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【押さえておきたい新薬情報】新型コロナウイルス感染症ワクチン(コスタイベⓇ筋注用)NEW

2024.12.03

 

この記事は…

大学病院で医薬品情報を担当していた薬剤師が、年に4回承認される新薬のなかから話題の新薬をピックアップ。その特徴や作用機序、必ず押さえておきたいポイントを分かりやすく解説します。

 

2024年9月、新型コロナウイルス感染症に対する新しい作用機序のmRNAワクチン、コスタイベ筋注用〔一般名:コロナウイルスRNAワクチン〕が発売されました。「次世代mRNAワクチン」「レプリコンワクチン」と称される自己増幅型mRNAワクチンで、世界に先駆けて日本が先行承認しました。

2023年5月、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付けが「新型インフルエンザ等感染症(いわゆる2類相当)」から「5類感染症」に変更され、2024年10月から重症化予防を目的に、「65歳以上」「一定の基礎疾患を有する60歳~64歳」を対象とした定期接種がスタートしました。今回、使用されるワクチンは、オミクロン株JN.1系統に対応したmRNA ワクチン(コミナティ、スパイクバックス、ダイチロナ、コスタイベ)と組換えタンパク質ワクチン(ヌバキソビッド)の5種類で、遺伝子組換えアデノウイルスベクターワクチン(バキスゼブリアTM、ジェコビデン)は含まれていません。

コスタイベの起源は、米国バイオベンチャーのアークトゥルス・セラピューティクス社が開発した「ARCT-154」(開発コード)で、Meiji Seikaファルマが日本国内での製造販売承認を取得しました。mRNAワクチンは、ウイルスが細胞内に侵入する際に必要なスパイク蛋白質をコードする遺伝情報(mRNA)で、体内で壊れやすいmRNAを安定化のために脂質ナノ粒子(脂質の膜)に封入しています。細胞内に取り込まれると、mRNAを鋳型としてスパイク蛋白質を産生し、それを抗原として免疫応答が惹起されて中和抗体が誘導されます。mRNAワクチンの課題として、mRNAが簡単に破壊されるので効果が長続きしないこと、国産ワクチンの開発が遅れ、海外からの輸入に依存していることなどが挙げられます。  

RNA を遺伝情報として使うRNAウイルスは、RNAを複製する酵素を持っています。次世代mRNAワクチンであるレプリコンワクチンは、ウイルスのスパイク蛋白質とRNAを複製する酵素(ベネズエラ馬脳炎ウイルス由来のRNAレプリカーゼ)をコードするmRNAで構成されています。「レプリコン」とは、生物学用語で「複製されるRNA(またはDNA)」の意味。接種後、レプリカ―ゼがスパイク蛋白質のmRNAを複製し、従来型より多くスパイク蛋白質が発現します。既承認のmRNAワクチンに比べ、少ない接種量で長期間にわたり持続的な免疫反応を引き起こします。mRNAは投与後1週間程度は維持されますが、15日以降は急速に低下します。有害事象の発現状況も、既承認のmRNAワクチンと大きな差はありませんでした。

一方、SNSなどを中心に、商品名の「KOSTAIVE」がフィンランド語で『復讐』であるとか(フェイクニース)、日本看護倫理学会は「接種した人の呼気、汗に含まれる細胞外小胞(エクソソーム)を介して、ワクチン接種者から非接種者にシェディング(感染)するという深刻な懸念を【緊急声明】として発表し、『レプリコンワクチン接種者の入店お断り』という事態にまでなりました。シェディングは、ウイルスを弱毒化した生ワクチンの場合に起きる可能性はありますが、感染性のあるウイルス粒子の形成に必要な遺伝子を除去した新型コロナワクチンの場合、スパイク蛋白質のみが発現し、ウイルスが増殖することはありません。また、ヒトの細胞には逆転写酵素が存在しないので、ワクチンのmRNAがDNAに組み込まれることもありません。海外の第3相臨床試験(ベトナム、1万6千人)でコスタイベ群5例、プラセボ群16例の死亡例が報告されましたが、治験薬との因果関係は否定されています。これは例えば接種後の観察期間で予防接種と関係がなくとも副反応としてカウントする、いわゆる「紛れ込み現象」も含まれております。勿論、ワクチンもゼロリスクではありません。今後も市販後の長期的な有効性及び安全性情報などを注視していく必要があります。

 

販売名

コスタイベ筋注用

一般名

コロナウイルス(SARS-CoV-2)RNAワクチン
有効成分名:ザポメラン]

製造販売元

Meiji Seika ファルマ株式会社

効能・効果

SARS-CoV-2による感染症の予防

用法・用量

本剤を日局生理食塩液10mLにて溶解する。1回0.5mLを筋肉内に接種する。

接種対象者

18歳以上の者(18歳未満を対象とした臨床試験は実施していない)

副反応/有害事象

重大な副反応として、ショック・アナフィラキシー、心筋炎・心膜炎 その他の副反応として、注射部位(圧痛、疼痛、腫脹、紅斑、硬結)、倦怠感、頭痛、悪寒、筋肉痛、関節痛、発熱、めまいなど

保存方法

冷蔵庫(2~8℃)で1ヵ月間保存することができる。

備考

1バイアル(16回接種分)

薬価

本剤は保険給付の対象とならない(薬価基準未収載)

使用に際しては、電子添文とRMPを必ずお読み下さい。

 JN.1系統対応ワクチン

販売名

会社

種類

コミナティ筋注

ファイザー

mRNAワクチン

スパイクバックス筋注

モデルナ・ジャパン

mRNAワクチン

ヌバキソビッド筋注

武田薬品工業

組み換えタンパク質ワクチン

ダイチロナ筋注

第一三共

mRNAワクチン

コスタイベ筋注用

Meiji Seikaファルマ

mRNAワクチン(レプリコン)

 

 

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筆者:浜田康次 一般社団法人日本コミュニティファーマシー協会理事

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