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コラムNo.1 薬価制度

2022.05.23

薬価改定

 

 2022年度も予定通り薬価改定が行われた。2021年度からは、毎年改定がなされてきたわけである。2019年10月の消費税引き上げに伴う改定の半年後の翌4月の薬価改定に続くわけで、実質的にすでに毎年改定となっている。

また、今回の改定では、後発医薬品の使用促進にもより厳しい使用率を求められており、医療現場においては、更なる対応を求められている。

しかしながら、ジェネリック医薬品製造メーカーの品質不正問題が生じ、使用率を上げようにも供給が十分できていないため、対応に苦慮している医療機関・薬局は多い。

薬局経営においては、3月末の時点で不良在庫を持っていると、そのまま資金を眠らせることだけではなく、薬価ダウンにより原価率が上がり、結果として収益が減るが、ジェネリック医薬品の在庫を絞ることは、供給不足もあって、そのまま在庫不足に陥ることになりえる。

 

医薬品卸と医療機関・薬局の価格交渉

 

厚生労働省が発出した「医療用医薬品の流通改善に向けて流通関係者が遵守すべきガイドライン」においては、次のような遵守事項が示されている。

『医薬品卸の経営において、卸と医療機関・薬局の間の川下の取引では、「単品単価契約」を原則とされ、単品ごとの価格を明示した契約を行うこと』とされている。これにより、価格交渉の段階から単品単価で交渉を行うことは、卸と医療機関・薬局それぞれの手間を増やすことになる。

また、川下の取引では、過大な値引き交渉に加え、不当廉売を禁じられている。さらに、「正当な理由なく供給にかかる費用を著しく下回る対価で継続して供給することにより、ほかの卸の事業活動を困難にさせるおそれがある場合には、独占禁止法上の不当廉売に該当する可能性がある」とされている。加えて、医薬品卸経営においても、年々営業利益の低下もあって薬価ダウンにスライドした卸売価格の低減も困難となってきている。

 これらにより、価格交渉が本格化する2022年5月以降、継続した医薬品の流通改善の取り組みや、コロナ禍による輸入原薬の供給不足、円安による輸入医薬品や材料費の価格高も生じてきており、これらの外的要因も価格交渉にも影響を与える。

 

これからの薬局経営

 

 このように連綿と続いてきた薬価制度であるが、制度疲労を起こしていると訴える識者もおり、ここで実現の可能性を述べることはできないが、医薬品の償還制度(費用の全額を一旦、自分が支払った後、申請などで一部または全部を払い戻してもらう支払方式)といった話も出てきている。

 

 いままでの薬局経営は、調剤報酬の伸びがプラスであった頃では想定していなかった、あるいは余裕があった時代は、すでに過去のものとなっている。地方での人口減少は確実に起きており、処方箋枚数の増加や技術料の増加は望むべくもない。

右肩下がりとなった時代においては、医薬品の価格交渉を含めた、全方位の細やかな情報収集とともに、経費や業務の見直しをはじめとした効率化と提供サービスの向上など、先々を見越した経営が大切であることを肝に銘じたい。