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いよいよ2025年から始まる「電子カルテ情報共有サービス」②
2025.01.30
電子カルテ情報共有サービスについて、①診療報提供書②健診結果報告書③6情報について、具体的な内容や仕組みについて解説します。
【目次】
1.診療情報提供書の提供方法
診療情報提供書を医療機関同士で共有するためには、紹介元の医療機関が診療情報提供書を作成し、電子カルテ情報共有データベースに保存します。次に、紹介先の医療機関で診療情報提供書の取得する際の運用としては、①紹介先が「閲覧可」を選択すること、②直接相手先に送付するため、医療機関の一覧から相手先医療機関を選択すること、の2点を行う必要があります。もし、転居等で紹介先医療機関が変わる場合は「閲覧保留」を選択することで、情報がデータベースに留まるため、患者本人の同意がなければ紹介先医療機関は閲覧できなくなるのです。
2.診療情報提供書の構造化情報
診療情報提供書はこれまでテキストデータとして運用されてきましたが、診療情報を医療機関間で活用する観点から6情報(傷病名、紹介目的、既往歴、検査所見、治療経過、現在の処方)については構造化されたデータに変換する必要があるとしています。これを実現するためには、現在の電子カルテの改修が必要になります。
3.健診結果報告書の取扱いと運用の整理
健診結果の共有については、特定健診、高齢者健診、事業主健診、学校職員健診、人間ドックなどが対象となります。健診実施機関としては、医療機関や医療機関に併設の健診機関で、オンライン資格確認のネットワークにより健診結果報告書を登録するため、オン資を導入した医療機関等であることが必要となります。共有先としては、病院、診療所、そして患者本人もマイナポータルで閲覧が可能となります。共有のためのデータ形式はHL7FHIRで、健診結果が全部そろった時点で登録を行うことになります。
4.健診情報のシステムフロー
健診結果のフローについては、現在の健康保険法に基づき保険者に提出される経路を、新たに電子カルテ情報共有サービスを経由して健診実施機関から登録される新しい経路に変更する必要があります。これまで医療機関は、健診結果を紙で保険者に提出し、保険者がデジタルデータに変換する作業を行っていましたが、これからは医療機関自らが電子カルテや健診システムに登録する必要があり、そのためにはHL7FHIRが搭載されたシステムに変更する必要が出てくるのです。
5.6情報について
現在、まずは傷病名をはじめ6種類の情報を共有できるようにしようと考えています。いずれは情報範囲を広げていき、電子カルテに書かれている様々な情報が共有できればと考えているのです。
傷病名については、情報共有を行うにあたり、「未告知フラグ」「長期保存フラグ」「未提供フラグ」というものを設け、必要な傷病名だけを共有する形式を考えています。また、患者・医療機関に分かりやすい形で共有する観点から、主病名の設定を行うとしています。
アレルギーについては、薬剤アレルギーと食品などのアレルギーに分けて情報共有を図ろうとしています。これらの情報は、通常問診票に書かれているのですが、現状の電子カルテの運用では、紙の問診票をスキャンするか、電子カルテに登録するという運用が行われています。この仕組みを実現するためには、問診票のデジタル化も進めていく必要があることになります。
検査結果については、生活習慣病の項目、救急時に有用な43項目の検体検査結果と5項目の感染情報を共有するイメージが示されています。これらの検査は、医療機関では院内で行うものと外注検査センターで行うものがあり、これらの情報を統一のフォーマットで登録していくという作業が生まれることになります。現場の業務負担を減らすためには、できるだけ登録の自動化が進むことを期待します。
6.スケジュール
今後のスケジュールとしては、現在9地域でモデル事業が進められており、その結果を踏まえて、2025年4月ごろをめどに運用開始としていますが、「令和7年度中に本番稼働」とされていますので、時期は少し遅れることが予想されます。ちなみに、このモデル事業は「標準型電子カルテ」も合わせて導入が行われています。電子カルテ情報共有サービスと標準型電子カルテは同じベクトルで準備が進められているのです。
健康・医療・介護情報利活用検討会医療等情報利活用ワーキンググループ2024.6.10(厚労省)
7.補助金
補助金については、2025年1月時点では病院向けのみ公表されています。診療所向けにも今後発表されるのではないかと考えます。病院の例に補助額を考えると、電子カルテコストの1割ほどになるのではないかと予想します。
補助金の情報は、「医療機関等向けポータルサイト(https://iryohokenjyoho.service-now.com/csm)」で公表されるため、定期的にチェックすることをお勧めします。