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電子処方箋の概要・現状・今後の動き ~セミナーレポート~
2023.12.11
11月2日に弊社主催で「電子処方箋の概要・現状・今後の動き」と題したオンラインセミナーを行いました。本レポートでは講演内容の中から、主に電子処方箋導入薬局による業務フローの変更点を中心にご紹介します。
【セミナー講師と演題】
第1部:電子処方箋の概要・現状・今後の動き
講師:株式会社EMシステムズ チェーン営業統括部長 菅井英嗣
第2部:導入薬局が語る「電子処方箋は実際どうなのか」
講師:アポクリート株式会社 薬局事業部 第二事業部 福島第四ブロック ブロック長 中里見裕哉
■電子処方箋の概要・現状・今後の動き
始めに株式会社EMシステムズの菅井氏より、2023年10月時点で約650施設の病院や診療所、約7,000件の薬局が電子処方箋の運用を開始しており、都道府県別では医療機関の多い東京、大阪、神奈川の順に運用開始数が多いといった現状が共有された。
そして、今後電子処方箋に追加される予定の機能として以下の7項目を紹介した。
2023年12月~2024年1月頃 ◎リフィル処方箋への対応◎重複投薬等チェックによる口頭同意◎マイナンバーカードを活用した電子署名
2024年6月以降 ◎調剤済処方箋の保存サービス◎電子処方箋の医療扶助対応◎オンライン資格確認Webサービス◎院内処方
■処方箋の様式の多様化
続いて、2023年1月からモデル事業地区で電子処方箋の受付を開始しているアイランド薬局須賀川店(アポクリート株式会社)の中里見氏より、実際の薬局業務の変化について説明がなされた。
電子処方箋導入にともない処方箋様式が3つに分かれることになった。
① 従来の紙処方箋:病院や診療所が電子処方箋非対応の場合や、現状電子処方箋非対応の事故・労災・生保など保険外調剤の場合に発行される。
② 引換番号付きの処方箋:処方元は電子処方箋に対応済みだが、患者が希望しなかった場合に発行される。①との違いは、左上に電子処方箋対応引換番号がつく点。発行元の医療機関によってはQRコードも表示される。
③ 電子処方箋処方内容控え:電子処方箋対応の病院や診療所において、患者が電子処方箋を希望した場合に発行される。処方内容の欄に薬品名と用量の記載はあるが、用法は記載されていないため③のみで調剤するのは困難。
実際のアイランド薬局須賀川店での受付状況は、②が約9割、③が1割弱だという。
そして電子処方箋未対応の薬局では③の受付ができないことで機会損失となってしまうため、早期に電子処方箋に対応することが必須であると述べた。
■薬局での実際の業務フローの変化
続いて、電子処方箋導入による業務フローの変化を紹介した。
・事前の調剤準備
紙の処方箋:FAX、オンライン送付による事前準備が可能
電子処方箋:かかりつけ患者には、電話等で情報取得ができれば事前準備が可能。一方新規患者は、データを読み込んだ後に別の薬局に行った場合キャンセルに手間がかかる点が課題。
・受付から調剤までの流れ
紙の処方箋:受付後、処方箋をコピーしてそれを元に調剤に取りかかる
電子処方箋:受付後、複製された電子情報を取得するために必ずレセコンを経由して、複製された電子処方情報(これまでの処方箋と同じような情報)を出力してから調剤に取りかかる
・服薬指導後のデータ返送
紙・電子いずれの処方箋も、電子処方箋管理サービスサーバーにデータを返送する必要がある。HPKIカードが紐づけされているレセコンからのデータ返送は可能だが、レセコンと別端末の電子薬歴からは返送できないため注意が必要。
電子処方箋はデータ返送後、サーバーから調剤済電子処方箋を受け取って、調剤完了となる。
■レセコン画面の変更点
EMシステムズのレセコン画面を共有しながら変更点を紹介した。
・処方箋情報一覧
処方箋ごとに、電子か紙か、重複のチェック、ステータスが調剤済みか受付済みかなどを一覧で確認できるようになっている。さらに、疑義照会やOTCの服用状況、トレーシングレポートなど医療機関へのデータ送信も行えるという。
・処方入力画面
入力画面でも重複投薬の確認が可能となっており、受付後早期に重複投薬の確認ができることは安全性が高いと評価した。
・電子薬歴併用薬確認画面
患者が薬剤情報の提供に同意している場合には、他の医療機関や薬局で投薬されている薬剤情報も含めて重複投薬チェック結果の詳細な確認ができる。
患者が同意していない場合は、他の医療機関や薬局で投薬されている薬剤に関しては詳しい情報は表示されない。ただ、成分が重複していることは分かるようになっており、その表示をもとに患者に確認することは可能で、同意なしの場合でも有効であると述べた。実際に、同意なしの患者で表示をもとにお薬手帳を確認して、処方削除になった例があったという。
・その他
サーバーへのデータ返送時に一括送信が可能なため業務負担が少なく、レセコン操作の手間は増えていない印象と報告した。
■薬局の現状と今後の課題
電子処方箋の受付件数は徐々に増加後横ばいとなっているが、重複投薬等チェック件数は増加傾向。これは他の薬局や医療機関のデータも蓄積されていることを表していると説明した。また、データ不具合件数は7月には数件程度となり、かなり低い状況となっている。
電子処方箋の運用を開始している医療機関や薬局はまだ少ないが、今後増加すると、データ蓄積件数も増加して薬局の質は間違いなく向上するだろうと期待した。そして電子処方箋の導入に伴う業務の簡略化により、対物から対人業務に向かうことができると述べた。
最後に、より良い医療提供のためにもできるだけ早期に電子処方箋への対応が必要であると考えを述べ、セミナーを締め括った。
(レポート作成:株式会社エニイクリエイティブ MIL編集部)
※アポクリート株式会社 中里見裕哉氏は一般社団法人日本コミュニティファーマシー協会のセミナーでもご講演されており、以下のURLでもレポートを公開しています。主に電子処方箋による課題解決の事例を中心に紹介しています。
https://em-avalon.jp/column/detail?id=202
※今回ご紹介したセミナーのアーカイブ動画をEM-AVALON会員サイト「My AVALON」で視聴することができます。