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2025薬局経営の肝は『ベタどり加算』と『モチベーション管理職』
2025.01.24
2025年になり、1年が始まりました。今年一年も皆様に良い一年になって頂くために、『健全な経営』をするために見ておいて頂きたい点をコラムに書きます。
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【目次】
1.中小企業の取り巻く環境2025に対応する為に、高利益体質を作る
今年も『賃上げ動向』が大きな影響をもたらしてくる年となるように感じます。
2024年の調剤報酬改定後に、国の推奨もあり賃上げが多く行われています。人材募集の観点で、大手調剤薬局では平均給与の5%程度引き上げる薬局もあります。現在、厚生労働省は薬局に強制の賃上げ要求や賃上げした薬局に加算を付与しているわけではありませんが、推奨はしています。そのため、2026年の調剤報酬改定では賃上げの強制度や加算を付与してくる可能性が十分にあります。マクロの視点でも、国が取り巻く環境は、消費者物価指数が増えていますので、賃上げを推奨する世の中となります。
政治的には、今年は参議院選挙且つ、基盤の弱い少数与党であるため短期的にきこえの良いバラマキ施策が中心でしょう。長期的な財政が悪化するため、税金を主な資金としている保険医療への影響も出てくる可能性があります。
日銀の動向も今年は注意です。昨年の7月に政策金利の上限を0.25%に引き上げました。今後も、政策金利を高める可能性が示唆されていますが、連動するのは銀行から借り入れする金利が上昇します。仮に借入額が1億円、金利上昇が0.5%となれば、年間支払額は50万円上昇します。通常の企業は金利が上がれば、商品の値上げを検討するのですが保険薬局の場合、値決めは国がするので難しい部分があります。
そこで上記の脅威に備えるために、薬局は『高利益体質』になることが鍵になります。現実的には高単価処方箋を作れるようになっておくことが必要です。高単価処方箋を作るためには、ベタどりができる加算(地域支援体制加算、連携強化加算、後発医薬品調剤体制加算、医療DX推進体制整備加算)を取ることが一番重要でしょう。地域支援体制加算は取るために労力がかかりますが、それでも大手薬局よりも中小薬局に有利な基準が作られています。中小薬局向けの地域支援体制加算1と2は、大手薬局向けの地域支援体制加算3と4に比べると基準が明らかに易しいので、取れるようにしておくことが重要ではないでしょうか。
2.経営の原則から考える人件費(採用費込)
会社経営をする時に、皆さんはどんなことに注力していくことが最優先だと思われますか?
売上を上げる?売上原価を下げる?営業利益を上げる?など色々なご意見があると思いますが、抑えておいて欲しいことは、努力することで良い方向に変わる指標を見ることが一番です。一番効果がありそうなことを特定しても、自社でコントロールできない数値を頑張っても結果は変わりません。ですから、効果がありそうな所且つ、コントロールできるところを頑張るのが正解です。
■薬局で効果があり、コントロールしやすいところはどこであるのか確認しましょう。 ①売上(患者数)×(患者単価)
売上では、先ずやることは加算を最大限できているかは見ておくポイントです。
②売上原価
③人件費 中途採用で、数百万円の紹介手数料を減らすことができれば、人件費を下げることができます。そのため、薬剤師の入社・退職が少ないことが重要です。つまり、薬剤師がやりがいをもって働ける環境を提供することが極めて重要になります。つまり、会社としては『モチベーション管理職』を作ることが重要です。なお、注意点としては迎合してはいけません。迎合すると会社としての組織がおかしくなります。
④設備投資 また、数値上は見えない徒労感は、モチベーションを阻害させてしまうため、退職リスクを増やす要因になる場合もあります。 |
3.固定費の把握と行動計画
高利益体質を作る第一歩は、粗利益額と固定費(毎月何もしなくてもかかるお金)を把握することが重要です。粗利益額から固定費と金利を引けば、利益(経常利益)が分かるからです。毎月の月次報告を見て頂くと色々な項目があり、とても分かりにくいです。ですから、薬局の場合は、薬の仕入れ額を除いた経費が、固定費と捉えましょう。毎月の固定費以上に粗利益額が増えれば利益ですから、その差をどのように増やせるのかを会社の経営者だけでなく、管理職も交えて話し合うことをお勧めします。
■薬局長・管理薬剤師も入れて話しあい具体的行動まで落とし込む 数字上の課題が明確となっても、実行できなければ意味がありません。経営者のポジション的強みは、数値上の全体的な情報を持っています。現場監督(薬局長・管理薬剤師)のポジション的強みは、現場の情報を持っています。経営者は、数値上の課題を明確にし、現場監督に行動計画を立ててもらうことで、課題解決のアクションができあがります。 具体的な例) |
年始ということで、2025年の取り巻く環境を考えながら薬局が取るべき対策を書きました。
今年も皆様のお役に立てるように注力して参ります。ご質問などがありましたら、弊社ホームページのお問い合わせより気軽にご連絡ください。
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筆者:鈴木 素邦 有限会社クラヤ代表取締役 城西大学薬学部非常勤講師
1980年生まれ、千葉県出身。城西大学薬学部卒業と同時に薬剤師免許取得。
薬局薬剤師の経験を経て、専門部署を持てない中小薬局向けのコンサルティング会社を立ち上げ、「お客様の思いをカタチに」をモットーに中小薬局経営者の右腕になれる存在を目指している。特に、ゼロからの地域支援体制加算の算定、BCP作成、個別指導サポートは、1店舗経営からも喜ばれるサポートとして好評。
大手企業向けとしては、マネジメント研修なども手掛ける。
書籍:その1錠が寿命を縮める薬の裏側
YouTube:薬剤師そほうの薬局経営塾(調剤報酬改定など発信)
LINE公式アカウント:薬剤師そほうの薬局コンサル