• 調剤
  • #新薬情報

【押さえておきたい新薬情報】レクビオⓇ皮下注(脂質異常症改善薬)

2025.04.09

 

この記事は…

大学病院で医薬品情報を担当していた薬剤師が、年に4回承認される新薬のなかから話題の新薬をピックアップ。その特徴や作用機序、必ず押さえておきたいポイントを分かりやすく解説します。


 

2023年11月、持続型LDLコレステロール低下siRNA製剤のレクビオ®皮下注(一般名:インクリシランナトリウム)が発売されました。希少疾患以外では、初めてのsiRNA製剤になります。初回、3ヵ月後、以降半年に1回の投与でLDL-Cの管理が可能になるので、治療アドヒアランスの向上が期待されます。

『脂質異常症改善薬の臨床評価に関するガイドライン2020』では、「脂質異常症を治療する主たる目的は、脳心血管イベントの抑制であり、それらが原因となる死亡を防ぐことである」とされます。家族性高コレステロール血症は、高LDL-C(低比重リポ蛋白コレステロール)血症、腱黄色腫及び若年性冠動脈硬化症を主徴とする遺伝子疾患。LDL-C高値と心血管イベントの発症には関連が認められており、動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)の予防のために厳密なLDL-C管理が求められます。高コレステロール血症であれば、スタチンの内服のみで十分ですが、家族性高コレステロール血症の場合はスタチンだけでは不十分で、強力なLDL-C低下作用をもつPCSK9阻害薬の併用が推奨されています。   

PCSK9(プロ蛋白転換酵素サブチリシン/ケキシン9型)は、LDL-Cを取り込む肝細胞上のLDL受容体の分解(リサイクリング)を促進して、LDL-C を調節するタンパク質。PCSK9 阻害薬のレパーサ®皮下注〔エボロクマブ(遺伝子組換え)〕は、PCSK9とLDL受容体の結合を阻害する抗体医薬で、血中LDL-Cを低下させます。一方、レクビオ®が標的とするのは、さらに上流にあるmRNA(メッセンジャーRNA)。核酸医薬(siRNA製剤)は、低分子医薬や抗体医薬に続く、次世代の医薬品として期待されています。国内で発売されているsiRNA製剤は、オンパットロ®点滴静注(パチシランナトリウム)、アムヴトラ®皮下注(ブトリシランナトリウム)、ギブラーリ®皮下注(ギボシランナトリウム)があります。生命のセントラルドグマは、二本鎖のDNA情報を一本鎖のmRNAが転写し、タンパク質に翻訳するというもの。近年、このmRNAを二本鎖のsiRNAが制御する『RNA干渉』という現象が発見され()、がん治療などへの応用が期待されています。siRNA(スモール・インターフェアリング:短鎖干渉RNA)製剤のレクビオ®は肝細胞に取り込まれ、PCSK9を生成する遺伝情報を持つmRNAの分解を促進することで、PCSK9 の発現を低下させます。これにより肝細胞上の LDL 受容体が増加し、LDL の取り込みが促進された結果、血中LDL-Cが劇的に低下します。

商品名

レクビオ皮下注300mgシリンジ

一般名

インクリシランナトリウム

会社名

ノバルティスファーマ株式会社

適応症

家族性高コレステロール血症、高コレステロール血症
ただし、以下のいずれも満たす場合に限る
・心血管イベントの発現リスクが高い
・HMG-CoA還元酵素阻害剤で効果不十分、又はHMG-CoA還元酵素阻害剤による治療が適さない

用法・
用量

通常、成人にはインクリシランナトリウムとして1回300mgを初回、3ヵ月後に皮下投与し、以降6ヵ月に1回の間隔で皮下投与する

適用上の注意

本剤の投与は必ず、医師・看護師等の医療従事者が行なう
注射部位は腹部、上腕部又は大腿部とする

副作用

主な副作用として、注射部位反応(注射部位疼痛、注射部位紅斑、注射部位発疹等)、肝機能障害

薬価

300mg1筒 443,548円

使用に際しては、添付文書を必ずお読み下さい。

図 siRNA によるRNA干渉

 

 

 

  PCSK9阻害薬とsiRNA製剤

 

商品名(一般名)

会社名

効能・効果

PCSK9阻害薬

レパーサ®皮下注〔エボロクマブ(遺伝子組換え)〕

アステラス製薬

家族性高コレステロール血症、
高コレステロール血症

 siRNA製剤

レクビオ®皮下注
(インクリシランナトリウム)

ノバルティスファーマ

オンパットロ®点滴静注
(パチシランナトリウム)

Alnylam Japan

トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチー

アムヴトラ®皮下注
(ブトリシランナトリウム)

ギブラーリ®皮下注
(ギボシランナトリウム)

急性肝性ポルフィリン症

 

 EM  

 ------------------------

筆者:浜田康次 一般社団法人日本コミュニティファーマシー協会理事

特記ない場合には当サイト内コラム・画像などは投稿者及び当社が作成したものとなります。