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令和8年度調剤報酬改定へ向けた財務省の提言 ~調剤基本料1の範囲縮小・後発医薬品体制加算を見直し提案~NEW

2025.05.22

 

令和7423日に財務省で財政制度等審議会・財政制度分科会が行われました。この分科会では、社会保障制度が議題に上がり、令和8年度調剤報酬改定へ提案がされました。

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令和8年度調剤報酬改定の方向性を確認したい方にお勧めです。

 


【目次】

  1. (1)調剤報酬改定と財政制度分科会
  2. (2)後発医薬品調剤体制加算
  3. (3)調剤基本料1と集中率

 


(1)調剤報酬改定と財政制度分科会

財政健全化を掲げる財務省は、税金が投入される様々な分野への議論を行います。この分科会はその役割の一つであり、今回は翌年改定の診療報酬や調剤報酬へ提言が行われました。調剤報酬改定関係では、以下のことが挙げられました。

①対人業務の充実(調剤技術料・薬学管理料の見直し、かかりつけ薬剤師指導料、服用薬剤調整支援料(減薬提案)の充実等)

②後発医薬品調剤体制加算は政策目標の達成状況を踏まえ再編

③調剤基本料1の適用範囲を縮小すべき(集中率高い小規模店舗の適正化)

経営のポイント:①~③の項目の一部は令和8年度調剤報酬で改定される

過去の例では、令和54月財政制度分科会が行われた時、『医療DX推進』と『後発医薬品調剤体制加算』について提言がされ、令和6年度調剤報酬改定では、『医療DX推進』が実行されています。

この会議で掲げられた項目のいくつかは20266月~の調剤報酬で改定が予想されます。

 

(2)後発医薬品調剤体制加算

出典:財政制度分科会令和7年4月23日実施

会議資料で、政策目標の達成状況に応じて手厚い加算(後発医薬品調剤体制加算)を再検討するのはどうかと提案されています。

 

政策目標
R11年度迄に

R4年度

R5年度

R6年度

後発医薬品
数量シェア

80%以上

79%

80.2%

85.0%

後発医薬品
金額シェア

65%以上

52.2%

56.7%

62.1%

出典:令和6年12月4日中央社会保険医療協議会薬価専門部会(229回)資料より作成

国が定める後発医薬品の政策目標は2029年度に全ての都道府県で数量シェア80%以上、金額シェアを65%以上となっています。ところが、すでに令和6年度現在で数量シェアは目標に到達し、金額シェアももう少しで目標に到達します。そのため、財務省は手厚い加算は再検討すべきであるとの主張です。この後発医薬品シェアは、薬局が薬剤師と調剤事務双方の努力で増やしてきたもので、仮にこの加算が廃止されれば多くの薬局が収益源を減らすことになります。

 

経営のポイント:後発医薬品調剤体制加算が廃止されたら、、、

国は実行すると決めたら最後までやり遂げるのが過去の歴史から読み取れます。

後発医薬品調剤体制加算が廃止された場合に、その予算をどのように振り分けるか想像しておくことが良いと思います。

この答えはすぐには予想できませんが、例年の流れであると、秋頃から月数回行われる中医協総会の議事録を見ておくと、具体的な調剤報酬改定対策が打ちやすくなります。

 


(3)調剤基本料1と集中率

出典:財政制度分科会令和7年4月23日実施

分科会では調剤基本料1の適用範囲が議論されています。調剤基本料1であると、ベタどりできる点数が高いだけでなく、地域支援体制加算の算定もしやすいです。調剤基本料1か、否かで、店舗の黒字か、否かとなる、極めて経営インパクトの高いテーマです。

本題ですが、分科会ではR2年度、R4年度、R6年度の改定で調剤基本料1の適用範囲を縮小してきていることを評価していると同時に、まだ十分ではないため、処方箋集中率が高い月1800枚未満の薬局に対して、調剤基本料1の適用から外すことの提言となっています。なお、高い集中率を下げていこうとする国の方向性は、10年前に患者のための薬局ビジョンの概要でも挙げられています。

出典:患者のための薬局ビジョン概要(厚生労働省)

2035年までに『日常生活圏域でのかかりつけ機能の発揮(立地も地域へ)』と掲げられ、令和8年度改定だけでなく、時間はかかっても調剤報酬改定を国は使いながら、集中率の調整をしていくものと思われます。一日にしてならずですが、地道な努力が必要であると考えています。

経営のポイント:集中率を下げるには、、、

■薬局の集中率算出方法について間違えないように理解しておきましょう。

ご質問をいただくことのあること内容は以下の通りです。

①  処方箋枚数ではなく処方箋受付回数
②  同一グループの保険薬局の勤務者及びその家族の処方箋は含まない
③  オンライン服薬指導の処方箋は含まない
④  単一建物1人以外の訪問調剤の処方箋は含まない
⑤  在宅緊急訪問薬剤管理指導料を算定する処方箋は含まない
⑥  時間外加算、休日加算、深夜加算、夜間・休日等加算を算定した処方箋は含まない
⑦  公費単独(生活保護など)、自賠責、労災の処方箋は含まない

■集中率を下げる方法は難易度が高いですが、いくつか施策があります。

① 面処方箋を受け付けられる体制を取っていく
面処方箋を増やすためには、色々な複合的な地道な努力が必要ですが、不可能ではありません。弊社にも相談を頂きますが、1年以上の長期戦をすることで、徐々に処方箋集中率を下げていきます。

② 単一建物1人(個人宅)の処方箋を獲得していく。
(門前クリニックの処方箋枚数を減らすことでも集中率は改善しますが、経営悪化するためしない方が良いと思います。)

集中率を下げる方法はあまり多くはありませんが、弊社のお客様でも集中率を下げたいとご相談いただき、2年が経過しますが5%以上下がってきています。施策はLINE公式アカウントの活用などですが、凡事徹底し、泥臭い取り組みを『継続する』がポイントになってくると感じています。

 

 EM  

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筆者:鈴木 素邦 有限会社クラヤ代表取締役 城西大学薬学部非常勤講師

1980年生まれ、千葉県出身。城西大学薬学部卒業と同時に薬剤師免許取得。

薬局薬剤師の経験を経て、専門部署を持てない中小薬局向けのコンサルティング会社を立ち上げ、「お客様の思いをカタチに」をモットーに中小薬局経営者の右腕になれる存在を目指している。特に、1店舗からでも喜ばれるサービスはゼロからの地域支援体制加算の算定、数店舗経営会社からは人材マネジメント、大手企業からは、マネジメント研修が好評。

書籍:その1錠が寿命を縮める薬の裏側

YouTube:薬剤師そほうの薬局経営塾(調剤報酬改定など発信)

LINE公式アカウント:薬剤師そほうの薬局コンサル

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