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2024年医療DXの振り返り
2024.12.25
2024年の医療DX政策は、診療報酬改定DXの影響で、診療報酬の改定時期が4月から6月に変更されました。医療DX項目として、「医療DX推進体制整備加算」が新設されました。同加算は10月にはマイナ保険証の利用率に合わせて3段階に区分されました。12月にはマイナ保険証の一本化に向けて、医療情報取得加算の変更が行われています。
【目次】
1.医療DXの推進に関する工程表(2024年度)
2023年6月2日に公表した「医療DXの推進に関する工程表」によると、2024年度に実施予定の項目として、診療報酬改定時期の変更や健康保険証の(新規発行の)廃止、電子処方箋の普及・推進といった内容が盛り込まれています。
政府は最終目標として、全国医療情報プラットフォームの構築に向けて、オンライン資格確認システムのネットワークを拡充し、電子カルテ等の医療機関等が発生源となる医療情報について、クラウド間連携を実現し、自治体や介護事業者等間を含め、必要なときに必要な情報を共有・交換できる全国的なプラットフォームをイメージしています。
2.令和6年度診療報酬改定(6月)
令和6年度診療報酬改定率は、診療報酬全体でプラス0.88%、医科でプラス0.52%と決まりましたが、内科を中心に実質マイナス改定となっています。
昨今の物価高に伴う賃上げに対応するため、初・再診料を引き上げ、ベースアップ評価料が新設されました。これらの引き上げ分は、ほとんどを賃金の引き上げに充てる必要があり、医院経営にとっては実質プラスマイナスゼロの影響となりました。また、ベースアップ評価料について、算定要件を勘案して見送っていたケースもあり、改定時期から遅れて算定するケースも出てきています。
生活習慣病管理料を(Ⅰ)と(Ⅱ)に包括範囲によって区分し、特定疾患療養管理料の対象疾患から生活習慣病(糖尿病、高血圧、脂質異常症)が除外されました。この見直しによって、内科を中心に算定件数が減ったり、点数が下がったりした影響から、マイナス5%程度の影響が出ているのではないかと推測します。
医療DX関連点数については、医療情報取得加算が見直され、医療DX推進体制整備加算が新設されました。医療DX推進体制整備加算の目的は、「オンライン資格確認により取得した診療情報・薬剤情報を実際に診療に活用可能な体制を整備し、また、電子処方箋及び電子カルテ情報共有サービスを導入し、質の高い医療を提供するため医療DXに対応する体制を確保している場合の評価」とされています。
マイナ保険証の利用率は10月より反映し、電子処方箋は2025年3月、電子カルテ情報共有サービスは2025年9月までに整備するよう、経過措置が設けられています。
電子処方箋など医療DX の推進によって、効率的な処方体系の整備が進められていること並びに 一般名処方加算等の見直しに伴い、処方箋料の点数が見直されました。一般名処方加算については、慢性的な医薬品の供給不足等の場合における治療計画の見直し等に対応できる体制の整備が必要となっており、評価が引き上げられています。処方箋料はほとんどの患者に影響するため、大きなマイナスとなり、一般名処方加算のアップ分を考慮しても、5点(8点-3点)の引き下げとなっています。
3.医療DX推進体制整備加算の見直し(10月)
医療DX推進体制整備加算は当初の予告通り、10月からマイナ保険証の利用率に応じて、3段階に区分されました。また、加算1と2の施設基準に「マイナポータルの医療情報等に基づき、患者からの健康管理に係る相談に応じること」が追加されています。
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現行 |
10月~ |
医科 |
医療DX推進体制整備加算 8点 |
医療DX推進体制整備加算1 11点 |
調剤 |
医療DX推進体制整備加算 4点 |
医療DX推進体制整備加算1 7点 |
マイナ保険証の利用率実績については、2024年7月、8月の実績が15%以上の場合は10月から加算1を、10%以上の場合は加算2を、5%以上の場合は加算3を算定できることとなりました。利用率の計算時期については、適用時期の3月前のレセプト件数ベースのマイナ保険証利用率を用いるとしていますが、2024年10月から2025年1月の期間は、適用時期の2月前のオンライン資格確認件数ベースのマイナ保険証利用率を用いることもできるとしています。
今後、令和7年4月以降のマイナ保険証利用率の実績要件は、中医協の附帯意見を踏まえ、2024年末を目途に再検討し再設定を行うとしています。
4.医療情報取得加算の変更(12月)
「医療情報取得加算」については、12月2日から現行の健康保険証の発行が終了し、マイナ保険証を基本とする仕組みに移行することを踏まえ、マイナ保険証の利用の有無に着目した加算の点数差を見直し、標準的な問診票や、オンライン資格確認等システムからマイナ保険証を通じて取得された医療情報等の活用による質の高い医療の評価へと見直されました。
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現行 |
12月~ |
初診時 |
医療情報取得加算1(現行の保険証の場合) 3点 |
医療情報取得加算 1点 |
再診時 |
(3月に1回に限り算定) |
(3月に1回に限り算定) |
調剤時 |
(6月に1回に限り算定) |
(12月に1回に限り算定) |
12月2日以降は、医療機関等の窓口で資格確認を受ける方法としては、マイナ保険証か健康保険証、そして新たに資格確認証の3種類となりました。医療機関での受付対応が一層複雑になっており、マイナ保険証が利用できないケースの対応などを事前に理解しておく必要も出てきています。
(出典)中央社会保険医療協議会 総会(2024.11.13,厚労省)