000円 処遇改善手当15,000円 夜勤手当50,000円(5回分)
 

1回当たりの手当を引き上げることで全体の水準が向上します。インセンティブの向上で希望者も増加することが期待できます。

 

②資格手当への重点配分

(変更前)介護職員 月給200,000円~250,000

内訳:基本給160,000円 資格手当0~15,000円 処遇改善手当15,000円 夜勤手当25,000円(5回分)
 

(変更後)現場リーダー 月給235,000円~265,000円

内訳:基本給175,000円 資格手当25,000円 処遇改善手当15,000円 夜勤手当25,000円(5回分)
 

既存職員の資格取得の推進につながります。求人の際、スキルと資格を同時に評価することで更に水準が引きあがることになります。また、通常の介護職ではなく、スキルと資格が求められることから「現場リーダー」等、職種の呼称をわかりやすく変更しておきます。

 

上記の様に、配分に工夫を加えることで誘導をおこなうことにもつながります。

また、こういった要件を設定することで、求人をおこなう際にも有利になります。上記の要件を満たす職種の求人を通常の介護職の枠とは別に設定することで、他の求人と比較しても突出した要件を提示することができるようになります。

介護職の求人情報が溢れた現代においては、待遇面で強いインパクトを残すということは、大きな強みになります。

 

3.待遇面のインパクトを活かした採用活動

待遇面で他事業所をしのぐような要件を提示することができれば、それだけでも大きなアドバンテージとなります。ハローワークや求人ポータルサイト等の中でも目立つことができるようになるので、求人面でも有利になります。

更に、その優位性を活用していくことができれば、この上ないことだと思います。そのために是非、お勧めしたいのが、インターネットの検索広告の活用です。

インターネットの検索広告とは、Google等の検索エンジンの使用者に対して、一定の条件下で広告を表示させるサービスとなります。

「東京 介護 求人」で検索をおこなった場合

 

上図の「スポンサー」と表示されているリンクが、この検索広告に該当します。このように「介護 求人」「ヘルパー 求人」等のキーワードを設定し、そこに自事業所のある地域の名称を組み合わせることで、該当する検索ワードで検索した人に対して、つまり求人を探している求職者に対して、広告を表示させることができるようになります。

この時、先述したようなインパクトのある給与設定をおこなえていて、検索している人の目にそれが飛び込んできたとしたらどうなるでしょうか。間違いなく、他の求人よりもより強い興味を先に持って、求人にアクセスしてもらえることが期待できます。

実際に、私どもがコンサルティングをさせていただいた訪問介護の事業所では、ヘルパー確保に競争力を持たせるため、徹底して地域の事業所で最大の時給(概ね、平均的な時給の1.2倍~)を提示することにこだわっていました。従来より、求人の競争力はある程度確保できていたのですが、ここに検索広告を更に加えることで、月当たり10件近くの応募増につながりました。

この時、検索広告では真っ先に「ヘルパー時給●●円」という、地域で最も高い、インパクトのある待遇が表示されていました。それくらい、インパクトを打ち出せる求人と、検索広告の相性は良いと言えます。

 

4.まったく新しいアプローチ

条件・待遇面の担保や、それを打ち出した求人が有効であること、その原資となる処遇改善加算については最上位区分を是非とも取得したいということについて説明してきました。最後に、待遇とはまた別の、ユニークなアプローチについてもご紹介します。

それは、サークルや部活等を組織し、その活動への支援をおこなうことです。種目等については特に制限はないのですが、会社として公式にサークルを運営し、備品等の補助、大会参加のための交通費の支給といったサポートをおこないます。また、その延長として、職員が指導者となってサッカー教室を運営している介護事業所等もあります。

また、このようなサポートが更に発展して、実業団を運営するに至ったという例もあります。その場合、練習時間の勤務時間への振り替え等も認められるようになり、企業としての特色もより強いものとなります。

こういったアプローチは、ダイレクトに該当する種目をおこなっている人々の目に届くことになります。競技のサポートは強力なインセンティブになるので、所属している職員の定着率向上にも期待ができるでしょう。また、企業としての強い特徴付けともなることから、ブランディング面でも優れた施策ということができるでしょう。

特定の種目に限定するならば人数にも限りがあるのではないか、期待できるだけの費用対効果を上げることができるのか、といった疑問も持たれるかと思います。これについては、先進事例として「日本一マッチョが多い介護の会社」として株式会社ビジョナリーが著名です。[]

年間の求人応募が700800名にも上るという、強力な強みにつながっています。人材難の時代にあっては、待遇面という王道的なアプローチとともに、こういったユニークさを打ち出していく施策も、求められていくようになるのではないでしょうか。

 

以上、最新の動向を踏まえた求人活動へのアプローチについて簡単に解説させていただきました。何かヒントとして活用いただけましたら幸いに思います。

 

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[ⅰ] 新たな処遇改善加算、最上位区分を77%の事業所が算定 老施協調べ

[ⅱ] 株式会社ビジョナリー

 

 

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筆者:
株式会社スターパートナーズ代表取締役
一般社団法人介護経営フォーラム代表理事
脳梗塞リハビリステーション・グループ代表
MPH(公衆衛生学修士)
齋藤直路

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