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【シリーズ】2025年を見据えた薬局・薬剤師像を探る 1「薬局の物販を考えるーPOSTコロナの薬局像」

2022.01.05

■物販を放棄した調剤特化型薬局

あるべき薬局像を実現するためには立地や経営方針に基づいた様々な機能、役割が考えられますが、本稿でまず訴えるのは「物販」です。

2020年のコロナ騒動の初期段階では物販に関して薬局はほとんど機能を発揮するまでに至りませんでした。品薄や入荷不能で混乱を招いたマスクに関しては、開店前からドラッグストアに並ぶ消費者が見られました。消毒液に関しても同様です。しかし、薬局からマスクを入手した例はほとんどないはずです。薬局自体もスタッフ向けのマスク確保に困難を来したほどであり、販売する余裕すらなかったのが実態ではないでしょうか。

さて、薬局の「物販」です。調剤特化型であってもOTC薬やサプリメント、衛生用品等を品揃えしている例は少なくありませんが、実態は形式にとどまり、本格的に取り組んでいる例は相談重視型の薬局などに限られています。

薬局が物販に消極的なのは、処方元への遠慮、経営者や薬剤師の意識の欠如が大きな要因です。分業の黎明期には、調剤を行うことに加えOTC薬を売ることに処方元の反発があり、在庫を持たなくなった事例が多くありました。2016年4月から健康サポート薬局制度がスタートし、要指導医薬品や一般用医薬品を扱う薬局も増えましたが、形式にとどまっているのが現状です。

2017年の厚労省による「患者のための薬局ビジョン実現のための実態調査報告書」によると、薬局でのOTC薬取り扱いは平均で112.3品目でしたが、中央値は18.0品目です。「0~19品目」までの薬局が44.6%、「20品目以上」が43.0.%と二極化している傾向もあります。

■ドラッグストアと同じ土俵で勝負しない「健康、快適な生活を売る」視点が重要

薬局での物販を考える場合に躊躇するのがドラッグストアの存在です。消費者にも「調剤は薬局、買い物はドラッグストア」という認識が定着しており、「今さらドラッグストアと勝負しても勝てない」と考える経営者、薬剤師が大多数でしょう。

従って、薬局での物販は「ドラッグストアと同じ土俵で勝負しない」発想が重要です。ドラッグストアが汎用品を中心に品揃えし、不特定多数の消費者を対象にしているのであれば、薬局は特定少数の消費者を対象に、薬局ならではの相談、カウンセリングを伴う商材に絞るべきでしょう。つまり、「モノを売る」のではなく、「健康や快適な生活を売る」発想が必要です。

例えば、高齢者用の歩行補助具、食事支援(とろみ材や嚥下困難者向け)などです。こうした商材との関連では介護保険や地域包括支援センターへの取り次ぎなどの情報とセットで対応します。また、ニキビやアトピー性皮膚炎に関するスキンケアのカウンセリング、化粧品の紹介なども薬局ならではの取り組みです。こうした活動を通じて来局者とのきずなを深め、結局は汎用品の販売につながるケースもあります。社員の使用経験等をPOP等で掲示したり、社内でコンテストを行うなど遊び心を取り入れる工夫も効果的です。

筆者がお勧めしたいのは障がい者が作っている石鹸です。障がい害者の自立支援を目標に取り組んでいるこの施設は自治体等からの補助金を受けずに経済的自立と社会参加を実践しています。薬局がこの施設の石鹸等を扱うことで間接的に障がい者支援につながります。そのような姿勢をPOPなどでアピールすることも結果として薬局のイメージアップにつながります。

汎用品ではなくとも扱うことに意義のある商材、来局者との会話が生まれ、絆が深まる商材等々、その気になれば「薬局ならではの商材」を発見することができます。

薬局で物販を考える場合、薬剤師やスタッフの意識改革がポイントになります。中には「調剤以外はやりたくない」「私たちはモノ売りではない」という意識を持つ薬剤師もいるでしょう。薬局の本来機能に照らし、地域生活者の健康や快適な生活に寄与するという視点で認識を共有することが必要です。ここで触れた「物販」はあるべき薬局像へのほんの一部分ですが、POSTコロナを見据え、健康問題のファーストアクセスの場として認識されるよう、一歩ずつ前に進みたいものです。

(筆者)

藤田道男

一般社団法人次世代薬局研究会2025代表

※2020年6月発行の記事を再編集しました(MIL編集部)