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介護保険制度を巡る最新動向(後編) ~12月20日に公表された「介護保険制度の見直しに関する意見」を踏まえて~NEW

2023.01.23

 12月20日に公表された「介護保険制度の見直しに関する意見」の後半部分

前回から引き続き「介護保険制度の見直しに関する意見」に関する解説をさせていただきます。前回コラム執筆時点では、1219日に開催された第105回社会保障審議会介護保険部会の資料、「介護保険制度の見直しに関する意見(案)」が最新のものとなっていましたが、その後、1220日に「介護保険制度の見直しに関する意見」が公表されました[][]。その方向性は正式に固まったものといってよいでしょう。

前回のコラムでは、「介護保険制度の見直しに関する意見」の前半部分である「地域包括ケアシステムの深化・推進」での議題について紹介させていただきました。今回は後半部分の「介護現場の生産性向上の推進、制度の持続可能性の確保」について、ご紹介させていただければと思います。

→ 前回のコラムはコチラ 

「介護現場の生産性向上の推進、制度の持続可能性の確保」の項目は大きく「1.介護人材の確保、介護現場の生産性向上の推進」と「2.給付と負担」の2つのテーマに分かれます。それぞれ重要なポイントをピックアップしながら解説させていただきます。

 

総合的な介護人材確保対策

「1.介護人材の確保、介護現場の生産性向上の推進」は、介護業界が直面している、構造的な人手不足への対策について言及されています。これは継続して実施されている施策も数多くあります。下記の図をご覧になったことのある方も多いのではないでしょうか。

「介護保険制度の見直しに関する意見(参考資料)」[]

 

上記は継続的に実施されている施策となります。もし、ご存じのないもので特にご興味をお持ちいただいたものがあった場合は、実際にどの様な施策がおこなわれているか、更に深堀してお調べいただければと思います。

今回の「意見」では、特に介護福祉士のキャリアと外国人人材についての言及に注目できるのではないかと考えております。介護福祉士のキャリアについては、下記の様な言及があります。

 

「介護保険制度の見直しに関する意見(P23)」[]

 

介護現場で活躍する人材のすそ野を広げ、そのマネジメントを介護福祉士がおこなうという構想はかねてより打ち出されてきていたものでした。この構想について、より具体化していく動きにつながっていくことが考えられます。

具体的には、現在、厚生労働省の令和4年度老人保健健康増進等事業として「介護福祉士のキャリアモデルとリーダーとしての役割に応じた研修活用の在り方に関する調査研究事業」という調査研究事業がおこなわれています[]。この調査研究事業は、各事業所で実施されている研修や現在実施されている法定研修の成果、介護福祉士のキャリア志向等について調査する内容となっています。

実際にどう制度が変わっていくかについては、事業の報告を待つこととなります。その結果に応じて今後議論が進むということになりますが、調査票を確認する限り、介護職グループのマネジメントをおこなえる介護福祉士の育成を目的とした法定研修の体系化がおこなわれる可能性があるのではないかと考えます。結果次第では、その体系化された研修の受講を促すような制度設計、例えば加算との連動なども、将来的には考えることもできるので、結果には注目したいところです。

また、海外人材については「引き続き受入・定着を促しながら、日本語学習や生活相談の支援とともに介護福祉士の資格取得支援等を推進することが必要」と言及されています。定着に加えて、介護福祉士の取得も見据えた、つまり先述した介護グループのマネジメントを担う人材としても、将来的に期待されているということがわかります。

介護福祉士のマネジャー化と、海外人材の更なる登用という方向性については、介護人材確保に関する大きなテーマとなっていくことが考えられます。この様に設定された大きなテーマは、今後の、介護事業所運営における大きなトレンドとなっていく可能性が非常に高いため、自事業所内での在り方についても、検討を進めることが大切になります。

 

生産性の更なる向上

人材の確保やマネジメント体制の整備と同等に、生産性の向上も引き続き大きなテーマとなっています。

これまでも地域医療介護総合確保基金を原資とした介護ロボット・ICTの導入支援や、人材育成等に取り組む介護事業者の認証評価制度等が実施されていました。これらに加えて令和5年度より「都道府県主導の下、生産性向上に資する様々な支援・施策を一括して網羅的に取り扱い、適切な支援につなぐワンストップ窓口の設置など総合的な事業者への支援に取り組む」としています[]。地方公共団体の役割を法令上も明確化するとされており、生産性向上を実現するための地域の支援体制はより充実していくこととなるでしょう。

また、この様なロボットやICTの導入を通じたものに加えて、介護助手の活用についても大きな意欲が見えます。「介護現場のタスクシェア・タスクシフティング」の項目では下記の様に言及しています。

 

「介護保険制度の見直しに関する意見(P26)」[]

 

上記の通り、介護助手について「制度上の位置付けや評価」を引き続き検討することとしています。これは、一定の基準を満たした上で、人員配置上、介護職員とは別に介護助手を一定数加配した場合に、何らかのインセンティブが受け取れるようになる、という体制が作られるのではないかと予想されます。

業務の体系化、業務遂行上の留意点の整理、教育の在り方、人材の確保等、介護助手の配置に関するかなり具体的な検討すべきポイントについても言及されています。これは、筆者も参加した令和2年度老人保健事業推進費等補助金老人保健健康増進等事業である「東北地方における介護未経験の高齢者人材等の確保及び業務分担に係る好事例事業者の取組の分析等に関する調査研究事業」にて詳細がご確認いただけます[]

モデルケースを参考にしながら、未実施の施設で実際に介護助手を導入した事例と、そのエッセンスを整理した事業となっています。実際の介護助手の導入を成功させるためのポイントはもちろん、今後、設計されていくであろう制度の内容を示唆するものとなっています。ご参考にしていただければと思います。

その他には経営の大規模化・協働化等、文書負担の軽減といったテーマが引き続き議論されています。また、介護サービス情報公表制度において介護事業者の財務状況や一人当たりの賃金等を公表する方向性等が示されています。このあたりは、今後、大きく変わっていくことになるでしょう。

 

給付と負担

最後に、給付と負担についての内容も、大きなものについて紹介させていただきます。自己負担割合については、「現役並み所得(3割負担) 」 、 「一定以上所得(2割負担)」 の判断基準について、高齢者の生活実態や生活への影響等も把握しながら検討を行い、次期計画に向けて結論を得るとしています。次期計画とは、令和6年より開始する第9期介護保険事業計画となりますので、結論は令和5年度内には出るものと考えられます。ただ、介護保険部会の段階では積極・消極両面での意見が見られたので、引き続き議論を見守っていくこととなるでしょう。

ケアマネジメントに関する給付の在り方(ケアマネジメントの有償化)や軽度者への生活援助サービス等に関する給付の在り方については、いずれも第10期計画期間の開始までに結論を得るものとされました。これは、次期計画段階では据え置きとなり、令和10年までは現行を維持するという結論だといえるでしょう。ただ、従来より議論が継続している分野ではありますので、それ以降になれば、再度議論がおこなわれることになるのは、忘れてはいけないでしょう。

 

以上、前回から2回に渡って「介護保険制度の見直しに関する意見」を開設させていただきました。今年の4月以降は、この意見をもとにしながら、社会保障審議会介護給付費分科会にて、より具体的な、実際の「令和6年度介護報酬改定」に関する議論が進んでいくことととなります。

大きな動きがありましたら、また本コラムにて改めてご紹介させていただければと思います。

株式会社スターパートナーズ代表取締役

一般社団法人介護経営フォーラム代表理事

脳梗塞リハビリステーション代表

MPH(公衆衛生学修士) 齋藤直路

 


[ⅰ] https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_29652.html

[ⅱ] https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001027165.pdf

[ⅲ] https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001027168.pdf

[ⅳ] https://www.jmar-llg.jp/cup04.html

[ⅴ] https://www.mizuho-rt.co.jp/case/research/pdf/r02mhlw_kaigo2020_07.pdf