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【シリーズ】2025年を見据えた薬局・薬剤師像を探る 5「服薬期間中のフォローアップの実際」

2022.01.19

■改正薬剤師法、薬機法で明文化

薬局の定義を「調剤を行う場」に加え、「薬学的指導を行う場」に位置づけ、薬剤師の「服薬期間中のフォローアップ」等を義務付けた改正薬機法、改正薬剤師法の施行が2020年9月から始まりました。ここでは、医薬分業の今後の評価に大きく関係する「服薬期間中のフォローアップ」について触れてみます。

■フォローアップは薬剤師、開設者の義務

改正薬剤師法では、「薬剤師は、前項に定める場合のほか、調剤した薬剤の適正な使用のため必要があると認める場合には、患者の当該薬剤の使用の状況を継続的かつ的確に把握するとともに、患者又は現にその看護に当たっている者に対し、必要な情報を提供し、及び必要な薬学的知見に基づく指導を行わなければならない」(第25 条の2第2項)と規定しました。

また、改正薬機法でも、薬剤師に行わせる薬局開設者の義務として、使用薬剤の継続的な把握と薬学的知見に基づく指導の義務規定を設けました(第9条の3第5項)。

「服薬期間中のフォローアップ」は薬剤師業務にとって目新しいことではありません。2011年の第13改訂調剤指針(日本薬剤師会編)で、「調剤の概念とは、…(中略)…患者に薬剤を交付した後も、その後の経過の観察や結果の確認を行い、薬物療法の評価と問題を把握し、医師や患者にその内容を伝達することまでを含む」と記載され、初めて薬剤交付後のフォローアップまでを調剤の範囲とする概念が確立されました。

また、2016年度調剤報酬改定で新設された「かかりつけ薬剤師指導料」(同包括管理料)の算定要件にも服薬期間中のフォローが含まれたほか、新型コロナウイルス感染拡大防止のために時限的・特例的に発出された厚労省通知(いわゆる0410通知)でも明記されています。

従来、薬局現場では「患者に薬剤を交付して終了」となっていたのが実情であり、フォローアップについては手が回っていない状況でした。その意味から調剤報酬点数に関らず薬剤師や薬局開設者の義務として法的に明記された意味は大きいと言えます。

■フォローアップの実際

改正薬剤師法、改正薬機法で定めた服薬期間中のフォローアップは、全ての患者が対象になるわけではなく、薬剤師が「必要と認める場合」です。厚労省は、どのような患者に対して行うのか、どのような方法で行うべきかについては「薬剤師の専門性に委ねる」としており、薬剤師の判断の適否が評価のポイントになります。

一般的には、「個々の患者の特性」「罹患している疾病の特性」「使用薬剤の特性」等に合わせて適切にフォローアップすることとされています。しかし、実際の現場ではこうした類型に当てはまらない事例も存在することが考えられ、患者の生活背景など個々に応じた柔軟な対応が求められます。

フォローアップを行うタイミングですが、「初回来局時」、「次回来局時までの期間中」、「次々回来局時までの期間中」とされ、その後は前回のフォローアップの内容を検証して次のフォローアップに活かすという繰り返しになります。

フォローアップを適切に行うためには、初回来局時の患者情報の把握が重要になるでしょう。生活背景を含む患者情報、薬歴やお薬手帳の情報、服薬指導等を通じて得られた情報を、薬学的知見に基づき総合的に分析・評価して判断する必要があります。あくまで、個々の患者に対して個別に判断するもので、一律に対応するべきものではないことに留意する必要があります。

フォローアップの内容としては、「薬剤等の使用状況(残薬の状況を含む)」、「使用中の薬剤の効果」、「薬剤使用中の体調の変化」、「併用薬や食品・嗜好品との相互作用による影響」、「生活機能への影響」等――があります。これも時間的経過とともに変化する可能性があるので固定的に捉えるのではなく、臨機応変な対応が必要です。

■対面、電話、SNSなど方法は様々

フォローアップの方法ですが、患者やその家族が来局したり、薬剤師が患者宅を訪問したりする対面形式のほか、電話やFAX等が挙げられます。また、電子お薬手帳やSNS などICTを活用するケースも増えています。最近はシステムメーカーから様々なツールが提案されており、選択肢が広がっています。これも個々の患者特性に合わせて使い分けることが必要になります。

また、薬剤師が行った患者のフォローアップについては調剤録に記載する必要があります。記載内容は症状や他の疾患、当該薬剤の服薬状況、服薬中の体調の変化、その他必要な情報などです。調剤録は薬剤師がどのような業務を行ったかの記録であり、仮に後日に問題が生じた際には証明書類としての役割があります。

■薬局業務の見える化につながる

薬局の薬剤師が服薬期間中のフォローアップを行うことは服薬状況や有害事象の改善に役立つほか、多職種との連携にもつながります。同時に重要なことは薬剤師が介入することで、薬剤師業務の内容が患者やその家族、処方医などの他職種に理解されるようになる効果が期待できることです。言い換えれば「薬局業務の見える化」です。

「対物業務」から「対人業務」へのシフトの必要性が指摘されている中、服薬期間中のフォローアップは対人業務の象徴とも言える業務であり、これを各薬局が実践することで医薬分業への理解が深まるだけでなく、薬局が地域のヘルスケアにとって重要な役割を果たしている証にもなるでしょう。その意味でフォローアップ業務は薬局の生き残りのカギを握る試金石と言っても過言ではありません。



(筆者)

藤田道男

一般社団法人次世代薬局研究会2025代表

※2020年10月発行の記事を再編集しました(MIL編集部)