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【特集】令和6年度診療報酬改定  「在宅②」

2023.11.30

 10月4日に開催された中央社会保険医療協議会(中医協)の総会では「在宅」についての2回目の議論が行われました。主に「訪問診療」「往診」「24時間の医療提供体制」「緩和ケア」「看取り」などの各項目について課題と論点が示されています。

【目次】

  1. 訪問診療
  2. 往診
  3. 24時間の医療提供体制
  4. 緩和ケア
  5. 看取り

関連コラム「在宅①」はこちら ⬅


1.訪問診療

訪問診療についての課題としては、「在宅患者訪問診療料」の算定回数は年々増加傾向にあり、令和4年度の訪問診療を受けている要介護度4・5の患者割合が減少傾向にあるとしています。また、要介護度及び日常生活自立度等に応じたきめ細やかな対応を評価した「包括的支援加算」については、患者当たりの診療時間は要介護度が高ければ高いほど診療時間も長くなる傾向になっています。患者の急変時の頻回な訪問を評価した「頻回訪問加算」については、がんの患者以外の患者は、長期間、同加算を算定し続けている傾向にあり、「在宅医療においては症状が重度化して診療頻度が増加した場合の評価を考えるべき」との指摘が出ています。

「在医総管・施設総管」については、「機能強化型在支診・在支病における施設総管」の算定回数が近年顕著に増加しています。在宅医療に従事する医師1人当たりの在宅患者訪問診療料の算定回数は平均で月46.8回となっていますが、一部には月300回を超える医療機関も存在しており、医師1人当たりの在宅患者訪問診療料算定回数が多いほど、高齢者施設等の患者に訪問診療を提供している割合が高いとしています。

 そこで令和6年度改定に向けた論点として、以下の3点が示されています。

○在宅医療における要介護度・認知症日常生活自立度の患者割合が変化していることや診療時間等の特性が異なることを踏まえて、包括的支援加算等の患者の特性に応じた訪問診療の評価のあり方についてどのように考えるか。

○頻回訪問加算について、現在の算定状況等を踏まえ、評価のあり方についてどのように考えるか。

○在医総管・施設総管の算定状況や施設入居者の患者の状態、一部医療機関の訪問診療の実施状況を踏まえ、患者の状態に応じた適切な在宅医療の評価についてどのように考えるか。

2.往診

往診の現状の課題としては、訪問診療をほとんど行っていないにもかかわらず、往診料を多く算定している医療機関があり、そういった医療機関は夜間・深夜・休日往診加算の算定が多かった。また、コロナ禍で小児の往診件数が顕著に増えており、ほとんどが訪問診療を行っていない患者であったとしています。

そこで令和6年度改定に向けた論点として、以下の2点が示されています。

○一部医療機関における、夜間休日深夜の往診の実態を踏まえた往診料の評価について、どのように考えるか。

○訪問診療を行っている患者に対する往診と、訪問診療を行っていない患者に対する往診の特性の違いを踏まえた往診料のあり方について、どのように考えるか。

3.24時間の医療提供体制

在宅医療における「24時間の医療提供体制の確保」については、今後 2040年の訪問診療における推計患者数は2020年と比較して1.5倍に増加すると予想されており、在宅専門ではない医療機関の在宅医療の取組が重要とされています。在支診・在支病の届出を行わない理由としては、「24時間の往診担当医の確保が困難である」ためが多いとしています。

「在宅療養移行加算」の算定状況は増加傾向であるものの、全体と比較して少なく、算定していない理由としては「、周囲に在宅医療を提供している医療機関が無いため、24時間の往診体制の確保が難しい」という理由が多いとしています。

2024年から始まる「第8次医療計画」では、一人医師の診療所等が対応しきれない夜間や医師不在時、患者の病状の急変時等における診療の支援を行うことを「積極的役割を担う医療機関」に求めており、機能強化型在宅療養支援病院が担うことが想定されています。

そこで令和6年度改定に向けた論点として、以下の2点が示されています。

○今後増加が予測される在宅医療のニーズに対応する観点から、病院と診療所の役割の違いも踏まえた、在宅療養支援診療所・病院でない診療所・病院と機能強化型を含めた在宅療養支援診療所・病院の連携のあり方について、どのように考えるか。

○地域における、在宅療養支援診療所及び在宅療養支援病院の訪問診療の実施状況を踏まえた、地域の特性に応じた在宅医療の提供体制のあり方について、どのように考えるか。

(出典)中央社会保険医療協議会 総会(2023.7.12,厚労省)

4.緩和ケア

在宅における「緩和ケア」についての課題は、在宅のがん診療について、新規にがん患者を受け入れていない在支診は10.2%だが、看取りを行っていない在支診になると31.1%になるとしています。また、在宅療養の継続が困難になった患者の多くは入院しており、原因は疼痛や悪化などの進行が多いとしています。

在宅がん患者を多く入院させているのは緩和ケア病棟や急性期一般病棟であり、緩和ケア病棟の病床数が多い程、緩和ケア病棟入院割合が高くなり、在宅がん医療総合診療料の算定回数が多いほど、在宅がん患者の入院が少なくなる傾向にあるとしています。

また、人生の最終段階における意思決定支援に関する情報をICTを用いて共有している患者は、急性不安対応目的の入院等が減り、容体が急変した際の入院先として緩和ケア病棟や地域包括ケア病棟が多くなるとしています。

そこで令和6年度改定に向けた論点として、以下が示されています。

(論点)

○緩和ケアを必要とする患者について、どのような療養の場においても充実した緩和ケアを提供する観点から、がん患者に対するICT等を用いた連携のあり方についてどのように考えるか。

5.看取り

在宅における看取りについての課題としては、在宅で訪問診療の提供がない看取りのうち、14日以内の入院歴があった患者は9.7%であったが、その中で退院時共同指導料の算定があった患者は1.6%のみとなっています。 14日以内の入院歴があった患者については、退院して短い期間で死亡に至る患者が多かった。

患者本人の望む看取りを行うためには、意思決定支援の情報を入院先の医療機関と訪問診療を行っている医療機関が共有し、今後の対応方針として共同して指導を行うことが重要であり、特にがん末期の患者等においては短期間で看取りとなることがあるため、退院後速やかに訪問診療が実施される環境を整える必要があるとしています。

そこで令和6年度改定に向けた論点として、以下が示されています。

○本人の望む場所でより質の高い看取りを提供する観点から、患者本人の望む看取りを行うための切れ目のない医療提供体制についてどのように考えるか。