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サ高住併設デイの経営戦略②

2021.11.09

 

【目次】

  1. サービスの開発を進める
  2. 特長になり得るサービスを開発する
  3. 特長を外部に伝える

 


1.サービスの開発を進める

前回のコラムでは、サービス付き高齢者向け住宅に併設するデイサービスの稼働率をアップさせるための手順として「コンセプトの決定」「対象者の明確化」「目標設定」という大まかな進め方の流れについてご説明しました。

手順の4番目以降では、いよいよサービスの創り込みに入っていきます。

 

④ 大きな枠でサービスの検討
まずは「重度」「軽度」「重度と軽度の混合」といった大きな枠でサービスを検討しましょう。例えば、重度の入居者には医療ニーズ対応、物理療法や認知症改善などのサービスを中心に提供します。軽度の入居者には、機能訓練や本格的な創作(趣味)などのサービスを中心に提供します。両者が混在する場合は、次のようなコース制をとるとよいでしょう。

 

 【入居者と外部利用者に分けたコース制】

対象者

レベル

コースのイメージ

入居者

中度~重度

医療ニーズ対応、認知症ケア、リラックス、マッサージサービスなど

外部利用者

軽度

歩行リハビリなど目標達成のサービス

 

単純に混ぜるのではなく、対象者を決めて「分ける」イメージです。

例えば、入居者向けにはリラックスコース、外部利用者向けにはリハビリテーションコースを設定し、サービス内容を創り込むとよいでしょう。それぞれのコースを選択可能とすれば、2種類の対象者から選ばれるデイとなり、また相互利用も可能になります。

このように、サ高住の入居者を大きな枠で考え、入居者のニーズを図り、併設デイのサービス内容を創り込むことで、より利用者に選んでもらえる事業所になるでしょう。

 

2.特長になり得るサービスを開発する

対象者の大枠でサービスを検討したら、次は対象者が抱えるニーズに特化したサービスを創り込む段階に進みましょう。

 

⑤ エッジの効いたサービス開発
サービスのエッジを効かせることも重要です。デイ市場はすでに飽和状態で、デイサービスを必要としている利用者の数に対して、地域全体のデイサービスの定員が170%を超えるほど、現状では過剰にデイサービスが存在する地域もあります。

現在、各デイサービスで提供されているサービスは、細分化も見られています。サービスの細分化について、最近メディアをにぎわしているフィットネスジムを例にしてみましょう。

 

「プールなどもある一般的なフィットネスジム」

「パーソナルトレーナーによる一般的なフィットネスジム」

「パーソナルトレーナーによるダイエットに特化したジム」

「パーソナルトレーナーによる加圧トレーニングでのダイエットに特化したジム」

 

上記の様に、同じフィットネスというサービスでも、サービスが成熟する程その内容に細分化が見られ、ニーズに応じた専門店などが各地で見られるようになってきました。

デイサービス市場でも利用者のニーズは非常に多岐にわたるようになってきていて、「歩行リハビリ特化」「言語療法特化」といった細分化は今後も加速すると思われます。ほかにも、レクリエーションに特化した事業所では、700種類以上のレクリエーションを用意して集客に成功しています。

ハード面で差別化を図っている例では、アジアンリゾート、ヨーロピアン調などのイメージで設備を整え、娯楽施設としても利用者が楽しめるさまざまな工夫を仕掛けています。また、「働けるデイ」として独自性を打ち出している事業所もあります。

簡単な仕事を受注し、利用者がその仕事を請け負います。これは自己実現の意味合いも強いものです。

レクリエーションで創作活動に取り組む例は多いですが、本格的な創作で販売できるレベルということをウリにしている事業所もあります。また、利用者が講演や案内をするというように利用者参加型を特徴にしているデイもユニークな例です。

もちろん、すべてのデイサービスに細分化が必ずしも必要というわけではありませんが、デイサービス市場の競争環境は激化しているので、「ここのデイに通いたい!」と思わせるような強力な理由が必要となります。

私は介護マーケティングの分野で多くの講演や研修を通じ現場の声を聴く機会もありますが、「競争に負けない強みを持ちたい」という声は参加者からも多く挙がっています。後発で市場に参入したサービス付き高齢者向け住宅併設のデイサービスのうち、うまくいっている事業所は、コンセプトを創り込み、サービスを特化しています。工夫次第でできることは数多くあるので、ぜひ挑戦してください。

加えて、こうしたサービスの創り込みをしていく上で、忘れてはならないのが顧客ニーズをしっかり把握することです。顧客アンケートや職員へのヒアリングを通じて、自社の強みと他社との差別化となる点を明確にするとよいでしょう。

 

3.特長を外部に伝える

サービスの創り込みが完了したら、次はプロモーションが必要になります。

 

⑥ 適切なプロモーション
創り込みをしたサービスは、効果的に地域に伝える必要があります。そのためには集客においても対象者をしっかり分けるべきです。

例えば、BtoBBusiness to Business ここでは居宅、医療連携室などの介護・医療関係者を意味する)とBtoCBusiness to Consumer、ここでは地域高齢者、ご家族などを意味する)に分け、それぞれツールや手法を変えることが重要です。

私がご支援させていただく中で集客に成功している事業所では、BtoB向けプロモーションの場合は、事業所に地域の介護・医療拠点としての役割を付加し、専門職が交流する仕掛けを企画しています。BtoC向けプロモーションの場合は、すぐに契約を迫るのではなく、段階的にお客様を育てる視点でマーケティングしていくことで安定的に入居者が集まる仕組みをプロデュースしています。

 

以上、併設デイの稼働率アップの手順について解説させていただきました。

まずは、対象となる方のイメージを定めるとともに、それに合致したサービス内容を改めて検討すること、そしてそれを効果的に外部に伝える取り組みが重要となります。

是非、本稿をご参考に、サービス付き高齢者向け住宅およびそれに併設するデイサービスの在り方について、より深化していただくきっかけとしていただけましたら幸いです。

 

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筆者:株式会社スターパートナーズ代表取締役
一般社団法人介護経営フォーラム代表理事
脳梗塞リハビリステーション代表
MPH(公衆衛生学修士)
齋藤直路

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