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令和8(2026)年度診療報酬改定のゆくえ【12月版】(前半)NEW

2025.12.26

 

2026年6月に予定される令和82026)年度診療報酬改定について、202512月時点の情報に基づき解説します。前半では、社会保障審議会が取りまとめた「令和8年度診療報酬改定の基本方針」並びに「改定率」について解説します。

 

【目次】

  1. 改定の基本認識
  2. 改定の具体的方向性
  3. 改定率

 


1.改定の基本認識

診療報酬改定は透明性を確保するため、社会保障審議会で大枠(基本方針)を決定し、その後、中央社会保険医療協議会(中医協)で詳細な内容及び点数を決める2段階プロセスをとっています。

2025年129日に社会保障審議会で令和8年度診療報酬改定の基本方針が策定されました。そこで、改定の基本認識(現状認識)が示されています。

 

「日本経済が新たなステージに移行しつつある中での物価・賃金の上昇、人口構造の変化や人口減少の中での人材確保、現役世代の負担の抑制努力の必要性」については、30 年続いたコストカット型経済から脱却し、新たなステージに移行しつつあるとし、昨今の物価・賃金上昇に対応し、医療機関の経営安定化と幅広い職種の賃上げを実現する必要があるとしています。

2040 年頃を見据えた、全ての地域・世代の患者が適切に医療を受けることが可能かつ、医療従事者も持続可能な働き方を確保できる医療提供体制の構築」については、85歳以上人口増加を見据え、医療と介護の複合型ニーズに対応するため、「治す医療」から「治し支える医療」へ転換が必要としています。その解決策として、地域包括ケアシステムのさらなる推進と、医療DXやタスクシフトによる人手不足対策を推進することが重要としています。

「医療の高度化や医療DX、イノベーションの推進等による、安心・安全で質の高い医療の実現」については、医療技術の進歩・高度化に加え、AIICTを活用した医療DXを一層推進する必要性が説かれています。

「社会保障制度の安定性・持続可能性の確保、経済・財政との調和」については、制度の持続可能性を確保し、現役世代の負担増を抑制するため、効率化・適正化を行い、国民が納得できる制度を目指す必要があるとしています。

 

2.改定の具体的方向性

また、基本方針における「具体的方向性」は、2026年1月下旬に出される短冊(改定内容をまとめたもの)の目次に当たります。そこで、具体的方向性の中から、診療所に影響する内容を解説します。

 

[1] 物価や賃金、人手不足等の医療機関等を取りまく環境の変化への対応【重点課題】

人件費や、医療材料費、食材料費、光熱水費及び委託費等といった物件費の高騰を踏まえた対応が行われます。一方、業務効率化(ICTAIIoT、タスクシェア)についてもセットで評価が行われます。また、診療科偏在についても取り組むとしています。

 

[2] 2040 年頃を見据えた医療機関の機能の分化・連携と地域における医療の確保、地域包括ケアシステムの推進

ターゲット年を85歳以上が増加する「2040年」に変更し、地域包括ケアシステムをさらに推進するとしています。新たに地域医療構想については、従来の入院医療だけでなく、外来医療や在宅医療も含むものへ再編が行われます。かかりつけ医機能の評価についても、報告制度の開始を踏まえた対応が行われます。また、大病院からの逆紹介を進め、今後増大する在宅ニーズの受け皿として、在宅医療・訪問看護のさらなる拡充を行っていくとしています。

 

[3] 安心・安全で質の高い医療の推進

データ提出などアウトカム評価をさらに進めるとしています。また、医療DXICT連携を活用する医療機関・薬局の体制の評価として、電子処方箋システムによる重複投薬等チェックの利活用の推進や外来、在宅医療等、様々な場面におけるオンライン診療を推進していくとしています。

 

[4] 効率化・適正化による制度の持続可能性確保

効率化・適正化を進めるために、後発医薬品やバイオ後続品の使用促進が継続して行われます。前回改定で開始された長期収載品の選定療養についても、自己負担率の見直しが行われ、今改定の目玉である「OTC類似薬」の負担見直しにより、医薬品の適正使用を推進するとしています。

(出典)社会保障審議会 医療部会(2025/12/9,厚労省)

 

3.改定率

12月 24日の予算大臣折衝を踏まえ、令和8年度の診療報酬改定は、診療報酬本体プラス3.09%となります。3%超えは1996年以来30年ぶりの高水準となります。内訳は、賃上げ対応にプラス1.70%、物価対応にプラス0.76%、光熱水費(食費含む)にプラス0.09%、その他過去の物価対応にプラス0.44%、政策改定にプラス0.25%、適正化にマイナス0.15%となっています。

一方、薬価等については、マイナス0.87%とされ、全体では2.22%のプラス改定となります。全体のプラス改定は2014年度改定以来、12年ぶりとなります。

 

 EM  

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筆者:株式会社EMシステムズ EM-AVALON事務局

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