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これからの薬局に一番必要な「分かりやすいマーケティング」
2023.04.28
今回のテーマは、マーケティングです。
マーケティングをインターネットで調べると「商品やサービスが売れる仕組みを作ること」と出てきます。
確かにそうだなと思うのですが、薬局経営で考えると「マーケティングとは患者さん第一を実践すること」です。なぜならば、「患者さん第一」が伝われば、自ずと処方箋枚数は増えるからです。
コラムでは、限られたリソースの中で、どのように患者さん第一を実践していけば良いかを分かりやすくまとめました。
👆コラム内容について マーケティング概略がわかり、クリニックの力を借りずに、自力で患者さんを呼び込める方法がわかります |
【目次】
1.マーケティングの基本的な考え方
商品やサービスが売れる仕組みを考える時には、以下の流れで考えるのが基本プロセスです。
この基本プロセスを追求すれば、「患者さん第一」が可能になり、選ばれる会社、店舗になります。
2.分析フェーズ
最初の分析フェーズでは、クロスSWOT分析などを用いて自社の強みや市場の動向を考えて分析し、会社のビジョンに向かってどの領域で戦うのかを考えていきます。分析フェーズは経営戦略の一部になりますので、コラムで書いている「ビジョン、経営戦略の立て方」の経営戦略部分をご覧ください。詳しく載せております。
特に、要点であるクロスSWOT分析はとても重要な考え方であるため、再掲します。
この分析手法は、会社の状態2つ(強み、弱み)と経営環境2つ(機会、脅威)を書き出し、組み合わせることで戦略を練り上げていきます。
①「S(強み)」を「O(機会)」のどこが効果的に作用するか
②「S(強み)」で「T(脅威)」からどう守るのか
③「W(弱み)」の何を変えて「O(機会)」に対応させていくのか
④「W(弱み)」の何を変えて「T(脅威)」から守るのか
ここで、出てくる①〜④の内容が「成長可能な伸びしろ」となり、マーケティング戦略として決めることができます。では次に、マーケティング戦略を具体的な行動に落とし込むための「立案フェーズ」に進みます。
3.立案フェーズ
「患者さん第一の経営」ができる「STPで考えるマーケティング手法」を紹介します。
STPとは、セグメント、ターゲティング、ポジショニングの頭文字です。患者さんを細分化することで、ターゲティングした患者さん群には高い付加価値を与えることがしやすくなります。
👆薬局経営のワンポイント レセコンのデータを使ってセグメントとターゲティングを行ってください。 薬局のすごいところは、レセコンのデータがあることです。レセコンのデータは、一番STPで手間のかかる顧客データを細分化することを省略できます。わざわざ、アンケート等を取らなくてもレセコンのデータを使えば、来局する患者さんのデータを処理することができます。レセコンは宝の山です。 |
ターゲティングができれば、あとは問題解決をするためのポジショニングを考えていきます。
👆薬局経営のワンポイント 患者さん第一を考える(ポジショニング)では、できるだけ競合他社と差別化できることを考えておくことが大切です。つまり、「●●に強い薬局」を考えましょう。 ●●に入れる言葉は、「疾病名」「地域」「こだわり」などなんでも良いですが、患者さんにニーズがあることをあてはめるのがコツです。 |
例えば、下図の「今後かかりつけ薬局を選ぶとした場合の観点」はポジショニングを考える上で参考になると思います。
厚生労働省 患者のための薬局ビジョン実現のための実態調査報告2018より
「以前から服用している薬との相互作用について確認してくれるかどうか」は、電子処方箋が普及してくれば解消されてくると思われます。
一方で、もう一つの割合が高い「薬について分かりやすく説明してくれるかどうか」は今後も薬局次第であり、分かりやすく説明するためには、深い知識が必要でしょう。
例えば、ターゲティングされた患者さん向け領域だけでもとても詳しい薬剤師になり、伝え方の勉強をすれば、間違いなく信頼され、かかりつけ薬局に登録していただけると思います。
他にも色々な切り口があると思いますが、一つの考え方として参考にしてみてください。
👆薬局経営のワンポイント STPが決まれば、細分化された市場だけになりますが、該当患者さんの満足度は、確実に上がります。 限られた人たちだけに満足度を上げるだけでは、処方箋枚数の伸びが心配との声も聞こえてきそうですが、外部環境は「電子処方箋」「オンライン服薬指導」がどんどん押し進められており、遠隔地にいる患者さんも10年以内に獲得しやすくなってきます。つまり、分母になる患者さんを門前の患者さんから全国に広げることになり、処方箋枚数の獲得もしやすくなります。 地域に根差す方向性で考えるのであれば、「在宅医療が成長分野」ですから、在宅医療面での「患者さん第一」で考えていくのも経営的に面白いと思います。 |
4.展開フェーズ
このフェーズは、「サービス・値段・流通・販売促進」を決めることになりますが、薬局の大部分を占める処方箋ビジネスは、ほぼ国が決めています。差別化できることは、「サービス」と「販売促進」です。
私の過去のコラムで「サービス」と「販売促進」のヒントになる内容を書いておりますので、ぜひご覧ください。対人業務強化戦略⑤~小売りを極める!〜AISASモデル、カスタマージャーニーなど〜
電子処方箋が始まり、門前以外に処方箋が動きやすくなる時代がすぐそこまで来ています。
その時には、選ばれる薬局になっていなければなりません。マーケティングの基礎知識は必ず役に立ちます。
難しい言葉もあるかと思いますが、何度か読み返して自分のものにしてみて下さい。
今日のコラムが皆様の薬局がコラムを読むことで、お役に立ちましたら幸いです。
具体的なマーケティング戦略を立てるのにどうしたら良いかなど、弊社で無料相談もしておりますので、お気軽にお問い合わせください。
著者紹介
鈴木 素邦 有限会社クラヤ代表取締役
薬学部卒業と同時に薬剤師免許取得。新卒で薬剤師国家試験予備校に講師として就職。講師業は年間100日以上、15年間で9000時間以上登壇。15年間受講者満足度は常に上位。短時間で最大限の情報を講義内容と話し方に評価を受け、東京大学など全国32大学への出張講義。武田薬品工業(株)、ファイザー(株)等大手製薬企業20社以上のMR研修講師へと幅を広げた。
27歳で管理職に昇進。自身の価値観を部下に押し付け、10人中5人の部下が退職や異動希望が出る状態になりどん底を味わうが、社内から顧客満足度を上げる伝え方を聞かれることが多くなり、人を動かすトークメソッド「ストーリーライン」を体系化。
薬剤師合格率(20部署中)1位を予備校始まって以来初の3年連続達成。学長賞(準MVP)を2回受賞、その他社内表彰多数受賞。20部署中6部署統括や、バックグラウンドの異なる200名を動かすプロジェクトマネージャーも担当するが、「ストーリーライン」を活用し、全国のメンバーのまとめ上げにも成功。薬剤師の輩出数は、3万人を超える。
高齢の親が経営する不動産管理会社を事業承継するため予備校をやむなく退職。事業拡大の準備として現場薬剤師を経験し、薬局向けのコンサルティング事業を開始。今までのやり方が通用しなくなってきている薬局業界を「ストーリーライン」を通じて、処方箋単価向上、処方箋枚数の増加、オンライン時代に向けた薬局の変革。好評となり、徐々に注目され、「薬局コンサル」でホームページ検索すると、上場コンサルティング会社(船井総研)と同様に1ページ目に出てくる知名度の会社となっている。