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「薬局が取り組むべき栄養ケア」 2. これからの薬局に求められる健康支援のかたち~薬剤師と管理栄養士のパートナーシップ

2022.02.12

*薬局を拠点とする管理栄養士の活動

国は、地域の健康増進・健康支援の活動拠点に薬局を掲げ、薬剤師と管理栄養士を含めた多領域での協働や連携による体制づくりが整備されることを期待しています。このような社会的信頼とニーズを受けて、薬局に管理栄養士が続々と配置される時代になってきました。わが国の管理栄養士は、病院や保健所、学校、保育所、介護保険施設など、幅広い分野で活躍していますが、薬局に所属する管理栄養士は、薬局を活動拠点に、地域住民の日常生活の場で食と栄養に関する専門的なアドバイスやサポートを提供できる専門職として特徴づけることができます。その多くは、薬局運営に欠かせない医療事務、在庫管理・発注、調剤補助等を兼務しながら、栄養指導(栄養相談)や栄養関連のイベント業務を受け持ち、訪問栄養指導、特定保健指導、介護予防事業、災害支援などの場面で栄養ケア活動に携わっています。その他にも地域の健康セミナーや料理教室、薬剤師向けの勉強会の開催、これらに係わる料理レシピや栄養新聞・栄養情報誌、教育資料の作成も手掛けています。

 

*管理栄養士と薬剤師の連携による治療効果の向上

薬局の管理栄養士が栄養指導(相談)を行う機会は、薬剤師による服薬指導時に具体的な食に関する説明が必要な場合、主治医から栄養指導の要請があった場合、利用者から食事の相談や問い合わせがあった場合などです。また、利用者の調剤の待ち時間に管理栄養士から積極的に声かけし、関心のあった情報を提供する場面もよくみられます。

薬局での栄養指導は、対象者の特性や疾病・服薬状況などの情報を店舗内のすぐ側にいる薬剤師から迅速かつ正確に得られることは、管理栄養士にとって大きなメリットであり、薬剤師と同じタイミングで利用者から直接話を聞くことで、服薬に関する課題を見出せる場合もあります。薬を飲むタイミングは食事摂取と連動しているケースが多いので、薬剤師と管理栄養士が情報を共有し、双方からアプローチすることは薬物治療の効果をあげるだけでなく、有害事象の発生防止や服薬アドヒアランスの向上にもつながることでしょう。

また、薬局での栄養指導は、病気の治療効果をあげるために利用者の日常生活を踏まえた具体的で実行可能な栄養ケアが求められます。食行動のアセスメントが正しくでき、個人に合わせた食事のプランや適切な食事への切り替えができる管理栄養士によるサポートは、利用者の治療に対する意識の改善や行動変容を促すきっかけにもなっていきます。

 

*地域生活者の健康課題解決へ

また、身近な薬局に管理栄養士が常駐していることは、在宅療養中の食事療法が行き詰まったときや、退院後の患者やその家族など、地域で暮らす生活者にも栄養指導を受けられる機会となります。さらに、このような地域密着型の利点を活かして、利用者からの栄養相談内容を質的データとして蓄積していくことで、地域特有の健康課題(疾病)と食習慣・食行動の特徴を把握することができ、利用者の生活やニーズに応じた支援が可能になるという強みがでてきます。地域に対する効果的な健康支援活動が展開できるでしょう。

近年、活発化している薬局・薬剤師による在宅医療支援に管理栄養士が同行すれば、食事内容や調理方法、介護用食品等の提案はもちろん、利用者の食事量や食欲、嚥下状態、味覚などの状態をアセスメントすることで服薬トラブルを早期発見できることもあり、好ましい服薬支援と身体的・精神的負担の軽減につながっていきます。

薬剤師と管理栄養士の連携・協働は、疾病の治療・予防効果を高め、安全と安心を提供し、医療費抑制に大きく貢献することができるのです。現在のところ、薬局での管理栄養士による栄養指導を含む栄養活動には診療報酬は付与されていませんが、有料の栄養相談に着手し、医療機関と契約した栄養指導や特定保健指導の委託事業などを導入して、業務を工夫し、新たな価値を切り開く薬局管理栄養士も見受けられるようになりました。

わが国の超少子高齢社会における健康課題や健康格差への解決策や取り組みは、諸外国が注目しているところです。地域の薬局での薬剤師と管理栄養士との協働による成果が、将来世界的なグッドプラクティスのひとつになると密かに確信しています。

(筆者)

堀 由美子

城西大学 薬学部 医療栄養学科 予防栄養学研究室 准教授

博士(薬学),管理栄養士

薬局管理栄養士研究会 開催・運営