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「経験値」は大事な経営資源 ~DXの波を上手く使う~NEW

2025.04.30

 

薬局経営は、数字を見ながら正しい結論を導くことが重要です。しかし、数字に表れない指標も考えなければなりません。今日は、数字に見えない「経験値」に焦点をあてます。

このコラムをお勧めしたい人

現場の経験値を活用したい中小薬局経営者、経営幹部におすすめです。

 

【目次】

  1. (1)生産性の肝「経験値」
  2. (2)経験値軸で注意しておきたいこと
  3. (3)調剤事務の経験値軸を活用したサービス

 


1.(1)生産性の肝「経験値」

経営はどこに投資を行い、無駄は削減するかを追求することで、生産性を見ていくことになります。生産効率を高めるためには、財務や調剤報酬等の指標を見ながら、「数字」を追うことが基本ですが、数値を追うだけでは足りません。その代表例が「経験値」です。

例えば、分包機。使い方が上手い人は、短時間で業務をこなしますが、背景にはたくさんの経験値があるからです。しかし、分包機の使い方が上手・下手についての推し量る経営数値はありません。良い判断するには、実際にやってもらい確認しなければなりません。しかし、2店舗以上を経営するようになると全ての店舗に張り付くことはできませんから、判断から抜け落ちてしまうことが往々にしてあります。

経営のポイント

現場に張り付かないと見えてこない指標がある。特に、経験値は注意である。そのため、経営数値だけでなく、現場の確認や管理者の声を大事にすることが重要である。

 

2.(2)経験値軸で注意しておきたいこと

経験値が高いと熟達し、分包機作業のように上手くいくことが多いということは、前述の通りです。しかし、時間は有限ですから、経験値を積む時間は限られています。そのため、自社の強みの源泉になる部分は自社で内製化(会社で経験値を蓄える業務)とし、関係ないものは外部委託や、簡素化するのが強い会社の特徴になります。

 

①絞り込むとやるべきことが圧縮されるので、重要業務の経験値を増します。薬剤師業務であれば、対人業務は相手の状態把握が上昇するほど、患者さん満足度は上昇します。結果的に患者さんに薬局を選んでいただく強みになります。薬局も他の商売と同じで、原理原則は顧客基盤をしっかりと作ることです。ですから、顧客基盤づくりに繋がる流れが大切にやることを絞る戦略は意識しておくのが良いと思います。
調剤事務も同様で、方向性をもって内製化を進めていくことが重要です。 0402 通知にもありましたように、調剤事務が行える対物業務も増えているため、薬剤師の補助作業として薬局でやらなければならないことが増えています。薬局としてやらなければならないことに焦点をあてて、経験値を積み上げていくのが会社の安定性を高めると思います。特に、スピードは患者さんが求めるケースが多いため、経験値上昇でスピードが上がる対物業務に力を注ぐのことで患者満足度があがります。

 

②対人業務でも対物業務であっても、現在 DX (デジタルトランスフォーメーション)が進み、今までできなかったことも、機器に代替できることが増えてきました。選択肢が増えたため、使える選択肢の情報アップデートをすることで、生産性が向上します。医療機器は値段がバラバラですが、薬剤師や調剤事務の時給で換算すれば投資判断が大きく外れることは無いと思います。

経営のポイント:医療機器、DXとの向きあい方

医療機器やDXをしようとする時に、良く起こる問題点として、医療機器に投資したが活用されていない事例があります。もちろん、それでは投資対効果は期待できません。

そこで、現場メンバーがしっかりと使いこなせるまで行うことをセットで考えることが需要です。現場に浸透させるコツを2つ紹介します。

・効率化:機器を導入することで、どのように効率化が上がるのかを明確に数値等で示すと実感し、浸透しやすくなります。投資判断をする人が納得された理由をメンバーに伝えることで会社の意思が伝わりやすくなります。人は、「何故?」があると動きます。

・見える化:薬剤師や調剤事務本人が自分のパフォーマンスの「見える化」できると、行う価値があると理解され、長続きします。例えば、残業時間の短縮などが導入後にわかったのであれば、そのことを共有することなどが挙げられます。

 

③最低賃金が上昇してきているため、会社全体の人件費も上昇し続けます。最低賃金は、毎年 30 円~ 40/ 時給が上昇しております。最低賃金上昇は、該当者だけの賃金をあげるだけでなく、会社全体の賃金底上げをしないと不公平となるため、結果的に全社的に人件費を高めることになります。最低賃金が 30 円上昇し、月 170 時間労働とすると、月額 5,100 円、年額 61,200 円にもなります。これはかなりのインパクトではないでしょうか。

著者作図

政府は2020年代に時給1,500円とする目標を掲げていますので、引き続き人件費総額は上昇していく可能性が高いです(あと5年程度で2020年代は終わりますが、目標を達成するには毎年100円程度の上昇が必要です。)。最低賃金の観点は、薬局業界で見ていかなければならない視点でしょう。

 

④派遣との付き合い方

派遣薬剤師や派遣事務は、会社の急場を凌ぐ場合には大切なパートナーであると思います。ただ、使い方としては一時的に留めておくことが重要です。

金銭面の違いはお気づきのことと思いますが、それ以外にも経験値、教育についても理解をしておく必要があります。派遣労働者は、社外の人になりますので、ノウハウや知見は会社に中々ストックされません。結果として、会社に経験値が貯まらない。また、派遣労働者は短期的に入る方ですから、本格的な従業員が教育をしにくい側面もあります。

 

3.(3)調剤事務の経験値軸を活用したサービス

大手薬局だけでなく、中小薬局でも「経験値」を有効活用しようとする機器の導入事例が出てきています。薬剤師業務は、0402通知により調剤事務が代替できることが増え、整理が出来てきたと思います。そのため最近は、生産性のポイントになってきているのは「調剤事務の生産性」です。

著者作図

経験値を考えずに置き換え可能な医療機器は今までも多くありましたが、最近は社内に蓄積された「調剤事務の経験値」を活用されるサービスが出始めてきています。今日紹介するのは、処方箋入力に焦点をあてたものです。完全に処方箋入力の外注される仕組みもありますが、スピード面での熟達度は社内内製化に軍配が上がるケースが多い様です。

EMシステムズでも「処方箋シェアリング」というサービスがありますので、気になる方は問い合わせてみてください。

https://emsystems.co.jp/ir/irnews/2023/231128_01.pdf

薬局で生産性を高める視点として、「経験値」を考えるきっかけになれば幸いです。

 

 

 EM  

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筆者:鈴木 素邦 有限会社クラヤ代表取締役  城西大学薬学部非常勤講師
1980年生まれ、千葉県出身。城西大学薬学部卒業と同時に薬剤師免許取得。
薬局薬剤師の経験を経て、専門部署を持てない中小薬局向けのコンサルティング会社を立ち上げ、「お客様の思いをカタチに」をモットーに中小薬局経営者の右腕になれる存在を目指している。特に、1店舗からでも喜ばれるサービスはゼロからの地域支援体制加算の算定、数店舗経営会社からは人材マネジメント、大手企業からは、マネジメント研修が好評。
書籍:その1錠が寿命を縮める薬の裏側
YouTube:薬剤師そほうの薬局経営塾(調剤報酬改定など発信)
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