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【業界先端情報をキャッチアップ】調剤の外部委託NEW

2024.11.20

 

秋から大阪で実証実験がスタートした調剤外部委託。業界大注目のニュースです。

調剤の外部委託が行われるようになると、患者さん、薬局双方にとって、大きな変化が起こることが想定されています。今日は、その最新情報をまとめたコラムになっています。


このコラムを読むと

調剤外部委託の概略がわかり、薬局でこれから取るべき施策がみえてきます。

 

【目次】

  1. (1)薬局業界の変化と調剤外部委託
  2. (2)調剤外部委託の現在地

 


(1)薬局業界の変化と調剤外部委託

紺色の線はすでに行うことができること、緑色の線は調剤外部委託解禁後にできること
著者作図

 

調剤外部委託の話題の前に、薬局業界は「電子処方箋」「オンライン服薬指導」という大きな変化が訪れています。普及すれば上図のように、患者は診察から薬の受け取りまで、スマホですべて完結することができます。そうなると、薬局を選ぶポイントが、「医療機関からの物理的な距離」から、「●●という薬剤師の質」に変わります。今までは、医療機関の近くにある、時間重視で選ぶ患者さんが多かったかと思います。しかし、普及すれば全てが自宅で済ますことができ、距離は関係ありません。そうなると、今まで以上に対人業務が薬局を選ぶポイントにされると考えられます。

 

経営のコツ

■「●●という薬剤師」に選ばれるために
指名が入る薬剤師とはどういう人かというと、「圧倒的に〇病の薬に詳しい薬剤師」、「患者さんから「へえー」と言って頂けるようなポイントを言える薬剤師」などです。
他にも、「いつもの薬剤師さんにお願いしたい」という声も多いかと思われます。対応してくれる人がいつもと同じというのは、安心感がありますよね。

保険薬局としては、国の方向性の観点も確認が必要と思います。

出典)厚生労働省 令和5年12月25日 薬剤師の対人業務の強化のための調剤業務の一部外部委託について

上図をみると、対物業務を縮小し、対人業務の強化がカギになっていることが確認できます。言い換えると、未来の調剤報酬体系は、上図の流れに合わせて変えて行くということと捉えて良いでしょう。

さて本題に入ります。

調剤の外部委託が行われる規制緩和が行われると、上述の対人業務の時間を捻出しやすくなります。具体的には、「一包化業務」と「一包化監査」は、大きな薬剤師の労力が掛かります。そのような業務は、調剤外部委託を行えば、店舗内のこれらの業務が縮小されます。


著者作図

イメージしやすいのは、0402通知の時に調剤業務の一部を薬剤師の管理監督のもと、非薬剤師が行うことをできる旨の通知です。調剤外部委託も、同じイメージで店舗内の薬剤師の対物業務を縮小できるものと思われます。空き時間を対人業務、在宅業務などに回すことができ、国の方向性に近づくことができます。

対物業務についても、良い変化をもたらすと考えられています。受託を受ける薬局が、色々な薬局から外部委託の注文を受けることができれば、高額な調剤機器への投資も可能になります。多くの薬局は、良い調剤機器があっても、一包化件数に対する費用対効果から購入を検討している状況でしょう。件数を増やすことができれば、積極的に調剤機器への投資が行えます。

具体的には、「一包化を効率よくする機器」と「一包化監査の機器」を揃えると1,000万円以上の設備投資が必要になります。1,000万円の投資することで、薬剤師労働時間短縮相当が10万円/月とすれば、100か月(8.3年)で回収です。耐用年数は、5年ですからこの場合は、投資対効果の観点では投資をすることは難しいかと存じます。しかし、受託する一包化件数が増えれば、薬剤師労働時間短縮が20万、30万と見込めるようになり、機器への投資が可能になります。

対物業務に調剤機器を導入することは、調剤事故や過誤を減らすメリットもあります。どんなに熟達した薬剤師であっても、体調変化もありますから、機器の方がミスなく行うことは優れているでしょう。
つまり、対物業務を集約する店舗においてもメリットが大きいものと思われます。


 

(2)調剤外部委託の現在地

出典)厚生労働省 令和5年12月25日 薬剤師の対人業務の強化のための調剤業務の一部外部委託について

 

上図は、厚生労働省が発表している調剤外部委託の流れのイメージであり、一包化以降の流れが外部委託できる形が想定されています。
その後、大阪市・大阪府で実証実験の概要が以下の通り発表されました。


出典)厚生労働省令和6年6月17日 国家戦略特区における調剤業務の一部外部委託について

 

調剤の外部委託は、一包化(直ちにひつようとするもの、散剤の一包化を除く)に限り実施できます。また、エリアの制限もあり、同一の三次医療圏内で行うことと制限がされております。

最初は同一法人内薬局(8月末から)で実証実験が行われ、10月末からは、異なる法人間薬局での外部委託が行なわれ始めています。

 これからも、実証実験の状況がニュースにでてくるかと思います。


  

 

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著者紹介

鈴木 素邦 有限会社クラヤ代表取締役 城西大学薬学部非常勤講師

1980年生まれ、千葉県出身。城西大学薬学部卒業と同時に薬剤師免許取得。新卒で薬剤師国家試験対策予備校の薬学ゼミナールへ就職。主に、「疾病と治療」を担当する講師として、東京大学など全国32大学の出張講義で教壇に立ち、大手企業製薬企業20社以上から研修依頼なども受け、短時間でわかりやすく伝わる話し方で人気を集める。27歳で管理職に昇進。マネジャー職に苦戦するも在職中に経営学修士(MBA)取得で業績が大きく向上。薬剤師合格率(20部署中)1位を予備校始まって以来初の3年連続達成。営業成績も20部署中1位達成。3万人以上の薬剤師を世に送り出す。家業事業承継の関係でやむなく薬学ゼミナールを退職し、3代目不動産会社社長に就任。

新規事業として、薬局薬剤師の経験を経て、専門部署を持てない中小薬局向けのコンサルティング会社を立ち上げ、「お客様の思いをカタチに」をモットーに中小薬局経営者の右腕になれる存在を目指している。特に、ゼロからの地域支援体制加算の算定、BCP作成、個別指導サポートは、1店舗経営からも喜ばれるサポートとして好評。大手企業向けとしては、マネジメント研修なども手掛ける。

書籍:その1錠が寿命を縮める薬の裏側
YouTube:薬剤師そほうの薬局経営塾(調剤報酬改定など発信)
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