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対人業務強化戦略②~トレーシングレポートを磨き上げる!
2022.10.12
薬局での対人業務を強化するために役立つ情報を5回にわたってご紹介します。
- かかりつけ薬剤師で他薬局との差別化を図る!〜患者様の目線、CSの重要性
- トレーシングレポートを磨き上げる!
- 処方箋単価を上げる!〜地域支援体制加算、かかりつけ薬剤師指導料加算など
- オンライン服薬指導を活用する!
- 小売りを極める!〜AISASモデル、カスタマージャーニーなど。
今回のテーマは、『トレーシングレポートを磨き上げる!』です。
トレーシングレポートをどんどん活用していきたい薬局薬剤師向けの記事です。
【目次】
1.トレーシングレポートの基本理解
①概要
トレーシングレポートは、服薬情報提供書とも呼び、「薬局(薬剤師)から医療機関(主に処方医)への情報提供ツール」です。詳細は、下図表をご参照ください。
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内容 |
When(いつ) |
服薬指導後、服薬フォロー後、入院前、OTC購入後など |
Where(どこで) |
薬局で作成し、医療機関宛に発行 |
Who(誰が) |
薬剤師が主に処方医に向けて書く。 |
What(何を) |
有益だが、緊急度の低い※患者情報 |
Why(何故) |
薬局からの情報提供によって、医療機関が治療効果を上げるため。 |
②処方医に読んでもらうためにどうすれば良い?
処方医に読んでもらい、薬剤師の提案や情報提供をもとに行動に移してもらうことで、トレーシングレポートを書いた意味が出てきます。処方医が読みたくなるポイントを確認していきましょう。
- 処方医は薬剤師に何を求めているのか
医療機関(処方医)がどんな薬剤師と連携したいかを調べたところ、患者様の詳しい状態をしっかり把握している薬剤師であることがわかります。
上記図表では、患者様の詳しい情報を希望するということはわかりますが、薬剤師から患者様の何を詳しく教えてほしいのか明確ではありませんから、他の切り口の調査も確認してみます。
- 薬局が今までに情報提供をして効果があったと思う連携について
トレーシングレポートの運用が始まってから、既に数年の歳月が流れています。薬局と医療機関の連携での有用性についての調査も行われています。下図表はその数値をまとめています。
出典)令和2年度診療報酬改定の結果検証に係る特別調査(令和3年度調査)の 報告案について
ここから読み取れることは、医療機関の求めの有無に関わらず、「患者様の服薬状況の情報提供」が重要だということです。
薬局で当たり前に収集できる情報が医療機関で必要とされることもあり、このような職域間の情報ギャップを埋めるツールとしてトレーシングレポートの活用が期待されます。
- 処方医への届け方が大事!
重要な書類であることに気づいてもらう工夫も大事です。郵送やFAXだと、広告宣伝のチラシやDMなどにまぎれて、間違えられて処分される可能性があります。下記に対策例を示しますので、参考にしてみて下さい。
(具体案)
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2.トレーシングレポート書き方のコツ
トレーシングレポートの書き方のコツについてまとめましたので、参考にしてみて下さい。
①加算の取れるもの
加算 |
トレーシングレポートのコツ |
(服薬指導後のフォロー) ・服薬情報等提供料1 ・服薬情報等提供料2 |
服薬指導から数日以上経過後に、患者様の状況を医療機関(処方医等)に伝えるものです。 ・「患者様の状況」、「薬剤師がどのように対応したか(受診勧奨、経過観察等)」を書くことは必須です。必要に応じて「処方薬の変更提案、剤形変更提案」なども入れましょう。 |
(入院前の状況を伝える) ・服薬情報等提供料3 |
入院前の服用薬剤を整理し、医療機関(処方医等)に伝えるものです。 ・残薬確認だけでなく、「残薬の理由」を患者様からヒアリングし、情報提供しましょう。 |
(糖尿病患者様の低血糖対策) ・調剤後薬剤管理指導料 |
患者様に低血糖症状が出現していないかを確認する目的で行われます。 ・「患者様に低血糖状態出現の有無」「薬剤師がどのように対応したか(受診勧奨、経過観察等)」をしっかり書きましょう。 |
(喘息/COPD患者様対策) ・吸入薬指導加算 |
服薬アドヒアランスが低い吸入薬を正しく使えるようにすることが目的で行われています。 ・「患者様の吸入薬の熟達度のレベル」の情報提供が重要であり、手技の細かい説明は求められていません。 |
(多剤併用患者様の減薬提案) ・服用薬剤調整支援料1 ・服用薬剤調整支援料2 |
ポリファーマシー対策の加算です。 該当患者様を探す難易度は高いですが、薬剤師の職能をフル活用しましょう。 ・厚生労働省の「高齢者の医薬品適正使用の指針」が参考になりますのでご参照ください。 |
②加算が取れないもの
加算は取れなくても、情報提供をした方が良い内容はたくさんあります。
一例を示します。
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トレーシングレポートの書き方のコツ |
次回診療での残薬調整の依頼 |
残薬を確認するために、お薬手帳を活用するのがポイントです。 ・一手間かかりますが、薬剤師がお薬手帳に毎回、残薬を記入していくと、患者様の残薬の数を薬局で把握できます。残薬情報を処方医に伝えることで、患者様⇄薬剤師及び、処方医⇄薬剤師間の信頼関係が良好になります。 |
次回以降の診察に有用な薬の専門家としての提案 |
剤形変更、一包化の提案、処方提案、ジェネリック医薬品提案など緊急性はないが気づいたことの情報提供の場合もトレーシングレポートが使用可能です。 ・処方医が判断しやすいように、提案理由のエビデンスの明示(添付文書のコピーなど)や具体的な患者様の背景を書き添えましょう。 |
3.トレーシングレポートの薬局での運用方法
トレーシングレポートのネタがない。相互作用の知識が未熟だから気付けるポイントが少ないとの声を耳にしますが、そんなことはありません。
上述しましたが、「服用状況の情報提供」が最も連携に役立つとアンケート結果がありました。
服薬状況の情報提供は、「残薬の確認」「アドヒアランス」が中心ですから、必要なのは、患者様から聞き取りを丁寧にして、同じ患者様を複数回担当することではないでしょうか。決して高度な知識を要求されているわけではありません。
是非、取り組みやすいことからはじめてみてください。
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筆者:鈴木 素邦
2004年城西大学薬学部卒業。2017年グロービス経営大学院経営研究科(MBA)卒。
学校法人医学アカデミー薬学ゼミナールにて講師・商品開発・組織開発・マネジメント業務に従事。大手薬局、地域薬局、スタートアップ薬局にて薬剤師業務を経験。
現在、有限会社クラヤ代表取締役。薬局向け経営コンサルティング(クラヤコンサルティング)、人事評価システムの導入、処方箋単価向上、店舗開発、有料職業紹介業等のサービスを展開。
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