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いよいよ2025年から始まる「電子カルテ情報共有サービス」①
2025.01.30
2025年は医療DXにおいてターニングポイントになると考えます。2024年の診療報酬改定で新設された「医療DX推進体制整備加算」の施設基準で、大きく2つの変更が行われます。1つは「電子処方箋の体制整備」で、現時点では普及が進んでいませんが、この締め切りが3月末となっています。2つ目は、「電子カルテ情報共有サービスの体制整備」で、その締め切りも9月末となります。同点数は体制整備の加算なので、準備を進めていれば算定可能で、準備しなければ算定できなくなることが予想されます。
このことから、政府の医療DX政策において「電子処方箋」と「電子カルテ情報共有サービス」の2つが、2025年のメインテーマになると考えます。
【目次】
1.電子カルテ情報共有サービスとは?
電子カルテ情報共有サービスとは、①紹介状(診療情報提供書および退院時サマリー)送付サービス②健診文書閲覧サービス③6情報閲覧サービスの3つのサービスから構成されています。
簡単に仕組みを解説すると、医療機関で患者同意のもと、医師が電子カルテ上で紹介状を作成すると、電子カルテ情報共有サービスの文書情報管理データベースにアップロードされます。その後、紹介先の医療機関はマイナンバーカードで患者同意を受けることで、紹介状をダウンロードし、閲覧できるようになるのです。
また、患者に関する「6情報」や「健診結果」についても、それぞれのデータベースに蓄積され、全国の医療機関で閲覧することが可能となります。これらの情報は、患者もマイナポータルを通じて閲覧することが可能となります。
健康・医療・介護情報利活用検討会医療等情報利活用ワーキンググループ2024.6.10(厚労省)
2.全国医療情報プラットフォームの実現に向けて
このサービスは将来的には、政府が進める「全国医療情報プラットフォーム」の一部になるもので、政府は2030年頃の完成を目指しています。これが政府の進める医療DX政策の最終的なゴールイメージです。完成した暁には、医療情報も介護情報も行政自治体情報も、オンライン資格確認等ネットワークによってつながり、情報共有がスムーズにできる社会を実現することを描いているのです。
これらの発生源となるのが、医療では電子カルテであり、介護では介護システムとなります。また、患者側はマイナポータルを通して内容が確認できるようになるのです。
この実現に向けての懸念点は、システムベンダーや自治体など関係者の対応力にかかっています。一見すると、そんなに難しくないように感じますが、これまで長年別々に作られてきたシステムであり、データベースの構造がそもそも異なるため、その足並みをそろえるためには、膨大な労力と費用が必要になるのです。
そして最近問題になっているのが、情報を共有する際に、それが正しい情報なのか、正しくないのかをチェックする必要が生まれています。全国医療情報プラットフォームは、これを構築するパーツを作っていって、それを繋げば終わり、というわけではありません。情報集約する際には、情報の整合性の確認が必ず必要になるのです。
3.紹介状送付サービス
紹介状送付サービスは、現在の紙の診療情報提供書(いわゆる紹介状)をデジタルデータにし、医療機関間で情報共有する仕組みです。これが実現すると、紹介状の印刷や封入、宛名書きなどの作業がなくなり、スタッフの業務削減効果が見込めるだけでなく、患者が持参することがなくなるため、書類の紛失や持参忘れなどもなくなることになります。
紹介先医療機関においてもデジタルデータとして紹介状が取得可能なため、これまでのように、紙をスキャニングして管理する必要もなくなり、電子カルテに情報を手入力しなくても良くなるのです。
4.健診文書閲覧サービス
健診文書閲覧サービスは、健診結果を実施主体および全国の医療機関や本人が閲覧できるようになる仕組みです。現在、オンライン資格確認において、特定健診の結果は閲覧可能となっていますが、今後は企業健診や人間ドックなどの結果についても順次閲覧が可能になる予定です。
5.6情報閲覧サービス
6情報閲覧サービスは、厚労省がまず共有しようと考えた患者に係る6情報(傷病名・アレルギー・薬剤禁忌・感染症・検査・処方)を全国の医療機関や本人が閲覧できるサービスです。これらの情報は医療機関においては、電子カルテへの登録に合わせて、情報が医療情報管理データベースに蓄積され、医療機関や患者自らが閲覧可能となる仕組みです。
6.情報を共有するためには?
同サービスを実現するには、電子カルテから情報を抽出し、医療機関間で共有するために、既存の電子カルテシステムに、情報共有の仕組みを組み込む必要があります。わが国には電子カルテメーカーが多数存在し、それぞれが独自で開発してきたために、システム間での情報共有がこれまで困難とされてきました。そこで政府は、国際的標準規格である「HL7 FHIR」を採用することを決定しました。HL7とは、医療情報システム間における情報交換のための国際標準規約の作成、普及推進を行う非営利団体「HL7International」のことです。また、FHIRは「Fast Healthcare Interoperability Resources」の略で、Web技術を用いて医療情報をやり取りできる医療情報交換の次世代フレームワークのことです。HL7という団体が、医療情報システムの間で情報交換するルールを作成し、それを全国の電子カルテシステムに搭載することで、共通のフォーマットで書き込み、保存、共有が可能となるわけです。