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ベースアップ評価料で注目!クリニックはどのような人材を確保すべきか(前編)
2024.07.26
クリニックにおいて、どのような人材を確保すべきでしょうか。人材確保はクリニック経営において最重要テーマです。良い人材を確保できるか否かで、クリニック経営の安定度が決まると言っても過言ではないでしょう。令和6年度診療報酬改定では、医療関係職の賃上げに対応するため「ベースアップ評価料」が新設されています。このベースアップ評価料の対象職員の中に、人材確保の際に考慮すべきヒントが示されています。
【目次】
1.医療機関を取り巻く賃金の状況
近年、クリニックで働くスタッフの給与が、他業界と比べて低いことから、人材確保が難しいとの指摘を受けています。実際に、医師、看護師、薬剤師以外のコメディカルの給与は全産業の平均水準を下回っています。特に、看護補助者や事務職員については大きく下回る状況にあります。具体的には、「令和4年賃金基本統計調査」によると、産業全体で賞与込み一ヶ月の給与の平均が36万1千円に対して、医師が97万1千円、看護師が40万7千円と平均を上回っている一方、その他の保険医療従事者は34万.4千円となっています。
また、2023年11月に公表された医療経済実態調査において、無床診療所の賃金の状況が示されています。その中で事務職員は、2022年度は全体の平均年収で約314万円、看護補助職員は約264万円となっています。
(出典)医療経済実態調査(医療機関調査)報告(2023.11,厚労省)
現在、物価高が急速に進んでおり、欧米諸国と比べて給与が低いことが指摘されており、政府は急速な賃上げ政策を進めており、2023年の春闘では、平均3.58%の賃上げを実現しています。しかしながら、医療・介護分野の賃上げは、医療が1.9%、介護が1.42%と半分程度の水準にとどまっているのです。
2.ベースアップ評価料
そのような状況を受けて、政府は令和6年度の診療報酬改定において、医療機関の賃上げを重点改定項目に掲げ、「ベースアップ評価料」が新設され、令和6年度に2.5%、令和7年度に2.0%を目途とした賃上げを実施することが求められています。
具体的には、外来医療または在宅医療を実施している医療機関においては、勤務する看護師など医療関係職種の賃金の改善を実施している場合の評価として「外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)」が新設されています。初診時に6点、再診時に2点、訪問診療時の同一建物居住者以外の場合は28点、同一建物居住者の場合は7点となります。
さらに、ベースアップ評価料(Ⅰ)では、賃上げが十分ではない無床診療所への救済措置として、「外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅱ)」が新設されています。初診又は訪問診療を行った場合は8点、再診時は1点となりますが、同点数は8段階に区分されており、最大で初診または訪問診療を行った場合は64点、再診時は8点となります。
ベースアップ評価料の対象は、「主として医療に従事する職員(医師及び歯科医師を除く。)が勤務していること」とされ、具体的な対象職員が示されています。また、医師事務作業補助者や看護補助者等が医療を専門とする職員の補助スタッフ以外の、専門的な事務作業スタッフは除外されています。
主として医療に従事する職員(対象職員)
薬剤師 保健師 助産師 看護師 准看護師 看護補助者 理学療法士 作業療法士 視能訓練士 |
言語聴覚士 義肢装具士 歯科衛生士 歯科技工士 歯科業務補助者 診療放射線技師 診療エックス線技師 臨床検査技師 衛生検査技師 |
臨床工学技士 管理栄養士 栄養士 精神保健福祉士 社会福祉士 介護福祉士 保育士 救急救命士 あん摩マッサージ指圧師、 |
はり師、きゆう師柔道整復師 公認心理師 診療情報管理士 医師事務作業補助者 その他医療に従事する職員(医師及び歯科医師を除く。) |
一方、対象から除外された40歳未満の勤務医師・勤務歯科医師・薬局の勤務薬剤師、事務職員、歯科技工所等で従事する者については、初再診料の引き上げで対応するとされました。
3.医師事務作業補助者の評価
2024年4月から勤務医の働き方改革が施行されることを受けて、医師の事務作業の負担軽減をさらに進めるため、「医師事務作業補助体制加算」の評価が、一律20点引き上げられています(現在のところ無床診療所は算定できません)。
現行 |
|
改定後 |
||||
配置 |
加算1 |
加算2 |
|
配置 |
加算1 |
加算2 |
15対1 |
1,050点 |
975点 |
→ |
15対1 |
1,070点 |
995点 |
20対1 |
835点 |
770点 |
→ |
20対1 |
855点 |
790点 |
25対1 |
705点 |
645点 |
→ |
25対1 |
725点 |
665点 |
30対1 |
610点 |
560点 |
→ |
30対1 |
630点 |
580点 |
40対1 |
510点 |
475点 |
→ |
40対1 |
530点 |
495点 |
50対1 |
430点 |
395点 |
→ |
50対1 |
450点 |
415点 |
75対1 |
350点 |
315点 |
→ |
75対1 |
370点 |
335点 |
100対1 |
300点 |
260点 |
→ |
100対1 |
320点 |
280点 |
また、医師事務作業補助者による医師の業務への適切な支援を推進する観点から、医師事務作業補助体制加算1の要件に、「医師事務作業補助者の勤務状況及び補助が可能な業務内容を定期的に評価することが望ましい」ことを追加するとしています。
4.まとめ
近年の物価高や医療関係職の賃金が他業界に比べ低いことを受けて、令和6年度改定では賃上げを促進するため、ベースアップ評価料が新設されました。また、医師の働き方改革のスタートを受けて、医師事務作業補助体制加算の引き上げが実施されています。
ベースアップ評価料の対象者をめぐる議論の中で、医師や看護師をサポートする医師事務作業補助者や看護補助者については含められたものの、専門の事務員は除外されました。医療機関で働く者という考え方において、医療に関与する者という考え方が取り入れられたことになり、今後のクリニックのスタッフ編成においても影響をもたらす内容と考えられます。
筆者:株式会社EMシステムズ EM-AVALON事務局