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電子カルテとレセプト点検(後編)NEW

2025.05.27

 

レセプトを点検する機関である「審査支払機関」は、コンピュータチェックやAIの活用を行い、業務効率化を進めています。医療機関もいまこそシステム化を進め人の目とシステムの融合を進めていくことが大切です。

 

【目次】

  1. 審査支払機関の改革
  2. レセプト点検の重要性
  3. 生活習慣病管理料ⅠとⅡのチェックポイント
  4. システム化による効率化
  5. 人の目とシステムの融合

 


1.審査支払機関の改革

審査支払機関はいま大きな変革期に来ています。2021年から約5年間をついやし、社保、国保、地域といったチェックの格差を解消しようと進めているのです。現在は社保と国保のチェック内容が違うケースが存在します。そこで、新たなコンピュータチェックの仕組みでは、社保と国保の差の解消、チェックの全国統一を準備しているのです。

その背景には、審査機関として大きな組織になりすぎたので、人員削減、コスト削減を進め、業務を効率化することが求められているのです。

令和54月以降、原則オンラインで返戻、再請求が進められています。これまでのように紙を送付するのではなく、返戻ファイルをダウンロードして対応するようになっているのです。これにより、実は何割かの医療機関はファイルをダウンロードしていないこともあり、問題となっています。

さて、医療DXについても、2024年度に医療機関等の各システムの間の共通言語となるマスター及びそれを活用した電子点数表が改善されました。そして2026年度には、いよいよ「共通算定モジュール」を本格的に提供するための準備が始まっています。共通算定モジュールは、いわゆる標準型レセコンで、世の中がレセコンの仕組みも統一され、レセプトチェックも統一され、そしてコンピュータによるチェックが当たり前の時代になれば、国が考える診療報酬改定DXが完成するとされているのです。

 

2.レセプト点検の重要性

電子カルテの運用において、レセプト点検は重要な役割を果たします。例えば、病名と薬剤の適合性、病名と検査の適合性、薬剤の容量や相互禁忌、検査の算定月回数などのチェックが行われます。また、症状詳記やコメントなど、レセプトの審査を通すための工夫も行われてきました。症状詳記が必要なケースでは、高額(高点数)レセプトや過去の経験則により返戻や査定によって指摘されることが、あらかじめ予測できるもの、診療報酬上、「医学的に必要な理由」の記載が必須となっているような材料や手技、医学的に妥当適切な傷病名等のみでは、診療内容の説明が不十分と思われる場合に行われてきました。

従来、これらの点検は月に一度、レセプトを印刷し、事務スタッフが手作業でチェックしていました。しかし、この方法では月末月初の業務負担が集中し、残業や休日出勤が生じていました。

 

3.生活習慣病管理料ⅠとⅡのチェックポイント

よくあるチェック例としては、初診料と再診料の算定や、一般名処方加算1と2の違い、特定疾患療養管理料と生活習慣病管理料の違い、生活習慣病管理料ⅠとⅡの違いなどが挙げられます。

具体例として、2024年度の診療報酬改定で改変された生活習慣病管理料を例にチェックについて考えてみましょう。具体的には以下の5点を意識してチェックが行われています。

チェック➀算定タイミング
チェック②包括範囲の確認、併算定不可
チェック③加算の確認(血糖自己測定指導加算、外来データ提出加算)
チェック④療養計画書の発行タイミング(4か月に1回)
チェック⑤切り替えタイミング(生活習慣病管理料(Ⅰ)を算定した日の属する月から起算して6月以内の期間においては、生活習慣病管理料(Ⅱ)は、算定できない)

 これらのチェックはシステムではなかなかチェックが難しく、現時点では人によるチェックに依存する必要があります。

 

4.システム化による効率化

近年、レセプト点検の効率化を目的に、システムによる点検の導入が進んでいます。また、一体型の電子カルテでは、診療記録入力時にリアルタイムで点検を行うことが可能です。これにより、月に一度の集中点検では防ぎきれなかった点数の取り漏れを防止することができます。

また、電子カルテのクラーク運用のように、医師の隣に事務スタッフを配置することで、診療中に点検を行うことが可能となり、患者の診察が終了する前に不備を修正することが実現し、効率的な点検が可能となるのです。

 

5.人の目とシステムの融合

システム化が進む一方で、人の目による点検が完全に不要になるわけではありません。システムが苦手とする部分や、文脈の理解が必要な判断は依然として人間の役割です。しかし、診療中や診察直後の分散点検を取り入れることで、業務負担を軽減しつつ、精度の高い点検を実現することが可能です。

今後、AI技術の進化により、さらに精度の高いレセプト点検が可能になると期待されています。AI技術を活用することで、診療記録の内容をリアルタイムで解析し、点数の算定ルールに基づいたアラートを出すことが可能になります。

電子カルテとレセプト点検の仕組みを理解し、適切に運用することは、医療機関の効率化と診療の質向上に直結します。医療現場での新しい技術の活用を積極的に取り入れ、より良い診療体制を築いていくことが求められています。

(著者製作)

 

 EM  

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筆者:株式会社EMシステムズ EM-AVALON事務局

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