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令和8年度診療報酬改定の基本方針NEW

2025.12.01

 

2026年に予定される令和8年度診療報酬改定(以下、令和8年度改定)について、社会保障審議会医療保険部会より、基本方針の骨子案が20261120日に示されました。そこで、骨子案をもとに、令和8年度改定の大枠について解説します。


 

【目次】

 


1. 改定に当たっての現状認識

令和8年度改定においては、物価高騰・賃金上昇、人口減少・支え手が減少する中での人材確保の必要性など、医療機関等が厳しい状況に直面していること、現役世代の保険料負担の抑制努力の必要性があることを踏まえつつ、地域の医療提供体制を維持し、患者が必要なサービスが受けられるよう、措置を講じる必要があるとしています。

また、2040年に向けて、医療・介護の複合ニーズを有する85歳以上人口が増加し、65歳以上の高齢者人口は地域差が生じていくことが見込まれ、こうした人口構造や地域状況の変化に対応するため、限りある医療資源を最適化・効率化しながら「治す医療」と「治し、支える医療」を担う医療機関の役割分担を明確化し、地域完結型の医療提供体制を構築する必要があるとしています。

 

2. 4つの視点

そのような状況の中、令和8年度改定に向けて4つの視点を示しています。

.物価や賃金、人手不足等の医療機関等を取りまく環境の変化への対応【重点課題】

.2040 年頃を見据えた医療機関の機能の分化・連携と地域における医療の確保、地域包括ケアシステムの推進

.安心・安全で質の高い医療の推進

. 効率化・適正化を通じた医療保険制度の安定性・持続可能性の向上

 

視点1 物価や賃金、人手不足等の医療機関等を取りまく環境の変化への対応

例年、視点1には直近の解決すべき最重要課題が示されます。今回は、物価高・賃金高・人材不足といった医療機関を取り巻く環境の変化への対応が挙げられました。

具体的な方向性としては、「医療機関等が直面する人件費や、医療材料費、食材料費、光熱水費及び委託費等といった物件費の高騰を踏まえた対応」や「賃上げや業務効率化・負担軽減等の業務改善による医療従事者の人材確保に向けた取組」が示されています。

 

視点2 2040 年頃を見据えた医療機関の機能の分化・連携と地域における医療の確保、地域包括ケアシステムの推進

視点2では、2040年にむけて人口動態の変化、地域ごとの医療ニーズの変化に合わせた、医療機関の機能分化や連携、地域完結型の医療サービスの構築の必要性が盛り込まれました。

具体的な方向性としては、「患者の状態及び必要と考えられる医療機能に応じた入院医療の評価」や「治し、支える医療の実現」「かかりつけ医機能、かかりつけ歯科医機能、かかりつけ薬剤師機能の評価」「外来医療の機能分化と連携」「質の高い在宅医療・訪問看護の確保」などが示されています。

 

視点3 安心・安全で質の高い医療の推進

視点3では例年通り、医療の「質」に着目した診療報酬での評価が挙げられていす。

具体的な方向性としては、「アウトカムにも着目した評価の推進」や「医療DXICT連携を活用する医療機関・薬局の体制の評価」「質の高いリハビリテーションの推進」「重点的な対応が求められる分野への適切な評価」「イノベーションの適切な評価や医薬品の安定供給の確保」などが示されています。特にDX関連では、電子処方箋システムによる重複投薬等チェックの利活用の推進や外来、在宅医療等、様々な場面におけるオンライン診療の推進が挙げられています。

 

視点4 効率化・適正化を通じた医療保険制度の安定性・持続可能性の向上

視点4では例年通り、今後も医療保険制度を維持していくために、効率化・適正化といった医療費の抑制にフォーカスした内容となっています。

具体的な方向性としては、「後発医薬品・バイオ後続品の使用促進」「OTC類似薬を含む薬剤自己負担の在り方の見直し」「電子処方箋の活用や医師・病院薬剤師と薬局薬剤師の協働の取組による医薬品の適正使用等の推進」などが挙げられています。特に、連日ニュースなどで取り上げられている「OTC類似薬の保険適用外し」についても盛り込まれており、どのような形で次期改定に向けて決着するのか、その動向に注意が必要です。

 

3. 今後の流れ

「令和8年改定」については、前回同様に20266月の改定施行で進められています。例年通りのスケジュールであれば、社会保障審議会が策定する「基本方針」は12月上旬に確定され、その後中央社会保障審議会にバトンタッチされ、12月中旬には診療報酬の「改定率」が示され、1月中旬に「諮問」、2月上旬に「答申」の流れで改定議論は進むことになります。

今後、年末年始に次期改定に向けての議論が大詰めを迎えることから、次期改定の先読みをし、準備を前倒しで進めるためにも、日ごろからの情報収集は必要不可欠となります。

(出典)「令和8年度診療報酬改定の基本方針の骨子案」より作成

 

 

 EM  

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筆者:株式会社EMシステムズ EM-AVALON事務局

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