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【シリーズ】2025年を見据えた薬局・薬剤師像を探る 4「非薬剤師の活用と対人業務」

2022.01.17

非薬剤師の調剤補助行為を容認した2019年厚生労働省の通知「調剤業務のあり方について」(いわゆる0402通知)が発出されて以来、徐々に非薬剤師の活用が広がっています。そこで今回は0402通知の意味を掘り下げながら現場の対応を探ります。

■0402通知の背景

まず、確認しておきたいことは、0402通知は薬剤師法第19条で規定する「薬剤師でない者は、販売又は授与の目的で調剤してはならない」の解釈を明確にしたものであり、欧米で採用されているようなファーマシー・テクニシャン(調剤技師)を容認したものではないということです。

この通知が発出された背景には布石があります。2015年5月に一部の薬局で事務職に医薬品の混合行為をさせていた違反事例が発覚しました。これを受けて厚労省は同年6月25日付で医薬食品局総務課長通知を発出し、「軟膏剤、水剤、散剤等の医薬品を薬剤師以外の者が直接計量、混合する行為は薬剤師法、医薬品医療機器法(薬機法)違反に該当する」との解釈を示しました。

この通知では敢えて「軟膏剤、水剤、散剤等の計量、混合は不可」としたことから、薬局業界では「錠剤やカプセル剤などの調製行為は非薬剤師でも可能」とする解釈が飛び交う一方、「調剤室内の業務は全て薬剤師が行うべき」とする意見もあり、混乱を招いていました。

このため、調剤室における薬剤師と非薬剤師との業務内容について現行法の解釈を整理する意味合いで0402通知を発出したものです。

同通知で明確にされたのは、「薬剤師の指示に基づき」「調剤した薬剤の最終的な確認は薬剤師が行う」ことを前提に、非薬剤師が行う、①PTP シート(又はこれに準ずるものにより包装されたままの医薬品)の必要量を取り揃え②一包化した薬剤の数量の確認行為――を容認しました。なお、軟膏剤、水剤、散剤等の計量、混合行為は不可です。

このほか、①納品された医薬品を調剤室内の棚に納める行為②調剤済みの薬剤を患者のお薬カレンダーや院内の配薬カート等へ入れる行為③電子画像を用いてお薬カレンダーを確認する行為④薬剤師の服薬指導後、患者の居宅等に薬剤を郵送等する行為――は「調剤に該当しない行為」との解釈を示しました。

0402通知は、テクニシャン制度導入までは踏み込んでいませんが、行政としては現行法上ギリギリの判断のもと、薬剤師が対人業務に注力できる環境整備を図ったと言えるでしょう。

 

■上田薬剤師会の非薬剤師研修

0402通知以降、薬局業界では概ね前向きに捉え、非薬剤師の活用によって薬剤師の対人業務を充実させようとする動きが目立ちました。

非薬剤師の活用で良く知られているのは、長野県上田薬剤師会の取り組みです。上田薬剤師会は同通知以降、会員薬局の非薬剤師業務についての研修会を開催しました。同会の取り組みは非薬剤師の業務を「非薬剤師による準備行為」と位置付け、あくまでも全体の管理責任は薬剤師にあることを明確にしている点が特徴です。

また研修内容も単なるピッキングや一包化された薬剤の確認行為等の直接的な実務にとどまらず、座学では薬局に関する法律、制度、倫理規範から業務の範囲、処方箋の読み方、医療安全、医薬品管理など全般的な内容に及び、実務では、衛生管理、薬剤の取りそろえ、医薬品保管方法、必要な薬剤、一包化された薬剤の数量・内容の確認、医薬品の検品及び棚への納品、調剤済みの薬品の郵送・配送――など多岐に亘る研修が行われました。

■日在薬「パートナー研修」を充実

一方、以前から非薬剤師の活用を呼びかけてきた日本在宅薬学会では薬剤師の本質的業務以外を担い、薬局業務をサポートする人材を「パートナー」と呼称し、パートナーの育成に尽力しています。これは同学会の理事長を務める狭間研至氏(ハザマ薬局)が提唱している第3世代の薬局「薬局3.0」を進めるために、薬剤師と非薬剤師の協働作業により、薬局の質的向上を図る取り組みの一環です。

「薬局3.0」とは、薬局内のみで業務を行うスタイルを「薬局2.0」と定義し、それを超えて、在宅の現場でバイタルチェックなども行いながら多職種と連携する薬局・薬剤師像を指します。厚労省が0402通知を発出する際には、同学会の活動を参考にしたようです。

■薬剤師と非薬剤師は「二人三脚」

では実際に薬局で実施している非薬剤師の活用事例を見てみます。関東地方で8店舗を展開しているA薬局の事例です。A薬局では処方箋の増加、在宅への進出、対人業務への注力等で薬剤師の業務過剰、人員不足が深刻化しました。そこでA薬局は0402通知を契機にスタッフの働き方改革を進める中で、非薬剤師の活用を推し進めました。

薬剤師は、対人業務(患者はじめ医師、看護師、ケアマネジャー他)に注力し、対物業務は、非薬剤師が薬剤師と協働で行います。非薬剤師は、薬剤師を対人業務に専念させるために必要な人材という位置づけです。

A薬局が行う非薬剤師の業務は、医療事務(処方せん入力、薬品の入力、レセプト請求等)の他に、薬剤師の指示のもとで行うピッキング、分包機の操作(一包化)、薬品の検品作業などです。また、一部ですが一定の対人業務も行います。例えば、在宅患者の情報管理があげられ、在宅患者の家族やケアマネジャー、看護師、施設スタッフなど多職種との情報共有の一員として活躍しています。時には、在宅患者への訪問にも薬剤師と同行します。

同社の社長は「非薬剤師の業務を通じて薬剤師が気付かない部分の手助けになり、対人関係に好影響を与えることがわかりました。薬剤師と非薬剤師は上下関係ではなく、二人三脚の関係で、より良い職場環境を一緒に作り上げることができるようになりました」と語っています。

(筆者)

藤田道男

一般社団法人次世代薬局研究会2025代表

※2020年9月発行の記事を再編集しました(MIL編集部)