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ベースアップ評価料で注目!クリニックはどのような人材を確保すべきか(後編)

2024.07.26

 

 クリニックは生産性向上のために、「デジタル化に基づく業務効率化」と「タスクシフティング」を進める必要があり、クリニックのデジタル化の進展に伴い、必要な人材像(スキル)も変わろうとしています。

 

【目次】

  1. ICT、AI、IoT等の活用による業務負担軽減
  2. デジタル化に基づく業務効率化
  3. 医師の負担軽減を図る医療クラークの配置
  4. クリニックはどのような人材を確保すべきか
  5. まとめ

 


1.ICT、AIIoT等の活用による業務負担軽減

 令和6年度診療報酬改定において、 ICTの活用等による看護職員のさらなる業務負担軽減の観点から、「夜間看護体制加算」等の夜間における看護業務の負担軽減に資する業務管理等のうち、「ICTAIIoT等の活用による業務負担軽減」に取り組むことが望ましいことが盛り込まれました。今回は努力義務ですが、いずれはICT等を活用することが義務になる可能性があり、政府がICTの活用による業務効率化を進めたい考えがはっきりと分かります。

2.デジタル化に基づく業務効率化

 医療機関の業務効率化の背景には、生産性向上という考え方があります。生産性は「アウトプットをインプットで割った」計算式で算出されるのですが、アウトプットは売上を意味し、インプットはコストを意味しています。

 生産性を高めるためには、売上を増やすかコストを下げるかが必要になるのです。診療報酬改定率が改定毎に低下していること、アフターコロナで新規開業が増加しており、競争の激化によって患者増が難しくなっている状況下では、コストダウンに注目する方が生産性を高めやすいと考えます。

 クリニックのコストは人件費が5割以上を占めており、この人件費を抑えるために「デジタル化に基づく業務効率化」に注目が集まっているのです。クリニックにおいて、デジタルツールとして、Web予約システムやWeb問診システム、自動精算機などの導入が進んでいます。単純で定期の作業はデジタルツールを活用することで、効率化・省力化を図ることが可能と考えられているのです。

 また、政府も医療DXを推進しており、具体的にはオンライン資格確認システムや電子処方箋などをスタートさせ、将来的には標準型電子カルテを開発し、電子カルテの普及率を100%にしたいと構想しています。

 

3.医師の負担軽減を図る医療クラークの配置

  一方、医師の事務作業(カルテ作成、書類作成など)の負担軽減を目指して、医療クラークの導入が進んでいます。病院では診療報酬での評価もあるため、導入病院は全病院の3割を超えています。そのような状況に慣れている新規にクリニックを開業する医師は、開業当初から医療クラークを配置したいと考えているケースも増えています。

 医療クラークを配置する効果としては、カルテ作成や書類作成が診療時間内に行えるようになり、医師の負担が軽減されるだけでなく、診療の回転率が上がり、患者の待ち時間の短縮につながります。また、意外に見落としがちな「予約調整」においても、医療クラークがその部分を代行することで、診療の時間短縮が行えます。

 

4.クリニックはどのような人材を確保すべきか

  さて、クリニックはどのような人材を採用すれば良いのでしょうか。近年、医療事務の採用が難しくなっているという声をよく聞くようになりました。実際に、都内、地方問わず、今まで求人媒体に掲載していれば応募があったものが、応募の減少や応募自体こない、といったことが起きています。

 採用が難しくなっている原因として、少子高齢化によって、生産労働人口の減少していること、他業界に比べて医療は賃金が安いこと、医療を志す人材が減少(医療事務専門学校の募集も減少)していること、転職のしやすい社会になり他業界へ人材が流出していること、働き方改革の推進により医療業界の労働環境(忙しい、残業が多い、土日休みでない)が敬遠されていることなどが挙げられます。

 また、クリニックのデジタル化が進んだことにより、採用条件自体にも変化が起きていると感じます。紙カルテとレセコンの時代は、医療事務の能力に大きく依存していたため、採用条件は診療報酬算定やレセプト請求スキルが、採用条件の第一に挙げられてきました。一方で、IT(パソコン)スキルや医療知識は、それほど重要視されていなかったように感じます。電子カルテが当たり前に導入されるようになった現在では、医療クラークを採用したいと考える医師が増えており、診療報酬算定・レセプト請求スキルよりも、IT(パソコン)スキルが重要になってきています。レセコンから電子カルテ、クラークと時代の変化に伴い必要なスキルが変わっているのです。いまは採用に際して、医療事務という名称よりも、医療クラークや医療コンシェルジュといった名称で募集されるクリニックも見られるようになっています。

 

5.まとめ

 クリニックにおけるデジタルツールはレセコンのみという時代が長らく続きました。そのため、紙カルテの内容を見て、診療報酬点数に変換してレセコンに入力するスタッフを必要としていたのです。

 現在は電子カルテをはじめ、Web予約、Web問診、オンライン資格確認、自動精算機と、様々なデジタルツールを組み合わせる時代となりました。デジタル化を進めていくプロセスでスタッフ配置および必要なスキルが変わろうとしているのです。その代表例が医療クラークでしょう。医療クラークは、医師の隣で診療に参加し、医師や看護師が実施した診療行為を電子カルテに入力し、必要に応じて紹介状や診断書の作成を行います。次回予約についても患者と日程調整を行い、予約システムに入力します。そのため、様々なデジタルツールを操作できるITスキルが重要となっているのです。


筆者:株式会社EMシステムズ EM-AVALON事務局
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