• 調剤
  • #薬局経営

【シリーズ】2025年を見据えた薬局・薬剤師像を探る 6「薬剤師の将来需給と資質向上」

2022.01.24

薬剤師の将来需給はどうなっていくのか――。厚生労働省は2020年、「薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会」を設置し、以来有識者による会合が開催されています。この検討会での薬剤師の需給、資質向上、今後の薬剤師のあり方等についての議論を紹介しながら、今後の薬局薬剤師のあり方を見ていきます。

■25年後、投薬対象患者数は減少 処方箋枚数は9000万枚増にとどまる

厚労省が2021年4月の検討会で示した「薬剤師の需給推計」(案)では、薬局薬剤師の需要は、処方箋に関する業務量が今後も一定と仮定した場合の機械的推計と、様々な変動要因を加味した推計が示されています。

推計にあたっては、「人口推移、高齢者人口を加味した投薬対象患者数」「処方箋発行状況」――を基本に、「機械的推計」と「変動要因を加味した推計」の2通りを提示しています。

まず、投薬対象患者数は2020年には11億3000万人でしたが、25年後の2045年には10億9000万人まで減少します。これは2042年以降、高齢者人口が減少に転じる(国立社会保障人口問題研究所の将来推計)との予測とも連動します。

処方箋枚数では、分業率の上限を85%と仮定した場合、2020年の8億6000万枚から、2035年には9億5000万枚とピークを迎え、2045年には9億3000万枚と推計しています。当面高齢者人口は増えますが、その後は減少傾向に向かうことによるものです。

(資料)

第8回薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会(令和3年4月26日)

「薬剤師の需給推計(案)」

https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/000772130.pdf

薬局薬剤師需要予測

機械的推計 19万人から25年後20万6000人

変動要因加味 23万8000人~26万7000人

これらを踏まえた薬剤師の需要推計ですが、まず機械的推計は、「現在の処方箋1枚あたりに必要な業務量が一定と考えた場合」です。変動要因を加味した推計とは「外来患者対応の業務量(0.9~1.1倍)、在宅業務(2倍)、その他健康サポート業務など1.5倍)」を考慮したものです。

具体的には個々の患者に対する服薬指導等の充実、服薬状況等のフォローアップや医療・介護関係者への情報提供、地域の関係会議への参加など 、対人業務の充実による業務増が想定され、一方では調剤業務は機械化などにより効率化されることも加味しています。

在宅業務では多剤服用や一包化への対応など個別患者ごとの業務量増に加え、患者宅への移動時間、他職種との連携なども加味して現状の業務の2倍と推計しています。

その結果、機械的な推計では薬剤師需要は2020年の19万人から、2045年には20万6000人と1万6000人の増加にとどまるとしています。

一方、変動要因を考慮した場合は2020年の19万人から2025年には、23万8000人~26万7000人と推計しています。

なお、医療機関や医薬品製造業、その他を合わせた全体の薬剤師需要は、機械的推計では32万人から33万2000人と現状とあまり変わらず、変動要因を加味したケースでは37万2000人~40万8000人と推計しています。

■薬剤師供給は需要を上回る見通し

薬剤師の供給面においても機械的推計と変動要因加味の2つのケースが示されました。機械的推計では現在の届出薬剤師数、生存率、新規薬剤師輩出数(直近5年間では年平均9634人)をもとに2020年の32万5000人から2045年には45万8000人と推計しました。一方、人口減少時代を反映し、今後大学(薬学部)入学者の減少で国家試験合格者も減少すると仮定した場合の供給数は、2045年に43万2000人と推計しています。いずれも需要予測を上回っています。

■薬剤師資質向上の課題

薬剤師の資質向上に関しては、検討会でも多くの指摘がなされています。対人業務の充実を図るための服薬指導の充実、投薬後のフォローアップ、多職種連携の必要性などが指摘され、そのための自己研鑽、生涯学習が強く求められています。

同時に調剤業務の効率化、合理化のためのICT活用、非薬剤師活用やオンライン資格確認のインフラを活用した情報閲覧、電子処方箋などのICT に対する適切な対応も求められています。

こうした指摘は検討会だけではなく、様々な場面でも取り上げられており、薬剤師以外の関係職種間の共通認識となっていることに留意する必要があります。薬剤師業務が患者や他職種に理解されていないとの指摘もあり、業務の見える化や積極的な他職種へのアプローチが求められます。

薬剤師を養成する薬科大学に対しては過密なカリキュラムや過剰とも思える定員問題、さらには実務家教員の充実の必要性、医療機関や薬局との人的交流なども指摘されています。

(筆者)

藤田道男

一般社団法人次世代薬局研究会2025代表

※2021年5月発行の記事を再編集しました(MIL編集部)