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オンライン服薬指導実施事例報告から見る運用のポイント②

2023.02.01

改正薬機法により2022年に日本全国で実施可能となったオンライン服薬指導に関して、薬局の実施するオンライン服薬指導に関する調査報告がまとめられ、公表されました。

 

「医薬品医療機器等法に基づくオンライン服薬指導及び新型コロナウイルス感染症を受けた時限的・特例的措置としての電話等服薬指導の実施事例の収集」

(※リンクURL)https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/report_pdf/%E5%88%86%E6%8B%85%EF%BC%91.pdf

 

これは帝京平成大学薬学部教授の亀井美和子氏を研究代表者とする調査で、

20218月~20221月の間にオンライン服薬指導の実績のある10薬局へ行なったヒアリング調査

20223月に無作為抽出の5000薬局を対象に行なったアンケート調査

20222月に2060代の消費者(年代ごと200人・計1,000)を対象にしたアンケート調査

3つの調査を基にしており、オンライン服薬指導を効果的に行なうための実施方法や、これらのことを適正に実施できる薬剤師に求められる取組等について検討していく上での有益な情報源であると言えるでしょう。

 

前回の記事では、「10薬局からのヒアリング調査の評価」を紹介するとともに、特にシステム環境面の問題についての回答から見えてくる課題について注目しました。

(※前回記事URL https://em-avalon.jp/column/detail?id=160 )

 

今回は、「5000薬局を対象に実施したアンケート調査」の結果から、薬局の現場におけるオンライン服薬指導に対する捉え方を探るとともに、実施への障壁となっていることや円滑に進めていくために必要な事柄について見ていきたいと思います。

 

※この調査では5000件を対象にアンケート送付したものの、回答webサイトにアクセスされた数は452件。そのうち未入力項目が多い回答者を除外したため、実際に集計に用いた回答数は345件となっています。

 

◎オンライン資格確認に対する考え

 

回答数

(A)可能な限り、対面で服薬指導を実施したい。

111

(B)薬剤師の判断で、場合によってはオンラインで服薬指導を実施したい。

115

(C)患者の希望に応じて、できる限りオンラインで服薬指導を実施したい。

79

その他

5

無回答

35

 

この回答分布を見るとオンライン服薬指導への取り組みについて全体の中でも意見が分かれていることが分ります。

 

■できるだけ対面で服薬指導を行いたい意見

 

「可能な限り対面で服薬指導を実施したい(A)」の理由を拾い上げてみると、

・オンラインでの服薬指導だと確実な意思疎通が難しい場合がある」

・雰囲気、表情が分かりづらい

・薬の内容をしっかり双方確認したい、体調もみておきたい

・対面のほうが吸入指導や外用薬の使い方などの指導がしやすい

といった、オンラインでは意志疎通が図りにくいことを理由に挙げる意見が目立ちます。

その他には

・患者がオンライン服薬指導について理解していない

・患者からの要望が無い

とい理由も見られます。

 

では、この(A)の意見の方々に対して「どのような条件があればオンライン服薬指導を実施したいか」という問いかけをしたところ、次のような選択式で次のような回答が得られました。

 

◎どのような条件があればオンライン服薬指導を実施したいか

 

回答数

店舗業務との両立ができるなら。

52

46.8

オンライン服薬指導を希望する患者が増えたら。

47

42.3

薬の配送の手間がかからないなら。

44

39.6

オンライン服薬指導を実施するための設備が整ったら。

28

25.2

近くの医療機関がオンライン診療を始めたら。

26

23.4

オンライン服薬指導の整備投資に費用負担が少ないなら。

12

10.8

調剤報酬上でもっと高い点数を算定できるなら。

12

10.8

オンライン服薬指導を実施する薬局が増えたら。

10

9.0

その他

4

3.6

合計

111

100.0

 

最も多く見られるのが「店舗業務との両立」であり、オペレーション上の都合がまずあるようです。その関連で見ると「薬の配送に手間がかからないなら」という回答も同様です。

しかしながらまだ走り出した制度でもあり「希望する患者が増えたら」「近くの医療機関がオンライン診療を始めたら」という回答からは、外部環境の変化も条件として考えている傾向が窺えます。

 

■オンライン服薬指導に期待する意見

 

では、積極的に捉えている薬局はどのような期待をかけているでしょうか。

B)と(C)の意見の中から象徴的なものを拾ってみます。

 

・感染症などの時はオンラインでの服薬指導が良い。

・コロナ禍であり、できるだけ患者のニーズに合わせたいため。

・問題ないと判断できる場合はゆっくり時間をとっての指導もありうる。

・代理の方が来た時など、本人に直接説明した方がいい時がある。

・サービスを受ける側の選択の自由が広がっている風潮があるので。

・これからは通信機器を用いての作業(生活レベル)の需要が高まると思うため。

 

これらの意見からはコロナ禍でのオンライン対応での安全面での優位性が挙がるほか、オンラインのほうが服薬指導を充実できるという期待、また生活者側での行動習慣の変容に注目している事が分ります。

 

さらに、オンライン服薬指導を実施したい考えの方々に「どのように実施したいか」との設問を設けたところ、次のような回答が得られました。

 

◎オンライン服薬指導をどのように実施したいか

 

回答数

遠方の患者の調剤にも対応したい。

83

42.8

オンラインでの服薬指導に問題を感じた場合は、速やかに対面に切り替えたい。

77

39.7

薬剤師が希望するタイミングで、患者の様子を確認したい。

69

35.6

オンラインで質問や相談を受けたい。

67

34.5

薬がなくなりそうな時期にお知らせをしたい。

45

23.2

調剤のほかに、オンラインで他の商品の注文も受けたい。

33

17.0

指導はオンラインでも、薬の受け渡しは店舗で行いたい。

26

13.4

夜間や休日にも対応したい。

10

5.2

その他

6

3.1

合計

194

100.0

 

この回答からは、患者との関係の取り方として「オンラインで問題を感じた場合は速やかに対面に切り替えたい」「指導はオンラインでも薬の受け渡しは店舗で」といったリスク管理に備える姿勢も見せつつ、「遠方の患者の調剤にも対応したい」との回答が最も多く、他にも「調剤のほかに他の商品の注文も受けたい」「夜間や休日にも対応したい」といった回答も見られ、オンライン服薬指導を実践することにより、従来ベースの患者対応にはとどまらない営業的な発展に期待をかけていることが伺えます。

 

 

調査結果にも現れている通り、まだまだ運用実施に向けて意見が分かれているのが実状ですが、医療安全への不安を解消する手段を見極めつつ、オンライン服薬指導によって拡がる可能性にも注目していきたいところです。

 

 

筆者:株式会社エニイクリエイティブ MIL編集部