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就労継続支援A型の次期報酬改定へ検討開始 一般就労への移行をより評価か?就労選択支援を適切利用も?

2025.01.15

 

令和6年10月3日財務省の予算執行調査で、就労継続支援A型の次期報酬改定に向けて検討される内容が発表されました。

次期報酬改定検討事項:
「一般就労への移行をより一層加味したメリハリのある報酬体系を検討すべき」
「令和7年10月開始予定の新サービスの「就労選択支援」も適切利用を求める」

今回はこれらの内容についてお伝えします。


 

【目次】

  1. 次期報酬改定検討事項となった背景と調査
  2. 今後の準備

 


1.次期報酬改定検討事項となった背景と調査

(背景)

厚生労働省は令和5年度に就労継続支援A型事業所を対象とした調査を実施しました。この調査では、1,028か所の事業所と1,173か所の市区町村が調査対象となり、特に事業所数の増加が見られました。(図1)

増加の背景には、就労継続支援A型は雇用契約を結ぶサービスであり、雇用関係の助成金等(例:特定求職者雇用開発助成金)の対象となっていることから、助成金等を目当てにした事業所開設が行われていることが指摘されるケースもあったと報告されています。調査の目的は主に二点で、第一に就労継続支援について、その制度趣旨や提供しているサービスの内容・時間の観点から、適切な報酬体系となっているかを確認し、第二に就継続支援A型について、厚生労働省による経営実態調査において勘案されていない可能性がある助成金等を加味した場合の収支差を明らかにすることです。

その調査で、就労継続支援A型事業所における一般就労への移行割合等について着目される結果がでました。

 

(具体的な調査結果)

就労継続支援事業は、事業の範囲に一般就労に向けた支援も含むものとされ、省令においても事業者は求職活動の支援に努めることとされています。

しかし就労継続支援A型事業所のうち、一般就労への移行割合(図2)0%の事業所が全体の半数以上を占めました。

また、移行割合0%の事業所における利用者の平均利用年数は5.8年と、移行割合が10%以上の事業所と比較して2.3年長い平均利用年数となっており、利用者が同じ事業所に滞留している可能性があるとわかりました。

また利用者全体のうち、一般就労を希望している利用者は全体の18.7%に留まり、市区町村が利用者から新規サービスの申請を受けた際に、一般就労への移行を検討していないと回答した市区町村の割合が43.3%となっていることを踏まえると、適切なサービス選択がなされていない可能性があると考えられます【図2、表1~3】。

以上のことから就労継続支援A型事業所は、障がい者の雇用の場所としての役割を重視しつつ、「一般就労への移行をより一層加味したメリハリのある報酬体系」となるよう、次期報酬改定に向けて検討すべきと検討事項にあげられました。

また就労継続支援A型の利用にあたって、適切なサービスの選択がなされていない可能性があることを踏まえ、令和7年10月に開始される就労選択支援サービス(※)の適切な利用が求められることも検討事項にあげられております。

 ※就労選択支援サービス

障がい者本人が就労先・働き方についてより良い選択ができるよう、就労アセスメントの手法を活用して、本人の希望、就労能力や適性等に合った選択を支援する就労選択支援サービスが創設されます。(令和7年10月1日施行)

就労選択支援で提供されるサービスとしては、下記のような内容が想定されています。

○ 短期間の生産活動等を通じて、就労に関する適性、知識及び能力の評価並びに就労に関する意向等整理(アセスメント)を実施。

○ アセスメント結果の作成に当たり、利用者及び関係機関の担当者等を招集して多機関連携会議を開催し、利用者の就労に関する意向確認を行うとともに担当者等に意見を求める。

○ アセスメント結果を踏まえ、必要に応じて関係機関等との連絡調整を実施。

○ 協議会への参加等による地域の就労支援に係る社会資源や雇用事例等に関する情報収集、利用者への進路選択に資する情報提供を実施。

就労選択支援の位置づけイメージ

 

2.今後の準備

次期報酬改定では、一般就労への移行を重視したメリハリのある報酬体系になる可能性があるため、サービス提供において一般就労を意識することが求められています。過去の報酬改定での「メリハリのついた報酬体系」という文言を考慮すると、一般就労が少ない事業所は報酬が低く、逆に多い事業所は高くなることが予想され、現在も「就労移行支援体制加算」が評価として準備されているため、次期報酬改定を考慮せずに一般就労を進め、この加算取得を進めることが一つの方法です。具体的な報酬改定内容はまだ発表されていないものの、一般就労が重要なキーワードとなりそうであるため、事業所の戦略を考える際には一般就労についても考慮することが望ましいでしょう。

※就労移行支援体制加算は、企業等に就労した後、当該企業等での雇用が継続している期間が6ヶ月に達した者(就労定着者)が前年度にいる場合、「利用定員」と「評価点」に応じた所定単位数に前年度の就労定着者の数を乗じて得た単位数が加算されます。

 

参照:令和6年2月6日 障害福祉サービス等報酬改定検討チーム 令和6年度障害福祉サービス等報酬改定における主な改定内容
財務省 予算執行調査資料 総括調査票(令和6年10月公表分)

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筆者:日本クレアス税理士法人

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