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電子処方箋を獲得する店舗作りと作戦

2023.12.19

2023年の1月に電子処方箋が解禁になってから1年弱が経過しました。主に医療機関、薬局の金銭負担の問題で、緩やかな導入状況でした。とはいえ、進捗が遅い場合は骨太の方針等にも出ていますので、確実に来年、再来年は電子処方箋が行える環境を整えてくるものと思われますので、早めに取り掛かりたい人にはこのコラムはおすすめです。今日は、紙処方箋から電子処方箋に変化した場合どのような薬局に処方箋が集まるのか考えてみます。

このコラム内容について

電子処方箋時代に処方箋の増やし方のヒントになる。

【目次】

  1. 電子処方箋でこのように変わる
  2. 電子処方箋集めはどこで勝負するか
  3. 今からできる組織としての準備
  4. 電子処方箋の利用申請について


1.電子処方箋でこのように変わる

患者様を中心に、医療機関(処方医)、薬局を通じた診察と服薬指導を介して医療用医薬品を受け取るまでの流れを書きました。現在の法規制では、青い矢印部分はすでに行うことができる取り組みです。さらに、薄緑の矢印に関しては、大阪府を中心に調剤の一部外部委託を検討していることを指しています。

著者作図

患者様は、医療機関で検査や直接の処置などがなければ、医療機関や薬局に直接訪問せずに、医薬品を受け取ることができます。医療機関に通いたい患者様は一定数いると思われますが、慢性疾患で忙しい患者様にとってはとても便利な仕組みとなり、一定数は紙処方箋から電子処方箋に流れるものと思われます。

薬局経営のワンポイント

この仕組みは、患者様の動きを劇的に変えるため、薬局の調剤モデルが大きくかわります。今までは距離で選ばれていた医療機関や薬局ですが、国内どこでも選べるようになります。そうなると、選ばれる医療機関や薬局はどのようなところになるのか考える必要が出てきます。

2.電子処方箋集めはどこで勝負するか

今は、流行っている医療機関からの距離が近い薬局がビジネスとして処方箋枚数を集めやすいのは周知の事実です。さらに、患者様の満足度につながるカギは現状、スピードの速さが大きな要因となっています。

それが、電子処方箋に切り替わると、患者様の応対が予約制及び郵送となるため「医療機関からの距離が近い」と「処方箋応需からのスピードが速い」はそこまで求められなくなります。

他に変わることは、遠方の患者様からの処方箋も十分に可能になりますので、処方箋を集められる薬局と集められない薬局の差が開くことが考えられます。Amazonや楽天のようなプラットフォーマーも参戦してくることでしょうし、多業種から参戦するライバルも増えることも予想されることです。

では中小薬局は、患者様に薬局選択していただく基準としてどのように考えていけばよいのでしょうか。

電子処方箋導入の初期段階と進展段階で多少変わってくると思っています。

初期段階は、配送料無料、丁寧な包装など物理的な手法などの話題が出てくるものと思われます。しかし、処方箋1枚あたりの利益額はそれなりに出ますから、処方箋が集められるなら配送料金500円程度を支払っていても電子処方箋を獲得しようとする流れに向かうでしょう。この手の手段を得意とするのは、特に、大手薬局やプラットフォーマーでしょう。あっという間に、差別化できる要因ではなく、配送料金無料や丁寧な包装では差別化が出来なくなり、薬局の質、薬剤師の質に目線が向くと思われます。

薬局経営のワンポイント

患者様第一の薬剤師がいることは、電子処方箋の吸着力になることは間違いありませんが、どんな薬剤師が患者様第一の薬剤師なのでしょうか。患者様第一の思想を貫くことが大前提と思いますが、差別化することを考えると、サービスの質へ具現化していなければならないと思います。

差別化できる薬剤師像は、いくつかあると思いますが、代表的なものとして、以下の内容が挙げられます。

  1. 薬の相談が詳しくでき、且つ健康食品の相談もできる薬剤師
  2. ポリファーマシー改善のできる薬剤師
  3. ある領域のハイリスク※に強い薬剤師

※ハイリスクとしたのは、患者さんはもっとも不安に思っている薬であり、薬剤師によってどこまで伝えられているかに差がある薬と思われます。

3.今からできる組織としての準備

組織として、今いる薬剤師の育成を強化し、患者様第一の薬剤師①~③になれるような研修プログラムを作っていくのはどうでしょうか。

たとえば、店舗によっては糖尿病内科クリニックの門前であれば、日本一糖尿病薬に詳しい薬局づくりに注力するのをお勧めします。プライマリーケア認定薬剤師を社員薬剤師は取得するなども目指します。専門資格があれば、広報的もしやすくなり、困っている患者様に届きやすくなるでしょう。

さらに、ホームページも開設し、糖尿病患者様に役立つコラムも定期的にアップしていけば、糖尿病に詳しい薬局と全国の患者様に見てもらえるようになります。

4.電子処方箋の利用申請について

現在電子処方箋が進まないのは、利用申請が進まないことが最大の原因です。

2023年12月10日時点で、厚生労働省発表で約60,000店ある薬局の中で利用申請済みが26,420店舗です。

電子処方箋は行うことが決まった取り組みですから、申請を遅らせることのデメリットはあっても、メリットはありません。この業界は先行者利益が多い業界ですから、電子処方箋の利用申請を早めに行い、電子処方箋に対応できる薬局にするところからスタートしておくのが賢明ではないでしょうか。EMシステムズのレセコンをお使いの方は、電子処方箋スターターキットのお申込みをお勧めします。

電子処方箋特設サイト:https://em-avalon.jp/electronic-prescription

今日は、電子処方箋に変わった先の未来についてのコラムを書きました。すぐに来る未来ではないと思いますが、10年以内に業界の常識は覆されると思います。その時まで試行錯誤が続くと思われますが、決して避けることのできないものです。弊社は中小薬局向けコンサルティングをしておりますが、近未来への対策をしたいとご相談頂くケースも増えてきております。この記事が皆様のお役に立てると幸いです。

著者紹介

鈴木 素邦 有限会社クラヤ代表取締役

薬学部卒業と同時に薬剤師免許取得。新卒で薬剤師国家試験予備校に講師として就職。講師業は年間100日以上、15年間で9000時間以上登壇。短時間で最大限の情報を講義内容と話し方に評価を受け、東京大学など全国32大学への出張講義。武田薬品工業(株)、ファイザー(株)等大手製薬企業20社以上の研修講師へと幅を広げた。

27歳で管理職に昇進。最初は、マネージャー職に苦戦するも薬剤師合格率(20部署中)1位を予備校始まって以来初の3年連続達成。

薬局薬剤師の経験を経て、専門部署を持てない中小薬局専門のコンサルティング会社を経営。「お客様の思いをカタチに」をモットーに中小薬局経営者の右腕になれる存在を目指している。特に、地域支援体制加算の算定や在宅導入サポートは好評。

著書に「薬の裏側(総合法令出版社)」があり、服薬指導に厚みを持たせる研修も好評。

YouTubeチャンネル(薬剤師そほうの薬局経営塾)