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令和8(2026)年度診療報酬改定のゆくえ【12月版】(後半)

2025.12.26

 

2026年6月に予定される令和82026)年度診療報酬改定について、202512月時点の情報に基づき解説します。後半では、11月~12月に中医協等で議論された賃上げ、データ提出加算、OTC類似薬、医療DXについて解説します。

 

【目次】

  1. 賃上げについて
  2. データ提出加算について
  3. OTC類似薬について
  4. 医療DXについて
  5. まとめ

 


1.賃上げについて

賃上げについては、これまで補助金・税制と診療報酬が連動する形で進められ、前回の2024年度改定では「ベースアップ評価料」が新設されました。課題としては、ベースアップ評価料(Ⅱ)は計算が複雑で事務負担が大きく、特に小規模な医療機関で届出が進んでいない状況にあります。また、対象職種が医療従事者に限定されたため、医事課スタッフが除かれたことにより、賃金引き上げの格差が生まれています。

そこで、 看護職員処遇改善評価料、ベースアップ評価料の両者を統合する案や、計算方法の簡素化が検討されています。また、対象職種の拡大も示唆されています。

 

2.データ提出加算について

データ提出加算は、入院では同加算の届出を要件とする入院料が、改定ごとに漸次拡大されており、算定も高い状況で推移しています。一方外来については、生活習慣病管理料で算定率が4%と極めて低い状況となっています。新たにデータ提出加算の届出が要件とされた入院料については、電子カルテが未導入であるといった正当な理由がある場合には、一定の条件のもと、当面の間の経過措置を講じており、一定数の医療機関が経過措置の対象となっています。

算定に当たっての課題としては、データ提出の負荷が大きく、具体的には検査値等の入力の負荷が大きいとしています。また、算定には事実上電子カルテが必要となるため、電子カルテの普及とセットで検討する必要があります。今後は、電子カルテの普及を背景に、データ提出に基づくアウトカム評価が本格化すると予想します。また、外来については医療機関の負担軽減や、診療報酬改定に向けて適切な分析を行う観点から、様式1の見直しを含め、提出を求めるデータ等が見直されることでしょう。HL7 FHIR等の標準規格によるデータの自動提出の仕組み構築も期待されるところです。

出典:中央社会保険医療協議会・総会(2025/11/26,厚労省)

 

3.OTC類似薬について

医療費抑制のため、市販薬(OTC薬)と同じ成分の処方薬(OTC類似薬)について、保険医療から外すことが、連立与党である「日本維新の会」の提言により進められてきました。しかしながら、いきなり保険外にすることは影響が大きいとのことで、長期収載品と同様に価格の一部を患者負担とする「選定療養」の仕組みを適用することが検討されています。

患者負担が大幅に増大することが予想され、例えば、アレグラ、ロキソニンテープでは処方薬とOTC薬の間で自己負担額が10倍近い差があります。その結果、必要な受診を控えるリスクが指摘されています。医師会や患者関係団体での強い反対もあり、議論はトーンダウンしていますが、選定療養の枠組みで進む可能性が示唆されています。

 

4.医療DXについて

マイナ保険証の利用率は、5割(47.26%)に近づいているものの、医療現場ではITに不慣れな患者への対応負担やシステム障害が課題となっています。

電子処方箋の導入状況については、薬局での導入率及びデータ登録率は8割を超え、重複投薬チェック等のデータベース構築という国の目的は進展しています。今後は院内処方への導入も促進される見込みで、診療報酬上も、導入(体制)だけでなく「利活用」を評価する方向へ変化しています。

電子カルテについては、医療機関全体の普及率は令和5年現在で65.6%となっています。特に一般診療所は55%で導入が遅れている状況が続いています。先の臨時国会で可決された医療法改正法案でも、2030年までに電子カルテの普及率を100%にすることが明記されました。今後は国が定めた仕様に準拠した「標準型電子カルテ」の認証制度が始まる予定です。

電子カルテ情報共有サービスについては、現在モデル事業で課題が散見され、全国利用開始は20271月頃にずれ込む見込みとなっています。

医療DXの各サービスの進捗状況を踏まえ、医療DXの診療報酬上の評価については「これまでの評価により大きく普及した取り組みの実施を基本としつつ、さらに普及を図るべき取り組みに着目した評価を行う」としています。医療DXの評価がさらに進むことが予想されます。

出典:中央社会保険医療協議会・総会(2025/12/19,厚労省)

 

5.まとめ

令和8年度診療報酬改定の診療所への影響について、プラス要因とマイナス要因に分けて考えると以下のようになると予測します。

プラス(引上げ)要因については、大幅な「賃上げ対応」が予想され、具体的には初診・再診料の引上げや、外来・在宅ベースアップ評価料の見直しが行われると考えます。また、外来データ提出加算の要件緩和や、新たなDX関連点数の新設が予想されます。

一方、マイナス要因(引下げ)については、効率化・適正化項目として、後発品、バイオ後続品の継続的推進、長期収載品、OTC類似薬の自己負担増により、患者の医療機関利用が抑制される可能性があります。

  その他、「かかりつけ医機能報告制度」のスタートの影響から、かかりつけ医を評価した機能強化加算や地域包括診療料などが再編される可能性もあります。

 

 EM  

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筆者:株式会社EMシステムズ EM-AVALON事務局

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