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介護事業と事業所内保育③

2022.01.13

介護事業と事業所内保育③

株式会社スターパートナーズ代表取締役
一般社団法人介護経営フォーラム代表理事
脳梗塞リハビリステーション代表
MPH(公衆衛生学修士)
齋藤直路

            • 「事業所内保育所」の実績と特殊な機能の紹介

            今回は、保育所ではあるものの特殊な機能持った事業について紹介していきます。企業主導型保育事業などではこれらの事業実施に加算がつくので、その考え方を抑えておくことが重要です。

            ①一時保育

            まずご紹介したいのが「一時保育」です。これは月極のような形ではなく、必要な時に一時的に保育園で子どもをお預かりする制度です。一見、事業所内保育とはあまり関係がなさそうですが365日運営をおこなうタイプの介護事業所にとっては重要な役割を持ちます。

            例えば近隣の保育所が日曜は休みだった場合、普段そこに預けているスタッフは子どもを家族に預けるなどしないとその日は働くことができません。こういった場合、通常は複数の保育所を併用することはできないので、月極園児として受け入れることはできませんが、一時保育としてなら受け入れることが可能です。日曜日も働きたいという要望があった場合、それを受けることが可能となるのです。

            ②病児保育・病後保育

            風邪等が原因で通常の保育園に通うことのできない子供を預かる「病児保育・病後児保育」といった制度もあります。保育スペースを分けたり看護師の配置が必要であること、リスクも伴うことから、初めて保育事業をおこなう事業者様にとってはややハードルが高いかも知れません。ただ、実情として地域の病児保育はなかなか空きがなく利用できないという声は多く聞きますし、現場の声としても病児保育があると助かるということは数多く聞きます。また、看護師も常勤である必要はないので、例えば法人内の看護師が緊急でも配置につけるような体制を構築し、かつ経験のある看護師を配置することができるなどの条件付きでならば、併設を検討しても良いかも知れません。

             ③子育て支援センター

            また、直接保育をおこなうわけではありませんが、「子育て支援センター」と呼ばれる、地域の子育て世帯のサロンの様な取り組みも保育所では実施されています。そこでは保育士が子育て相談に乗ったり、同じくらいの子どものいる保護者同士が集まって、センター主催のプログラムに参加したりします。本来は行政からの委託事業となるので、お金を生まない場所ではあるのですが、早期から子育て世帯に接触できる(将来的な利用者・スタッフ確保につながる)ことが期待できるので、地域交流スペースなどを利用してそういった地域の親子の受け入れを検討することも有効です。

            • 事業所内保育所の保育と福祉の今後

            今回で本コラムも最後となりますので、保育から福祉へと視野をさらに広げて、その今後について考えていきたいと思います。

            これから先、福祉分野における最大の課題は人材不足です。保育と介護の状況については前回に触れた通りですが、それもいまや限られた分野の話ではなく、全ての業種にも共通するような話題となっています。その中にあたって、特に今後不足すると考えられている福祉分野では様々な施策が練られています。

            大きく話題となったのは、介護分野における外国人技能実習生の受け入れです。日本人だけではもはや足りないと考え、国外からの労働力に頼ろうという動きです。ICT化も促進されています。介護現場での業務の効率化と負担軽減が狙いです。

            そしてもう一つ、複数の福祉分野の垣根を取り払う事で経営を効率化しようという動きが出てきています。近年新しく開始された共生型サービスがそれに当たります。その流れの中で一つ注目すべきことがあります。それは、ラヒイホタヤという言葉です。

            ラヒホイタヤとは、フィンランドの社会・保健医療共通基礎資格のことです。看護や保育、介護、障害等、社会福祉分野における様々な資格の基礎の要素を1つの資格に集約したものになります。福祉人材の不足を懸念し、それを解消する為に効率的に人材を育成しようという考えのもと作られた制度です。

            実は、日本でもこの共通規格を作る動きが出てきています。 審議会等で明確な言及はないものの、福祉系国家資格所有者等の保育士資格取得への対応について」では「福祉系国家資格を持つ場合の保育士養成課程・試験科目の一部免除の検討」という文言が加えられています[ⅰ]。これは、まずは介護福祉士と保育士の垣根を取り払おうと言う動きに他ならないでしょう。事業所内保育所を併設した介護事業所は、こういった取り組みと高い親和性を示すものと考えられます。今後の動向にも是非ご注目をいただければと思います。  

            • 事業所内保育の設置の意義

            コラムの最後に、介護事業所における事業所内保育所設置の意義についてお話しできればと思います。

            事業所内保育所を介護施設に設置する目的については、人材確保によるとこも多いことをお話しいたしました。 私の携わったケースとしては、一定の効果を期待できることはお伝えした通りですので、人材確保を目的とした事業所内保育所の設置は検討の余地があると言えます。

            また、共通規格の創設などを見越すと、人材効率の観点からもその意義はあるのではないかという考えをお伝えさせていただきました。人材確保だけでなく、子どもとの交流は利用者のQOL向上につながり、子どもの生育にも良い影響を及ぼす研究結果についてもご紹介しました。

            事業所の差別化につながることはもちろん、職員満足度の向上にもつながることが期待できるでしょう。事業所内保育所を起点とした地域との連携も期待できることでしょう。一部助成金や補助金を活用すれば、ひとつの事業として保育所を運営していくことも可能になります。介護報酬が基本減算の流れにある中で、親和性の高い事業を立ち上げながら経営の多角化にシフトしていくということも、今後の介護事業運営においては意義があるのではないかと思います。

            そういった意味でも、事業所内保育所の運営は介護事業所にとって非常に魅力のある事業なのではないかと思います。

            運営については、補助金や助成金がない場合は正直難しくはありますが、行政との連携や補助金の活用などを通じて達成が可能なケースもありますし、地域の企業主導型事業運営事業者と連携するといった方法もあります。

            以上、簡単ではございましたが介護施設における事業所内保育所について解説させていただきました。皆様のお役に立てましたなら幸いです。

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            [ⅰ] https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11901000-Koyoukintoujidoukateikyoku-Soumuka/gaiyou.pdf