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令和8年度臨時報酬改定による処遇改善の見直しと今後の制度改革についてNEW

2026.03.19

 

【目次】

  1. 高市政権の誕生と令和7年度補正予算の概要
  2. 令和8年度臨時介護報酬改定による処遇改善加算の見直し
  3. 介護業界にとっては3年に1度の大切な2026年の展望

 


1.高市政権の誕生と令和7年度補正予算の概要

令和7年10月に初の女性総理となる高市政権が誕生し、国民の圧倒的な支持を受けて、先に行われた衆議院議員選挙においても、自由民主党が単独で3分の2を上回る議席数を確保する、歴史的な大勝となりました。高市政権が『責任ある積極財政』を標ぼうしており、従来の緊縮財政とは異なる財政政策への期待が、高い支持率の一因であると思います。介護業界でも高市政権への期待は高くなっており、総理就任時の所信表明演説など、介護現場に対する支援を強化する方針を示していただいています。
介護業界を取り巻く経営環境や人材確保は、長引く物価高と他産業の賃上げにより大変厳しい情勢にあります。近年、介護事業者の倒産件数は毎年のように最多を更新しています。更には、他産業との賃上げ率にも格差があり、給与差も開きはじめています。介護従事者の有効求人倍率も4を超えるなど、人材確保がいっそう困難な状況となっています。
そのような背景を踏まえて、昨年11月に令和7年度補正予算による総合経済対策を閣議決定され、予算規模は18.3兆円と前年度を大幅に上回る財政出動となりました。介護現場においては、介護従事者に対する処遇改善とともに、事業者に対する物価高対策の支援メニューが盛り込まれています。
まず、介護従事者に対する処遇改善ですが、総予算は1,920億円ということで、過去に例を見ない大規模なものであり、3階建ての支援構造となります。1つめは、居宅介護支援、訪問看護、訪問リハビリテーションを含む原則全ての介護サービスの従事者(福祉用具を除く)に対して、1人あたり月額1万円程度の改善が行われます。2つめは、従来から処遇改善加算が算定されているサービスに対しては、職員の処遇改善または職場環境改善への法人経費か、どちらか選択可能な予算が1人あたり月額4千円程度支給され、こちらも処遇改善の原資とすることが出来ます。そして、生産性向上に対する取り組みを行っている事業所に対しては、1人あたり5千円程度の処遇改善が支給されますが、在宅系サービスはケアプランデータ連携システムの導入済みか導入予定、施設系サービスは生産性向上推進体制加算ⅠまたはⅡの取得済みか取得予定が対象となることから、算定ハードルは少し高くなります。しかしながら、既存の処遇改善加算が算定できる事業所では、最低でも1人あたり月額1万円から最大では1.9万円程度の処遇改善が支給されます。支給対象期間は令和7年12月から令和8年5月までの6カ月間となります。
続いて、事業者向けの物価高対策についてです。こちらも総予算は500億円超の規模となり、重点支援地方交付金を活用した対策も合わせて講じられます。ただし、この交付金の運用は各自治体に裁量が委ねられており、必ずしも全ての介護事業者へ支給されるわけではありません。そこで、今回の総合経済対策は、介護事業者に限定した物価高対策の補助金が新たに手立てされました。具体的には、設備や備品の購入費用等に充てられる補助金が、在宅系サービスは規模に応じて20万円から50万円。施設系サービスでは、定員1人あたり6千円で、これに加えて食料品等の購入費等に対する補助として、定員1人あたり1.8万円が支給されます。
いずれにせよ、今回の総合経済対策では事業者、従事者ともに大きな支援となります。具体的な申請時期や申請方法は自治体ごとに異なり、すでに順次受付が全国的に開始されています。事業者の皆様は、処遇改善措置、事業者向けの物価高対策の申請手順の発表をしっかりと確認し、確実に申請を行い、積極的な活用を心がけてください。

(出典:厚生労働省老健局老人保健課「令和7年度介護分野の職員の賃上げ・職場環境改善支援事業の 実施について」)

 

2.令和8年度臨時介護報酬改定による処遇改善加算の見直し

令和8年6月に、臨時介護報酬改定が実施されることが昨年末に決定しました。前述した令和7年度補正予算による処遇改善の対象期間が5月までとなるため、6月以降は臨時介護報酬改定による処遇改善加算の拡充策が行われます。また、令和6年度介護報酬改定では、全体改定率プラス1.59%のうち0.98%が処遇改善加算の上増しに充てられ、2年分の賃上げ原資とすることが示されていました。3年目となる令和8年度は、情勢を見定めながら対応を検討するとされており、今回の臨時介護報酬改定による処遇改善加算の拡充へと繋がりました。
令和8年度臨時介護報酬改定は、単年度では過去最大の上げ幅となるプラス2.03%となり、処遇改善加算に1.95%、施設の基準費用額(食費)に0.08%が充てられます。こちらも、『責任ある積極財政』を標ぼうする高市政権の介護現場に対する配慮から、大きな予算措置が行われたと言えます。
処遇改善加算の分配金額の内訳は、令和7年度補正予算とは少し異なり、居宅介護支援等を含む全体に対して月額1万円程度、生産性向上への取り組みにおける評価として7千円程度となり、合計は1人当たり1.7万円程度が加算によって充当されます。更に、介護事業者が実施する定時昇給分の2千円を含めて、月額1万円から1.9万円程度の改善となります。
 何より大きなポイントは、補正予算と同様に、居宅介護支援や訪問看護等への処遇改善加算が初めて創設され、従来の処遇改善加算とは異なり、多職種に対する支給が原則となり、対象者が拡大することになります。また、生産性向上への取り組み評価の7千円程度も、補正予算と同様の算定要件となります。
 そして、職員への支給に際しては、基本給や毎月の手当によるベースアップを基本とする方針が示されています。ただし、例外的な対応は認められています。また、処遇改善加算の全額が職員に対して支給されない場合や、虚偽・不正が発覚した際に、ペナルティとして報酬返還もあり得るとの方針が改めて示されました。

(出典:厚生労働省老健局老人保健課「介護職員等処遇改善加算等に関する基本的考え 並びに事務処理手順及び様式例の提示について (令和8年度)(案)」)

 

3.介護業界にとっては3年に1度の大切な2026年の展望

令和8年は介護業界にとっては、3年に1度の報酬改定のサイクルにおいて、大切な1年間となります。いよいよ来年4月となる令和9年度介護報酬改定に向けて、社会保障審議会介護給付費分科会等での議論が本格化していくこととなります。12月には全体改定率の決定と、報酬改定の見直し方針が固まっていきます。
物価高や他産業の賃上げによって、昨年は介護業界にとっては厳しい1年間であったと言えます。今年は、明るい未来へと繋がることを願ってやみません。全国介護事業者連盟においても、介護現場主導での制度改革の実現を目指し、業界の活性化を図るため、全力で取り組んでまいります。『責任ある積極財政』を標ぼうする高市政権が継続されるならば、過去最大のプラス改定の実現も可能であると思っています。介護従事者の平均所得が他産業と同水準となるように、更なる大きな処遇改善を実現し、また加算等の書類作成や手続きの簡素化、および物価高対策となる基本報酬単位のプラスを目指していきます。是非、今後の制度改革に向けた業界動向に着目ください。

 

 

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筆者:斉藤 正行  一般社団法人全国介護事業者連盟 理事長

プロフィール
1978年に奈良県生駒市で生まれる。
2000年3月に立命館大学卒業後、コンサルティング会社に入社し飲食業のコンサルティング、
事業再生等を手がける。その後、介護業界に転身し、老人ホーム会社の取締役運営事業本部長、
デイサービス会社の取締役副社長を経て、2013年8月に株式会社日本介護ベンチャーコンサルティンググループを設立。
2018年6月に法人・サービス種別の垣根を超えた介護事業者の横断的組織である、
一般社団法人全国介護事業者連盟の設立に参画、2020年6月に理事長に就任。
そのほか介護団体・法人の要職等を兼任し、介護・障害福祉業界の発展に心血を注いでいる。

ホームページ:https://kaiziren.or.jp/

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