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【2025年版】介護事業者が検討すべき保険外サービスの一覧と最新動向

2025.03.10

 

【目次】

  1. なぜ保険外サービスが注目を集めているのか
  2. 保険外サービスの種類
  3. 事例:保険外の訪問看護・訪問介護サービスとは
  4. これからの市場である保険外サービス

 


1.なぜ保険外サービスが注目を集めているのか

介護保険制度が導入されてから約24年が経過しました。現在では日本の高齢者福祉の基盤として広く普及し、人々の生活の中にも深く根付いたのではないでしょうか。

しかし昨今の介護業界を取り巻く環境は変化し、慢性的な人材不足、年々難易度を増す法改正対応、高齢者のニーズの多様化といった課題がでてきています。中でも、高齢者のニーズの多様化については、介護保険の枠内では対応できないケースも出てきています。例えば「もっと長くリハビリを受けたい」「自由に外出したい」「趣味や旅行を楽しみたい」といった希望は、介護保険の範囲内では対応することが難しいです。一方で、そこにニーズを見出した事業者が、介護保険外のサービスを開始するというケースも増えてきています。

 

経済産業省の『新しい健康社会の実現に向けた「アクションプラン2023」』によると、介護保険外サービス(公的保険外サービス)の市場規模は今後拡大傾向にあり、2050年には77兆円にまで達すると試算しています。

(出典:『新しい健康社会の実現に向けた「アクションプラン2023」(経済産業省)』

 

特に、家事代行、移動・外出支援、訪問美容、自費リハビリといった分野の成長が見込まれるのではないかと考えています。

他にも、介護保険の対象とはならない、日常生活の支援や介護予防につながる民間のサービスも含めて充実させることを目的として20243月には「介護関連サービス事業協会(英文表記:Care-related Service Business Association)」の設立がなされました。公的介護保険の補完的役割としての保険外サービスの産業振興を目的に、厚生労働省や経済産業省との連携も予定されています。

 

このように、介護保険の枠を超えた「保険外サービス」が急速に注目されるようになっています。筆者が20252月に本テーマで講演した東京ケアウィーク(東京ビックサイトにて開催)の専門セミナーでは、実に約300名の方がご参加されたことからも、注目の高さが伺えました。

本コラムでは、いま非常に注目を集めている保険外サービスの基本事項と実例についてお伝えします。拙著「介護保険外サービスの基本がよくわかる本(秀和システム,2024)」では、更に詳細な説明を加えておりますので、ご興味をお持ちいただけた方は是非そちらもご参照ください。

 

2.保険外サービスの種類

保険外サービスとは、介護保険ではカバーできない、より自由度の高いサービスのことを指します。これらのサービスは利用者がサービス費用の全額を自己負担するものの、介護保険等の制約を受けることなく、利用者それぞれのニーズに合わせた柔軟な対応が可能です。例えば、以下のような種類があります。

<保険外サービスの種類>

(出典:介護保険外サービスの基本がよくわかる本,2024)

 

保険外サービスは、事業者が地域の状況や自社の得意な領域等を考慮して自由に事業化するため、それぞれの事業者によってサービス内容や価格が異なります。

例えば、上記に分類されているサービスでも、更に以下のようなサービスに細分化されます。

 

・リハビリ・機能訓練(例:自費リハビリ施設、訪問リハビリ)
・生活支援(例:家事代行、外出支援、買い物代行)
・医療・看護ケア(例:自費訪問看護、健康管理、服薬支援)
・趣味・娯楽(例:趣味活動、旅行支援、ペット介護)
・美容・理容(例:訪問美容、ネイルケア、スキンケア)
・見守り・防犯(例:オンライン見守り、安否確認サービス)
・終活・看取り(例:エンディングプランニング、グリーフケア)

 

利用者目線でみると、介護保険適用サービスとの大きな違いは、“自由にサービスを選べること”です。

例えば、介護保険の訪問介護では掃除・洗濯はできますが、「家族の分の洗濯」「料理の下ごしらえ」「ペットの世話」は対象外です。しかし、保険外の家事代行サービスなら、こうした制限なく対応することができます。

このように、保険外サービスは高齢者の個別ニーズに柔軟に対応できる選択肢として、今後ますます重要になっていくと考えられます。

 

3.事例:保険外の訪問看護・訪問介護サービスとは

介護保険内の訪問介護・訪問看護サービスは、利用時間や提供内容に厳しい制限があります。そのためより自由度の高いケアを求める高齢者や家族にとって、保険外の訪問介護・訪問看護サービスは重要な選択肢となりつつあります。

保険外の訪問介護サービスは、「家事援助」「外出支援」「認知症の24時間見守り」などを提供しています。たとえば、1時間あたり2,500円~3,000円の料金から、介護保険では対応できないサービスを提供することが可能です。

保険外の訪問看護サービスは、介護保険内では週数回の短時間対応などに限られるところ、条件があるものの医療処置やリハビリを時間制限なく受けることが可能です。一般的に、1時間あたり5,000円~10,000円の費用がかかりますが、退院後のケアや予防的な健康管理に役立っています。

ある訪問介護事業者では、通常の訪問介護に加えて「夜間の見守りを提供」し、利用者の満足度を向上させています。このサービスは、家族の介護負担軽減につながり、利用者の生活の質(QOL)向上にも貢献しています。

このように、保険外の訪問看護・訪問介護サービスは、利用者のニーズに合わせた柔軟な対応ができる新たな選択肢として、今後さらに市場が拡大することが期待されています。

 

4.これからの市場である保険外サービス

介護保険制度では対応しきれない部分を補う形で、保険外サービスの市場は年々拡大しています。高齢者にとっては、自分のライフスタイルやニーズに合ったサービスを選べる自由が広がり、生活の質(QOL)の向上につながります。一方で、介護事業者にとっても、収益の多様化や事業の差別化の機会を生み出し、経営の安定化につながる可能性があります。

しかし、市場の成長とともに、新たな課題も浮き彫りになっています。例えば、保険外サービスの存在自体が十分に周知されていないことや、料金体系が不透明で利用者にとって分かりにくいといった問題が挙げられます。また、公的な制度の枠組みがないため、サービスの質の担保や事業者間のルールづくりも課題の一つです。これらの課題を解決しながら、更なる発展を目指していくことが保険外サービスにとっては重要なことになるでしょう。

 

本稿を通じて、保険外サービスの可能性や市場の動向を理解し、事業者にとって新たな展開のヒントを得るきっかけになれば幸いです。

 

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筆者:株式会社スターパートナーズ代表取締役
一般社団法人介護経営フォーラム代表理事
脳梗塞リハビリステーション・グループ代表
MPH(公衆衛生学修士)
齋藤直路

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