- 調剤
- #薬局経営
対人業務をパワーアップ「伝え方を磨く」
2023.06.26
今回から2回に分けて、薬剤師の「対人業務」のスキルアップについて書きます。
- 対人業務をパワーアップ「伝え方を磨く」
- 対人業務をパワーアップ「印象を磨く」
なぜ、この話題について書くのかというと、2023年の骨太の方針に「薬局薬剤師の対人業務向上」が挙げられており、国としては継続して注力していく方針になっています。そして、対人業務を向上させるためには、人と人のコアである「伝え方」がとても大切になってくるから選びました。
正しいことを一生懸命話しても患者さんに伝わらなかった経験はありませんか?
ちょっとした工夫で飛躍的に伝わる場合がありますので、いくつかそのコツをまとめます。
【目次】
👆コラム内容について 対人関係(特に患者さん―薬剤師の服薬指導)での伝え方の工夫をまとめました。 |
1.相手を話で動かすための原理原則(ジャパネット、高田さんの例と共に)
突然ですが、株式会社ジャパネットたかたの創業者である髙田明さんは、テレビショッピングで商品が他社の何倍も売れることで有名です。高田さんのプレゼンがうまいから売れる部分もありますが、真似できる技術が盛り込まれていますので例を使いながら説明します。
差別化が難しいサントリーの天然水ウオーターサーバー販売の例です。
「聞き手の分析」
この商品はどのような人に売れるのだろうか?を徹底的に分析し、ターゲット層を明確にしてその一人に向けてメッセージを送っています。想定購入層の30代ファミリーの子供が喜ぶ姿、高田明さんご自身が水割りに使うシーンなどの映像を入れて、生活でどのように利用すればよいかのイメージを膨らませています。
「シナリオを組み立てる」
限られた時間で最大限伝える工夫がされています。その商品の特徴を洗い出して、他が真似できないポイントや、生活シーンでどんな豊かさが生まれるのかをピックアップして伝えています。
①「具体例を交えて、繰り返し伝えている」
生活をどのように豊かにするのかを繰り返し伝えています。配送料無料で重い水を運ばなくてもよくなる、
冷蔵庫に水を保管しなくても大丈夫、赤ちゃんが飲んでも安心、焼酎の水割りのときに臭みなく飲めるなど活用イメージを膨らませています。
②「伝える内容にメリハリをつけてゴッチャに説明されていない」
ウオーターサーバーは、金額設定がゴチャゴチャするところですが、フリップを使ってまとめてスッキリして安価で安心感が伝わってきます。
「好意」
ウオーターサーバーが3ヶ月間無料であり、お試し利用であれば返品も可能とすることで購入に悩んでいる人もお試しができるように呼びかけて、後戻りできるようにし、好意を伝えています。
👆ポイント ・ジャパネットたかたの高田明さんのメッセージは、以下の方程式が成り立って、相手を動かしているのです。 (相手の分析)×(シナリオを組み立てる)×(好意)×(回数)=(相手に伝わる力) これを服薬指導に当てはめると、 (相手の分析)=患者さんの課題や特徴を確認する (シナリオを組み立てる)=患者さんのゴール設定とアクションプラン (好意)=良い感情の貯金をする (回数)=来局時にできるだけ同じ薬剤師が担当する
・私が服薬指導で使っている「お辛いですね」 「お辛いですね」を使って、患者さんに伝わる力を上げています。「お辛いですね」は、患者さんに寄り添いつつ、心配している感情の貯金「好意」を与えることができます。経験的に、患者さんの顔がパッと明るくなり、患者さんの心が開かれるケースが多いので、会話の文脈に合わせて、是非使ってみてください。 |
2.固有名詞、絵を意識する
少しテクニカルな内容になりますが、固有名詞と絵を服薬指導に取り入れる話をします。
どちらが患者さんに伝わると思いますか?
- この病気は、長嶋茂雄監督がかかった病気であり、脳血管が詰まり脳内の血流が悪くなる脳梗塞です
- この病気は、脳血管が詰まり脳内の血流が悪くなる脳梗塞です
- を挙げた方が多いのではないでしょうか。
①と②の違いは、固有名詞を入れたか否かです。①は、話すと同時に患者さんの脳裏に長嶋監督のテレビ映像の情景を浮かべることになり、一瞬でイメージの共有ができるのです。
👆ポイント 有名人でなくても固有名詞はイメージの共有に効果的です。固有名詞には、地名、団体・組織の名前、建物・施設名、商品やサービスの名前、書籍や音楽のタイトルなどでも良いのです。 「●●駅から■■スポーツセンターまで歩く運動をしましょう。」とか、患者さんがわかっていることに働きかけることがポイントです。 |
もう一つは絵をかくこともお勧めです。
あまり患者さんに知られていないリフィル処方箋の概略を患者さんに説明する時はどうしますか?
出典:2023年2月20日 日本経済新聞
ほとんどの薬局の服薬指導は、口頭だけでおこなっているように思います。しかし、口頭で伝えるのは難しい場合もあるのではないでしょうか。上図は日本経済新聞で使われているリフィル処方箋を説明している図です。この新聞の読者は、薬に詳しいわけではなく経済を学びたい読者や世の中の流れを掴みたい一般人(医療関係者ではない)です。
日本経済新聞は、一般人に複雑なリフィル処方箋の説明を文字だけでなく図も使う工夫をしているのでしょう。我々薬剤師も、伝えにくいと思う事項は、口頭で伝えるのではく、絵や図を使うと患者さんの理解度が上がり、正確に伝わるケースが多いと思います。
今回は、薬局薬剤師の対人業務をアップさせる「伝え方」を紹介しました。
余談ですが、今回のコラムでみなさんに伝わりやすいように著名人の「ジャパネットの高田さん」、一般人が読む「日本経済新聞」の固有名詞を意識して書いてみました。脳裏にシーンが浮かびましたでしょうか。
日常業務で是非活用してみてください。
著者紹介
鈴木 素邦 有限会社クラヤ代表取締役
薬学部卒業と同時に薬剤師免許取得。新卒で薬剤師国家試験予備校に講師として就職。講師業は年間100日以上、15年間で9000時間以上登壇。15年間受講者満足度は常に上位。短時間で最大限の情報を講義内容と話し方に評価を受け、東京大学など全国32大学への出張講義。武田薬品工業(株)、ファイザー(株)等大手製薬企業20社以上のMR研修講師へと幅を広げた。
27歳で管理職に昇進。自身の価値観を部下に押し付け、10人中5人の部下が退職や異動希望が出る状態になりどん底を味わうが、社内から顧客満足度を上げる伝え方を聞かれることが多くなり、人を動かすトークメソッド「ストーリーライン」を体系化。
薬剤師合格率(20部署中)1位を予備校始まって以来初の3年連続達成。学長賞(準MVP)を2回受賞、その他社内表彰多数受賞。20部署中6部署統括や、バックグラウンドの異なる200名を動かすプロジェクトマネージャーも担当するが、「ストーリーライン」を活用し、全国のメンバーのまとめ上げにも成功。薬剤師の輩出数は、3万人を超える。
高齢の親が経営する不動産管理会社を事業承継するため予備校をやむなく退職。事業拡大の準備として現場薬剤師を経験し、薬局向けのコンサルティング事業を開始。今までのやり方が通用しなくなってきている薬局業界を「ストーリーライン」を通じて、処方箋単価向上、処方箋枚数の増加、オンライン時代に向けた薬局の変革。好評となり、徐々に注目され、「薬局コンサル」でホームページ検索すると、上場コンサルティング会社(船井総研)と同様に1ページ目に出てくる知名度の会社となっている。