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~薬剤師がおさえておきたいサプリメント事情~ 第3回 「健康食品の安全性」

2022.09.01

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健康食品は通常、天然物を原材料としている場合が多い。しかし天然物であるからといって安全であるとは限らない。ダイエット目的で利用されることの多いサプリメントは手軽に複数の成分を摂取できるが、通常の食事では同じ量を摂ることは難しい。気軽さにより健康被害が生じることも少なくない。目安量どおりに摂取しても起こりうることで、摂取する際には過剰摂取にはなおさら注意されたい。

必須アミノ酸の一つであるトリプトファンからセロトニンやメラトニンが合成されることから、寝る前に飲むと気持ちよく眠れると、かつて米国でトリプトファンの健康食品が爆発的に売れたことがある。しかし、健康被害の報告が相次ぎ、当初は不純物混入が疑われたのだが、摂取量に問題があることがわかった。経口投与50%致死量(LD50)は16g/kgで、体重50kgの大人でも2gまでなら問題なしと判断されていたが、それでも健康被害は発生した。必須アミノ酸として摂取するにしても、用量が重要なのである。ちなみに米国では、年間2万件以上の救急搬送が健康食品の利用に起因するという。

■食経験と安全性の評価

日本では、国がその安全性を評価し許可している特定保健用食品において安全性確認が厳しくなされている。食経験が長く、安全性に関する知見が多いものは毒性試験などを省略できるが、食経験の判断は摂取量、摂取期間、人口、摂取頻度を定量的に判断する必要がある。ナチュラルメディシン・データベースなどの信頼できる情報をすべて収集し安全性を実証する資料を開示することが重要だ。安全性に関するin vitroおよびin vivo試験などを実施して、用量と効果の相関関係、毒性所見などの情報を得ることでヒトでの安全性をある程度までは推察することが可能である。十分な食経験情報がない場合は、下記のような試験の実施が必要だ。

  1. 遺伝毒性:被験物質がDNAに悪影響を与え、遺伝子の突然変異や染色体の構造の異常や数の異常を起こす性質があるかどうかを明らかにする。
  2. 急性毒性:一般の食品成分では一回に投与できる量(10g/kg)で半数が死亡に至らない事例が多いため、通常は短期毒性試験として1週間の投与を行う。
  3. 亜急性毒性:通常28日間または、90日の反復経口投与を実施。最初に被検物質の生理機能を評価検討し、作用メカニズムに応じて血液学的検査、血液生化学的検査、糞尿検査を行い、投与終了後は臓器重量、病理検査などを行う。
  4. 最大無作用量:被検物質を摂取しても有害な影響が出ない最大量のこと。動物試験で得られた体重当たりの最大無作用量をヒトに換算する安全係数が用いられ、消化、吸収、代謝に関する情報も考慮する。
  5. そのほかの試験:食経験の少ないものや安全上疑義があるものについては長期経口投与試験、アレルギーに関する試験、発がん性試験などのデータが求められる。

■安全な利用を広める

PIO-NET(パイオネット:全国消費生活情報ネットワークシステム)に寄せられた健康食品に関する相談件数は2020年で3535件。購入契約に関する相談が多いが、なかには体調不良が生じたため、解約を申し出たが拒否されたなどの事例も。特に消化器障害、皮膚障害に関する相談が目立っているという。

一方、日本医師会の健康食品安全対策委員会の報告によれば、健康被害に関する情報提供件数は伸び悩んでいる。健康被害を防ぐためには、利用者が医師や薬剤師に相談することが重要になる。特に服用中、治療中の場合には気をつけたい。

医師や薬剤師が適切に情報を収集できる環境整備も十分とは言えないが、商品の容器包装に注意事項が記述されていることが品質の目安になるので、しっかりと目を通したいものだ。

(筆者)

一般社団法人日本健康食品・サプリメント情報センター(Jahfic)  理事 宇野文博