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令和8年度診療報酬改定に向けての議論(1)NEW
2025.08.05
令和8年度診療報酬改定に向けた議論では、医療DX推進(電子処方箋の普及)やかかりつけ医機能報告制度をかかりつけ医関連点数にどのようにリンクさせるかといった、医療制度全体の変革と診療報酬改定が連動した内容が検討されることになります。今回は前改定で示された「答申書附帯意見」と財務省の「持続可能な社会保障制度の構築」という資料について解説します。
【目次】
1.令和6年度改定の答申書附帯意見
中医協答申の際にまとめられる「答申書附帯意見」は、令和6年度診療報酬改定の中で、次期診療報酬改定においても引き続き議論して欲しい内容をまとめたものです。
次期診療報酬改定で検証する必要があるとされたものは、令和6年度改定で新設された「ベースアップ評価料」「医療 DX 推進体制整備加算」です。
また、内科を中心に大きく影響のあった「生活習慣病管理料」については、「改定による影響の調査・検証を行うとともに、より適切な管理がなされるよう、患者の視点を十分に踏まえつつ、引き続き検討すること」としています。
「かかりつけ医」については、「かかりつけ医機能評価制度の整備の状況を踏まえ、かかりつけ医機能がより発揮される評価の在り方を検討すること」としています。「地域包括診療料・加算」の介護保険サービスとの連携に係る評価についても、「改定による影響の調査・検証を行うとともに、介護保険サービスとの連携の推進について引き続き検討すること」としています。
「情報通信機器を用いた精神療法」については、「患者の受療行動を含め、その実態について調査・検証を行うとともに、より適切な評価の在り方について引き続き検討すること」としています。また、オンライン診療で、初診から向精神薬等を処方しているケースについても引き続きの検討を求めています。
在宅医療については、「同一建物居住者への効率的な訪問診療や訪問看護における対応等、改定による影響の調査・検証を行うとともに、地域における医療提供体制の実態等も踏まえつつ、往診、訪問診療、訪問看護等における適切な評価の在り方を引き続き検討すること」としています。
「長期処方やリフィル処方に係る取組」については、「改定による影響の調査・検証を行うとともに、適切な運用や活用策について引き続き検討すること」としています。
2.持続可能な社会保障制度の構築(財務省)
2025年4月23日に財務省は「持続可能な社会保障制度の構築」という資料を提示しました。次期診療報酬改定の議論に向けて、財務省が現状の問題点を示し、検討内容をまとめたもので、次期診療報酬改定に関連する内容を解説します。
2026年度診療報酬改定は、これまで進めてきた「2025年に向けた改革」のバトンを引き継ぐ改定であり、新たな地域医療構想や医師偏在対策の強化、そして、施行が本格化する「かかりつけ医機能報告制度」の後押しともなるようなメリハリのある改定とすべきとしています。具体的な論点としては、以下の4点を挙げています。
- 病院と診療所では経営状況や費用構造等が異なることを踏まえたメリハリある改定の実施
- 地域での全人的なケアの実現に資する報酬体系の見直し
- 診療ガイドラインに基づく適切な疾病管理を踏まえた診療報酬の在り方の見直し
- 医師偏在対策につながる診療報酬上の措置の検討
- リフィル処方箋の一層の利用促進に資する診療報酬上の対応
中小企業に比べ利益が出ていると考えられている診療所については、「2024年度の医療機関の経営状況について、年末に判明する医療経済実態調査等のデータを精緻に分析した上で、国民負担の軽減と必要な医療保障のバランスを図りながら、メリハリある対応を検討する必要」があるとしています。
全人的なケアについては、外来診療の機能分化・連携をさらに進め、「各種の基本料や加算を今一度よく精査・整理した上で、診療側の提供体制や経営上の都合ではなく、真に患者本位の治療を実現できる報酬体系へと再構築すべき」としています。
生活習慣病患者の疾病管理については、病状が安定してきた患者に対するフォローアップは、一般的な診療ガイドラインに沿う形で報酬の算定要件を厳格化することを求めています。例えば、「血圧がコントロールされている場合の生活習慣病管理料の算定について、1か月に1回よりも長くする等の対応を検討すべき」としています。
診療所の地域間偏在を解決するためには、「2026年度診療報酬改定において、真に実効性のある診療報酬上の仕組みを創設することが不可欠。あらゆる方策を検討すべき」としています。
リフィル処方を強力に推進していく姿勢も示しており、「早期に的確なKPIを設定するとともに、リフィル処方の実績がリアルタイムで確認できるような仕組みを設けるべき」としています。また、特定の慢性疾患などにおいて、「薬剤師との連携によりリフィル処方が活用されるよう、診療報酬上の加減算も含めた措置を検討すべき」としています。また、「セルフケア・セルフメディケーションの推進、リスクに応じた自己負担、必要な医療へのアクセスの確保といった観点を踏まえ、OTC類似薬に係る保険給付の在り方の見直しを具体的に進めていくべき」としています。
3.改定の検討スケジュール
令和8年度の診療報酬改定に向けた検討スケジュールについては以下の図の通りとなっています。例年通り、年内に議論をまとめ、12月に基本方針、改定率、年明けに診療報酬改定の骨子が出て、2月に諮問答申が行われ、具体的な改定内容が明らかになると思われます。
(出典)中医協総会(225.04.09,厚労省)