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どうなる⁉令和6年度診療報酬改定のゆくえ(後編)

2023.12.11

 令和62024)年度の診療報酬改定は、医療、介護、障害福祉サービスのトリプル改定となります。医療、介護、障害について、同時に改定が行われることから、この機会に制度間の調整が行われることになるため、重要かつ大規模な改定となることが予想されます。

 後編では、在宅医療、医療と介護の連携、医療機関がいまからできることについて解説します。

【目次】

  1. 在宅医療はどうなる?
  2. 医療と介護の連携はどうなる?
  3. 医療機関がいまからできること

前編コラムはこちら ⬅


1.在宅医療はどうなる?

団塊の世代が2025 年には75 歳以上になり、死亡数は2040 年まで増加が見込まれ、今後日本は「高齢多死社会」を迎えます。そのため、在宅医療の需要は引き続き増加する傾向にあり、その需要を吸収していくために、地域包括ケアシステムの構築が進められています。

「訪問診療」については、在宅患者の要介護度や認知症の日常生活自立度の患者割合が変化していることや、診療時間等の特性が異なることを踏まえて、「包括的支援加算」や「頻回訪問加算」などについて、患者の特性に応じた訪問診療の評価の見直しが検討されています。また、「在医総管・施設総管」については、高齢者施設での算定が急激に増えていることを受け、改めて患者の状態にあった算定形態への見直しが検討されています。

コロナ禍で急増した小児の「往診料」の増加を受けて、夜間休日深夜の往診の実態を踏まえた往診料の評価の見直しが検討されています。特に、訪問診療の患者に対する往診と、訪問診療を行っていない患者に対する往診の特性の違いを踏まえた見直しが必要との指摘が出ています。

「看取り」については、患者本人の望む看取りを行うためには、意思決定支援の情報を入院先の医療機関と訪問診療を行っている医療機関が共有し、今後の対応方針として共同して指導を行うことが重要であり、特にがん末期の患者等においては短期間で看取りとなることがあるため、退院後速やかに訪問診療が実施される環境を整える必要があるとしています。そのために、切れ目のない医療提供体制をどう構築するかが論点として示されています。

 

2.医療と介護の連携はどうなる?

 次期改定は、医療と介護の同時改定であることを踏まえ、診療報酬と介護報酬等との連携・調整をより一層進める観点から「令和6年度の同時改定に向けた意見交換会」が設置され、報酬改定議論に入る前に3回議論が行われています。

 具体的な検討内容としては、地域包括ケアシステムのさらなる推進のための医療・介護・障害サービスの連携リハビリテーション・口腔・栄養要介護者等の高齢者に対応した急性期入院医療高齢者施設・障害者施設等における医療認知症人生の最終段階における医療・介護訪問看護薬剤管理その他。

 同検討会では、医療と介護のあるべき連携の姿とは、必要な情報の一方向的な提供や閲覧だけでなく、相互のコミュニケーションを深め、現状、課題、目標、計画などを共有しながら、患者(利用者)、家族とも同じ方向に向かい、より質の高い医療・介護の実現につなげることとされました。

また、現在は情報提供の仕組みとして、ホームヘルパーから介護支援専門員、主治医へ報告する仕組みはできているものの、主治医からも発信できるようにすることで双方向の情報共有を行っていく必要があるとしています。

さらに、医療において「生活」に配慮した質の高い医療の視点が足りておらず、生活機能の情報収集が少ないのではないかとの指摘が行われています。

 

3.医療機関がいまからできること

 令和62024)年度の診療報酬改定は、政府による「医療DX」の推進が急ピッチで行われる中、医療機関同士、医療機関と介護施設、医療機関と調剤薬局など、(デジタルツールを活用した)情報連携が重要なテーマとなっています。

医療DX政策に対応していくためには、情報連携を行うための体制整備が必要であり、電子処方箋の導入や、電子カルテシステムなどの導入準備を行っていく必要があります。今後は政府が進める医療DXに対して、積極的な支援が可能な「パートナー」かどうかを、システムベンダーを考える際に重要視する必要があると考えます。

また、20244月から始まる「医師の時間外労働の上限規制」の影響から、医療機関では勤務状況の見える化を図るため「勤怠管理システム」の導入を行うとともに、生産性向上に寄与する「デジタルツール」を活用した業務変革が必要となります。

さらに、医師の負担軽減を行うために、看護師や事務職員の間でのタスクシフトを進める必要があります。特に医師の負担となっている「カルテ記載」や「書類の作成」については、次期改定において、「情報共有・連携」の強化が打ち出されており、それに伴い書類作成など医師の負担増が見込まれることから、早期に医療クラークの配置並びにトレーニングなどを行うことが大切です。

診療報酬の改定とは、診療メニュー表が変わるとともに、それに伴い大きな体制変更を余儀なくされます。次期改定を予測し、その準備を早期に進めることが大切なのです。