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コラムNo.2 薬局とICT

2022.05.23

スマートフォンの利用

 

 今や国民の大多数がスマートフォンを持つ時代となった。通信技術を含むICTの進化は目まぐるしい。その結果、都市部においては2019年10月の消費増税に伴い電子マネーの利用は増加し、財布もいらずスマートフォンだけでまる一日生活できるのが当たり前の時代となった。

もちろん、高齢者も例外ではなく、各種調査においても、60歳代で半数以上の国民が利用しており、ICTや通信技術の恩恵を受けている状況である。

 マーケティングリサーチに実績のあるインテージの調査(*1)によると、2020年における有名なECサイトのスマートフォン利用の割合は3割前後となっており、さらに上昇していく様相を呈している。加えて、SNSアプリに至っては、LINEの利用率は8割を超えている状況である。

 

国民の健康意識の変化

 

 2014年のデータであるが、厚生労働省が調査した結果では、健康に関して必要な情報については「からだについての情報」が必要とした人が50.9%で最も多く、次が「医療・医療施設についての情報」、3番目は「食事・栄養についての情報」であった。この質問については、世代によってその傾向にばらつきがあり、他の世代と比べ、若い世代では「休養・ストレスについての情報」を、高齢者では「健康診断についての情報」をあげた人の割合が高かった。若い世代が仕事などでストレスを感じていること、高齢者が身体機能の低下もあり保健医療に直接関わるような情報に関心があることがうかがえる。

 さらに、『健康のために気をつけているか否か』については、「健康のために積極的にやっていることや、特に注意を払っていることがある」又は「健康のために生活習慣には気をつけるようにしている」と答えた人が、合わせて53.9%いた。これに「病気にならないように気をつけている」を含めると、9割近くの人が何らかの意味で健康について意識しているようである。

健康のために「積極的にやっていることや特に注意を払っていることがある」又は「生活習慣には気をつけるようにしている」人の割合は世代によって差があり、20歳~39歳では44.8%だが、65歳以上では69%であった。

 また、これらの情報源に対する信頼度を尋ねたところ、2009年の調査で「非常に信用している」又は「まあ信用している」と答えた人の割合が最も高かったのが「かかりつけの医者」の88.0%で、次が「テレビ・ラジオ」の78.8%であった。2014年厚生労働省委託調査でも「かかりつけ医」に対する信頼度は90.7%と最も高かったのに対し、「テレビ・ラジオ」に対する信頼度は70.4%であった。接触度と同様、信頼度でもインターネットのポイントは43.6%から55.6%まで上昇した。ちなみに、この調査結果からは、残念ながら薬局の記載はない。

 

薬局窓口でのICT利用

 

 近年、おくすり手帳は電子化され、マイナンバーカードを利用した保険証や、健診データ、処方記録の利用等が開始され、2023年より電子処方箋もスタートすることが予定されている。

 加えて、遠隔指導もコロナ禍の影響で増加しており、さらに、2022年度の診療報酬改定で算定の縛りはあるものの、徐々に定着していくものと推察される。

 こういった変化に兆しに対して、医療機関・薬局の対応状況は遅れているが、電子処方箋の利用が増加することに並行して、増加していくことが想定される。これらを総合すると、治療行為としての調剤のみならず、健康関連情報を加味したサービスをすることができれば、医療受益者である国民はよりメリットを享受することになるのではないか。

 

薬局のICT投資

 

こういった外部環境の変化に対応するには、対面による調剤サービス提供のみならず、ICT投資も必要であり、受け身での対応時期は終わったのではないかと感じる。薬局の仕事は、「患者の疾病治療や健康の保持に寄与すること」であり、その対象は一般の国民、地域住民である。

そして、その方々は、前述のとおりICTを身近に利用しているということ。一方で、電子マネー利用によるポイント付与やクレジット会社の手数料などは、薬局の収益を圧迫する。しかし、利用者の利便性を提供するのは、コンビニの例をとるまでもなく、調剤サービス強化の一環であるし、だからこそICTの利活用は、必要ではなく必須であると言えよう。

 

引用資料

*1 知るギャラリー https://gallery.intage.co.jp/mobile2020/