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令和8年度診療報酬改定の行方(外来2)NEW

2025.12.01

 

2026年に予定される令和8年度診療報酬改定について、特に外来医療と薬価制度に焦点を当て、かかりつけ医機能、生活習慣病対策、データ提出加算、長期収載品やOTC類似薬の保険給付の見直しなど、社会保障審議会や中央社会保険医療協議会で議論されている主要テーマについて議論の内容を解説します。

 

【目次】

  1. かかりつけ医機能の評価
  2. 生活習慣病管理料の見直し
  3. データ提出加算
  4. 長期収載品に対する選定療養
  5. OTC類似薬の保険給付からの除外
  6. まとめ

 


1.かかりつけ医機能の評価

2026年4月から開始された「かかりつけ医機能報告制度」は、医療機関へのアンケートを基に地域の医療提供体制整備に係る議論に活用する制度であり、かかりつけ医を「認定」するものではありません。したがって、同報告制度と診療報酬上の評価を直接結びつけることには賛否両論が存在します。

  今回の改定で「機能強化加算」が見直される可能性があります。特にかかりつけ医機能報告制度の中でも盛り込まれている研修の受講を義務化するかが論点となります。現時点では、「認知症サポート研修」や「日本医師会の研修」が要件に盛り込まれる可能性が示唆されます。また、データ提出加算との連携も検討されており、新たに加算が設けられる可能性もあります。

  かかりつけ医機能を評価する点数には、機能強化加算や地域包括診療料・加算、外来管理加算などがあり、これら点数が一体的に見直される可能性もあります。大きな変化をもたらすシナリオとして、これらの点数が一本化され、包括点数になる可能性も考えられます。

 

2.生活習慣病管理料の見直し

前回令和6年度改定で、生活習慣病管理料がⅠ(包括)とⅡ(出来高)に分かれた結果、管理料Ⅰの患者は検査頻度が低く、管理料Ⅱの患者は高いという傾向が明確になりました。この実態を踏まえて、医療資源の投入量に応じた評価となるよう、特に管理料Ⅰについて見直しが検討されています。具体的な見直し案として、管理料Ⅰの算定期間の延長(例:月1回から3ヶ月に1回へ)や、包括範囲の変更が予測されます。また、治療の継続と患者の離脱防止についても議論が行われ、患者の治療継続に最も効果的なのは「予約診療」の実施であり、次いで「長期処方」も効果があるとのデータが示されています。

 

3.データ提出加算

入院医療ではデータ提出加算の必須要件化が進み、届出率7割を超えている一方で、外来医療では任意のため、届出率は約4%に留まっています。外来医療で届出が進まない最大の理由は、様式1の作成に係る負担増で、特に電子カルテから自動移行できない検査値等の入力負担が大きいことにあります。今後の論点として、入力負荷が大きい調査項目自体の見直しや、外来でのデータ活用の推進が挙げられています。将来的には外来医療でも範囲を徐々に広げていき、将来的には入院医療のように必須要件化される可能性も否めません。

 

4.長期収載品に対する選定療養

 後発医薬品(ジェネリック)の使用促進のため、202410月から、患者が先発品を希望した場合に後発品との薬価差の一部(4分の1)を自己負担とする選定療養が導入されました。これにより後発品の使用割合は増加している一方で、薬局では患者への説明負担が増加しています。次期改定においては、この自己負担割合を1/23/4、全額へと引き上げる議論が進行中です。

 

5.OTC類似薬の保険給付からの除外

2025年6月にまとめられた「骨太の方針2025」に基づき、市販薬と同じ成分を含む医療用医薬品(OTC類似薬)を保険給付の対象から外し、医療費を削減しようという議論が進んでいいます。実行期限が2026年度に設定されており、次期改定に盛り込みたい考えが示されています。法案などを変更せずに実行に移すためには、既存の仕組みの改編で行う必要があり、長期収載品で導入された選定療養の仕組みを応用する可能性があります。

OTC類似薬の保険給付の対象から外すことについては、様々な問題点が指摘されています。具体的には、自己負担増による受診控えで、症状が悪化するリスクや、アトピーの子どもやがん患者など、薬剤を多量・長期に使用する患者の負担が大幅に増えることなどが懸念されます。また、薬局のない地域があったり、医薬品の安定共有の問題があったり、越えなければならないハードルは高いといえます。

今後の見通しとして、子どもや慢性疾患患者への配慮などの論点は平行線のままであり、まずは影響の少ない少数品目から制度を開始し、段階的に対象を拡大していくと予測されます。

 

6.まとめ

令和8年度診療報酬改定は、物価高、賃金高、人手不足といった医療機関を取り巻く環境を勘案するとプラス改定になりそうな様相です。しかしながら、全体的に一律で引き上げるのではなく、「チャレンジすれば点数が算定できプラス、何もしないとマイナスになる」というメリハリのついた設計になる可能性があります。そのため、診療所はかかりつけ医機能報告制度の参加、研修の受講、データ提出などを確実に行っていく必要があります。また、生活習慣病管理料については 管理料の特性を理解し、適切に算定を調整する必要が出てくるでしょう。医薬品の処方についても、後発医薬品を積極的に採用し、不要な薬剤の処方を控えることで、マイナス影響を抑える必要があるでしょう。

  今後のスケジュールとしては、12月に改定率が決定し、1月に諮問、短冊(個別項目の概要)、2月に答申という流れで進むと予測します。

参照元:筆者作成

 

 

 EM  

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筆者:株式会社EMシステムズ EM-AVALON事務局

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