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押さえておきたい新薬情報~基礎インスリンとGLP-1受容体作動薬の配合注射薬~
2022.06.24
基礎インスリンとGLP-1受容体作動薬の配合注射薬
2019年9月、国内初となる基礎インスリン(持効型溶解インスリンアナログ)とGLP-1受容体作動薬の配合注射薬のゾルトファイ配合注〔一般名:インスリン デグルデク(遺伝子組換え)/リラグルチド(遺伝子組換え)〕、2020年6月には、2剤目となるソリクア配合注〔一般名:インスリン グラルギン(遺伝子組換え)/リキシセナチド〕が発売されました。
日本人は欧米人に比べて、インスリン分泌能が約半分で、分泌タイミングも遅いため、食後血糖値が上昇しやすい傾向があります。空腹時血糖が目標値を達成できても、食後血糖のコントロールが不十分で、HbA1cが目標値(7.0%未満)に達しない患者(かくれ高血糖)が3割強という報告もあります。基礎インスリンは、空腹時血糖を強力に下げますが、投与に伴う低血糖や体重増加の課題が残ります。GLP-1 受容体作動薬は、主に食後血糖を下げます。体重減少に寄与しますが、投与初期の胃腸障害が懸念されます。両剤を組み合わせることで、空腹時血糖と食後血糖を同時にコントロールし、HbA1c を改善することが期待されます。また、基礎インスリンによる低血糖や体重増加とGLP-1受容体作動薬による消化器症状を低減できます。インスリン療法には、基礎インスリンと経口薬を併用するBOT(Basal Supported Oral Therapy)や超速効型インスリンを組み合わせた「強化インスリン療法」があります。基礎インスリンとGLP-1受容体作動薬を併用するBPT(Basal supported post Prandial GLP-1 Therapy)は、その間に位置づけられます。ゾルトファイ配合注は、トレシーバ注(持効型溶解インスリン製剤)とビクトーザ皮下注(長時間作用型GLP-1受容体作動薬)、ソリクア配合注は、ランタス注(持効型溶解インスリン製剤)とリキスミア皮下注(短時間作用型GLP-1受容体作動薬)の組み合わせです。配合比率は固定されますが、1日1回の注射で済むので、患者負担は軽減されます。配合薬の用量単位は、インスリン製剤のような「単位」ではなく、「ドーズ」が使われます。
商品名 |
ゾルトファイ配合注フレックスタッチ |
ソリクア配合注ソロスター |
一般名 |
インスリン デグルデク(遺伝子組換え)/リラグルチド(遺伝子組換え) |
インスリン グラルギン(遺伝子組換え)/リキシセナチド |
会社名 |
ノボ ノルディスク ファーマ株式会社 |
サノフィ株式会社 |
適応症 |
インスリン療法が適応となる2型糖尿病 |
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用法・ 用量 |
初期は1日1回10ドーズ 1日50ドーズを超えないこと |
1日1回5~10ドーズから開始、 1日20ドーズを超えないこと。 朝食前に皮下注射する |
投与タイミング |
注射時刻は、原則として毎日一定とする |
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副作用 |
低血糖、消化器症状(胃の不快感、便秘、下痢) |
吐き気、低血糖、腹部不快感、下痢 |
薬価 |
1キット5,121円 |
1キット5,727円 |
使用に際しては、添付文書を必ずお読み下さい。
<用量単位:1ドーズ>
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持効型溶解インスリン |
GLP-1受容体作動薬 |
ゾルトファイ配合注 |
トレシーバ注 1単位 |
ビクトーザ皮下注 0.036㎎ |
ソリクア配合注 |
ランタス注 1単位 |
リキスミア皮下注 1㎍ |
<持効型溶解インスリン製剤>
トレシーバ注(ノボ) |
インスリン デグルデク(遺伝子組換え) |
ランタス注(サノフィ) |
インスリン グラルギン(遺伝子組換え) |
レベミル注(ノボ) |
インスリン デテミル(遺伝子組換え) |
<GLP-1受容体作動薬>
バイエッタ皮下注(アストラゼネカ) |
エキセナチド |
短 |
ビクトーザ皮下注(ノボ) |
リラグルチド(遺伝子組換え) |
長 |
リキスミア皮下注(サノフィ) |
リキシセナチド |
短 |
ビデュリオン皮下注(アストラゼネカ) |
持続性エキセナチド |
長 |
トルリシティ皮下注(イーライリリー) |
デュラグルチド(遺伝子組換え) |
長 |
オゼンピック皮下注(ノボ) |
セマグルチド(遺伝子組換え) |
長 |
リベルサス錠(ノボ) |
短:短時間作用型 長:長時間作用型
<持効型溶解インスリンと超速効型インスリンの混合製剤)>
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持効型溶解インスリン |
超速効型インスリン |
ライゾデグ配合注(ノボ) |
インスリン デグルデク(遺伝子組換え)トレシーバ |
インスリン アスパルト(遺伝子組換え)ノボラピッド |
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この記事は…
大学病院で医薬品情報を担当していた薬剤師が、年に4回承認される新薬のなかから話題の新薬をピックアップ。その特徴や作用機序、必ず押さえておきたいポイントを分かりやすく解説します。
(筆者)
浜田康次 一般社団法人日本コミュニティファーマシー協会理事