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どうなる⁉令和6年度診療報酬改定のゆくえ(前編)

2023.11.27

令和62024)年度の診療報酬改定は、医療、介護、障害福祉サービスのトリプル改定となります。医療、介護、障害について同時に改定が行われることから、この機会に制度間の調整が行われることになるため、重要かつ大規模な改定となることが予想されます。

今回はクリニックに関わる改定のゆくえについて、中医協での現時点での議論に基づき前編・後編に分けて解説します。

【目次】

  1. 診療報酬改定の背景
  2. 医師の働き方改革の影響
  3. 医療DX推進の影響
  4. 2024年度改定から6月1日施行に後ろ倒し
  5. 外来医療はどうなる?

後編コラムはこちら ⬅


1.診療報酬改定の背景

 わが国の人口動態を見ると、団塊の世代が75歳以上となる2025年から、団塊のジュニアが65歳以上となる2040年まで、高齢化が継続して進むことになります。その影響から、85歳以上の人口が増え、それに伴い要介護者の増加が見込まれており、医療と介護の複合ニーズを持つ者が一層多くなることが見込まれます。

また、今後の人口減少と高齢化に伴う、医療・介護のニーズ拡大、労働力人口の減少を踏まえて、質の高い医療を効率的に提供できる体制を構築するため、各地における2025年の医療需要と病床数の必要量について医療機能ごとに推計し、医療構想としてまとめられてきました。2025年は「地域医療構想」の最終年となり、次期改定は地域医療構想も踏まえた内容となることが予想されます。

 

2.医師の働き方改革の影響

 また、20244月に医師の「時間外労働の上限規制」が適用されることも大きく影響しそうです。今後は、診療従事勤務医(A水準)には年960時間の上限規制が適用され、地域量確保暫定特例水準(B水準)及び集中的技能向上水準(C水準)の医療機関においては、特例的に年1,860時間の上限規制が適用されることになります。

2024年4月から医師についての時間外労働の上限規制が適用され、働き方改革に向けた継続的な取り組みが求められる中、これまでの医師をはじめとした医療従事者の働き方改革の取り組み(柔軟な勤務体制、デジタルツールの活用、タスクシフティングなど)や、診療報酬上の対応を踏まえ、働き方改革の推進に対する診療報酬の評価の在り方が議論されることになります。

 

3.医療DX推進の影響

医療DXについては、202362日に医療DX推進本部でまとめられた「医療DXの推進に関する工程表」に沿って進められていくこととなります。同工程表において「全国医療情報プラットフォーム」に関し、2024年度中の電子処方箋の普及に努めるとともに、電子カルテ情報共有サービス (仮称)を構築し、共有する情報を拡大するとしています。

また、オンライン資格確認の今後の範囲拡大として、介護保険、予防接種、母子保健、公費負担医療、地方単独の医療費助成などの情報を順次マイナンバーカードと紐付けを行っていくとともに、次の感染症危機に対しても対応を進めるとしています。

「診療報酬改定DX」については、まず2024年度に医療機関等の電子カルテやレセコンの共通言語となるマスタ及びそれを活用した「電子点数表」を改善・提供して共通コストを削減していくとしています。次に、2026年度には、「共通算定モジュール」を本格的に提供し、共通算定モジュール等を実装した「標準型レセコン」や「標準型電子カルテ」の提供により、医療機関等のシステムを抜本的に改革し、医療機関等の間接コストを極小化するとしています。

同工程表によると、わが国の情報共有基盤として、「全国医療情報プラットフォーム」の構築が進められ、情報の標準化、効率化のために「標準型レセコン」や「標準型電子カルテ」を提供していくことが想定されています。


出典:厚生労働省 医療DXの推進に関する工程表〔全体像〕

4.2024年度改定から6月1日施行に後ろ倒し

 政府が急ピッチで進めている医療DXの議論の中で、診療報酬改定の期間が短いために改定作業の負担が大きいことが課題として挙げられています。通常の診療報酬改定のスケジュールでは、2月初旬に答申が行われ、3月初旬に告示、4月に施行、5月に初回請求とされてきました。そのため、改定期間は実質2カ月~3カ月と短く、電子カルテやレセコンベンダの改定作業並びに、医療機関・薬局等の改定作業が逼迫し、大きな負担がかかってきました。

そこで、中医協総会において、2023年4月及び8月に議論が行われ、2024年度診療報酬改定より、薬価改定については「4月1日」に施行し、薬価改定以外の改定事項については、「6月1日」に施行することを事務局が提案し、了承されています。

 

5.外来医療はどうなる?

 外来医療については、「かかりつけ医機能」「外来機能の分化の推進」「オンライン診療」などが変更項目として議論されています。

「かかりつけ医機能」については、国民への情報提供の強化やかかりつけ医機能の報告に基づく地域での協議の仕組みを構築し、協議を踏まえて医療・介護の各種計画に反映することとされています。かかりつけ医機能をさらに推進するために、これまでの評価をどのように見直していくのかが論点となります。

 「外来機能の分化の推進」については、2022年改定で、定額負担を徴収する医療機関の対象範囲を「紹介受診重点医療機関(一般病床200床以上に限る)」に拡大するとともに、保険給付範囲と定額負担の額等が見直されています。次期改定では、より外来機能の分化が推進されるように、定額負担の対象範囲の拡大並びに患者負担の見直しなどが論点となります。

 「オンライン診療」については、2022年1月に「オンライン診療の適切な実施に関する指針」が見直され、2022年度改定で、オンライン診療料を廃止し、情報通信機器を用いた場合の初・再診料として再編を行い、算定できる「医学管理料」を拡充するとともに、算定要件の緩和等が行われています。次期改定では、これまでの経緯を踏まえて、オンライン診療がより推進されるよう、さらに点数の拡充などが行われるかが論点となります。


筆者:株式会社EMシステムズ EM-AVALON事務局
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