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医療DX推進体制整備加算の2025年4月の見直しNEW
2025.03.31
【目次】
1.政府のDX政策の背景
医療機関を取り巻く環境は、現在大きな転換期を迎えています。急速に進む超高齢社会によって、要介護・認知症患者などが増加しています。少子化の影響から生産年齢人口が減少し、人手不足が顕著になっています。また、2019年に始まった「働き方改革」の影響で長時間労働を是正する流れが一般化しています。さらに、コロナ禍で我が国のデジタル化の遅れ浮き彫りとなっています。このような状況を打開する一つの方策として、医療DXによる業務効率化、生産性向上が急務となっています。
そのような状況を受けて、2023年6月2日に医療DX本部は「医療DXの推進に関する工程表」を公表しました。同工程表では、オンライン資格確認(マイナ保険証)に始まり、電子処方箋、電子カルテ情報共有サービスを進め、最終的には全国医療情報プラットフォームを構築するスケジュールが描かれています。
「全国医療情報プラットフォーム」は、医療機関、介護施設、公衆衛生機関、自治体でこれまでバラバラに保存・管理されてきた患者の医療・介護関連情報を、共通のプラットフォームで再構築することで、全国で情報の閲覧・共有・管理を一気通貫で行える仕組みのことです。
また、並行して「標準型電子カルテ」や、レセプト算定に関する「共通算定モジュール」などを開発し、情報共有をスムーズに進めるためのインフラ整備も計画されています。
2.医療DX推進体制整備加算の施設基準
2024年6月の診療報酬改定では、医療DXの評価として、医療情報取得加算、医療DX推進体制整備加算、在宅医療DX情報活用加算などが新設されました。
その中でも、医療DX推進体制整備加算は、オンライン資格確認、電子処方箋、電子カルテ情報共有サービスといった政府の医療DXの柱となる政策の普及推進を目的に新設されました。算定のための施設基準は、以下の8点が設けられています。
- オンライン請求の実施
- オンライン資格確認を行う体制
- 医師が電子資格確認を利用して取得した診療情報を閲覧又は活用できる体制
- マイナ保険証の利用実績【経過措置2024年10月】
- 電子処方箋を発行する体制【経過措置2025年3月末】
- 電子カルテ情報共有サービスを活用できる体制【経過措置2025年9月末】
- 院内掲示
- ウェブサイト掲載
マイナ保険証の利用実績、電子処方箋、電子カルテ情報共有サービスについては、それぞれ経過措置を設け、順次進めていくことで加算が算定できる仕組みとなっています。
3.2024年10月の見直し
「マイナ保険証の利用実績」による見直しが2024年10月に行われました。6月の改定で明らかにされていなかったマイナ保険証の利用実績の基準が示され、利用実績に応じて3段階に評価区分が設定されています。
2024年10月の点数の見直し
|
2024年6月 |
10月 |
医科 |
医療DX推進体制整備加算 8点 |
加算1 11点 |
調剤 |
医療DX推進体制整備加算 4点 |
加算1 7点 |
(著者製作)
利用実績
|
令和6年7・8月~ |
令和6年10・11月~ |
適用時期 |
令和6年10月~ |
令和7年1月~ |
加算1 |
15% |
30% |
加算2 |
10% |
20% |
加算3 |
5% |
10% |
(著者製作)
4.2025年4月の見直し
「電子処方箋の体制」による見直しが、2025年4月に行われます。具体的にはマイナ保険証の利用率が引き上げられ、新たに電子処方箋の導入の有無が加わり、計6段階の点数となります。電子処方箋の普及が医科(病院・診療所)で予定を大きく下回ったため、電子処方箋の導入がなくても算定できる暫定処置が行われています。一方、電子処方箋の普及が進んでいる調剤薬局については、電子処方箋の導入がなければ算定できなくなり、3段階の点数となっています。
医療DX推進整備体制加算の算定に関する届け出は、電子処方箋を導入済みの場合に算定できる加算1~加算3については、新たに届出(電子処方箋の導入に変更する)が必要となります。一方、電子処方箋の導入が必要ない加算4~加算6については、届出は必要ないとしています。
2025年4月の点数の見直し
|
マイナ利用実績 |
医科 |
調剤 |
電処方箋あり |
加算1(45%) |
12点 |
10点 |
加算2(30%) |
11点 |
8点 |
|
加算3(15%・12%※) |
10点 |
6点 |
|
電子処方箋なし |
加算4(45%) |
10点 |
算定できない |
加算5(30%) |
9点 |
||
加算6(15%・12%※) |
8点 |
(著者製作)
なお、小児科でのマイナ保険証の利用率がなかなか進まないことを受けて、小児科外来診療料を算定している医療機関であって、前年の延外来患者数のうち6歳未満の患者の割合が3割以上の医療機関は、2025年4月1日から9月30日までの間に限り、「15%」は「12%」に緩和するとしています。
5.今後の見直し予定
2025年1月29日に開催された中医協で、答申書の附帯意見が示されています。附帯意見としては、2025年10月以降のマイナ保険証利用率の実績要件の設定について、「7月頃を目途に、マイナ保険証の利用状況、保険医療機関・保険薬局における利用促進に関する取組状況等、実態を十分に勘案した上で検討、設定すること」としています。
また、電子処方箋については、「令和7年度夏を目途に見直しを行うこととされている電子処方箋に関する新たな目標の達成等に資するよう、その評価の在り方及び実効的な措置について、次期診療報酬改定に向けて検討する」としています。
このことから、2025年10月にマイナ保険証の利用実績基準の引き上げと2026年改定で、電子処方箋の要件の見直しが行われると予想します。