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対人業務強化戦略⑤ ~小売りを極める!〜AISASモデル、カスタマージャーニーなど。〜
2022.12.22
薬局での対人業務を強化するために役立つ情報を5回にわたってご紹介します。
- かかりつけ薬剤師で他薬局との差別化を図る!〜患者様の目線、CSの重要性
- トレーシングレポートを磨き上げる!
- 処方箋単価を上げる!〜地域支援体制加算、かかりつけ薬剤師指導料加算など
- オンライン服薬指導を活用する!
- 小売りを極める!〜AISASモデル、カスタマージャーニーなど。
今回のテーマは、対人業務強化戦略⑤「小売りを極める!〜AISASモデル、カスタマージャーニーなど。」についてです。ほとんどの薬局での売上は、処方箋売上割合が高い思いますが、処方箋以外の売上が上がってくると収益が安定してきます。
👆このコラム内容について (1)〜(4)を読むことで売上UPの方法がわかり、店舗経営を1ランク上げることができます。 |
(1)PDCAサイクル
プロジェクトを回す場合の基本は、「PDCAサイクル」が基本になります。処方箋以外の売上向上でも「PDCA」が基本になります。
計画は、単に実行しただけでは成果につながらないことが多いです。
そして、一度ミスを犯してしまったのに、「なぜそのミスを犯してしまったのか」をうやむやにしたままでは、また同じミスをしてしまいます。
このPDCAサイクルで重要なのは、計画を立てて実行した後に、成功や失敗のいずれの場合でも必ず評価を行い、改善に繋げていきます。PDCAサイクルを回すことで、以前よりも大きな成功を期待できますし、失敗を繰り返さない方法を身につけることができます。
👆薬局経営のワンポイント (PDCAサイクル実践のコツ) 小売りでPDCAサイクルを回すためには、数値分析できることが必要です。 数値分析のためには、データに出力できるPOS(Point of sales)を導入します。従業員の経験と勘では、新しい気づきや作戦は生まれにくいです。なお、具体的な分析としては難しいことをせずに、エクセルデータなどを簡単に解析するだけでも十分です。代表的な切り口は、以下の商品や重要顧客の洗い出しです。 ① (時期)×(上位商品売上) 売上上位商品は、看板商品ですから目立つ場所にわかりやすい説明をつけて設置しましょう。 また、売れる商品が季節によって変わりますから、季節や月間で配置を変えるのも効果的です。 ② 上位10-20%※の顧客の動向把握 ※この上位とは購入額をベースに考えます。 上位10-20%の顧客は、一般的にお店全体の購入額の50%以上を占めることが多いため、この上位顧客によって、店舗が支えられています。このお得意様の脱落が起こらないようにすることは極めて重要です。
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(2)AISASモデル
AISAS(アイサス)モデルとは、お客様が購買する時のステップを示したものです。
お客様は、商品に対して「認知」から始まり、「興味」を持ち、「検索(比較検討)」の上で「行動(購入)」し、購入した感想を「共有・拡散」すると考えられています。
AISAS(アイサス)モデル |
必要なこと |
①(attention) 認知 |
商品棚を作る、イベント行う |
②(Interest) 興味 |
試飲、商品の実態がわかる名前、数字や体験談などの具体的な効果の訴求など |
③(search・share・spread) 検索・共有・拡散 |
インターネットや周辺口コミと比較、共有、拡散 |
④(action・accept) 行動・受容 |
購入してもらう。購入を継続してもらうための定期的声かけ |
⑤(share・spread) 共有・拡散 |
コミュニティ、SNSシェア等で拡散できる |
👆薬局経営のワンポイント AISASモデルを理解から購買に繋げるコツ 薬局は、お客様の行動を理解し、スムーズに購入に繋げていくために必要なことを書き出してみると、するべきことが見えてきます。 具体的な内容は下記を参考にしてください。 ・認知・興味について 事前に調べた売上高の高い商品を中心に考えます。該当商品の認知・興味は、目立つ商品棚に置くことや、補助説明をつけたりすることで訴求します。人員的に余力があれば、処方箋の待ち時間に声かけや薬剤師が投薬時に必要と思われる患者様に訴求するのは効果的です。 高額商品については、お客様は検索(他商品との比較)をすることが多いと思いますが、1,000円以下の商品であれば、興味を持っていただいた段階で行動(購入)をして下さることも多いと思います。
・共有・拡散について 今の時代は、一人一人が発信することができる時代ですので、商品の良し悪しについても拡散されます。 薬局としては、良い情報を発信していただけるように工夫をしておくことが重要です。
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(3)カスタマージャーニー
カスタマージャーニーとは、お客様が商品・製品・サービスの購入などの意思決定に至るまでのプロセスを旅のようにまとめることであり、どのタッチポイントでどういったコミュニケーションを取る必要があるのかを整理することを目的としたマーケティング手法です。具体例でみていきます。
例)人物モデル:30代女性。薬の副作用で体重増加。ダイエット願望のある方。
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お客様の感情変化 |
提供価値の例 |
①(attention) 認知 |
何これ? |
場所:店舗 アクション:商品の特徴がわかること。 ゴール:人物モデルの目に飛び込んでいくもの。 |
②(Interest) 興味 |
気になる。 |
場所:店舗 アクション:具体性を高め、具体的な成果がわかるようにする。 ゴール:人物モデルが自分にもできると思わせる。 |
③(search・share・spread) 検索・共有・拡散 |
なるほど。 |
場所:スマホ アクション:なし ゴール:他商品との比較検討で優位性が伝わる。 |
④(action・accept) 行動・受容 |
この商品欲しい! |
場所:店舗 アクション:薬局で購入すると、ダイエット継続のサポートが受けられる。 ゴール:薬局での購入を考えてもらう。 |
⑤(share・spread) 共有・拡散 |
友人にも教えよう! |
場所:スマホ アクション:拡散してもらうことで、特典がつく ゴール:友人に良い評判を広げてもらいたい。 |
この薬局では、タッチポイント毎にお客様の感情を変化させる提供価値が考えられています。
しかし、③(検索・共有・拡散)のポイントでは、アクションがないことがわかります。
カスタマージャーニーは、アクションの抜け漏れを明確化させることにもなりますし、可視化することで、お客様への対応を従業員間で共有することにも優れています。
(4) 親切
(1)〜(3)では分析方法などテクニカルなことを書いてきましたが、最後は異なる切り口です。
実は、数値分析をして、忠実にマニュアルに沿って行動しても、予想通りの売上に到達しないことも多々あります。理論と現実に差があるのです。理由は、購入するのは機械ではなく、感情を持っている人間だからです。結論を申し上げると、お客様に好かれなければ商品を購入していただけないという商売の鉄則があります。
👆薬局経営のワンポイント 親切心の重要性 お客様から好かれるためには、ちょっとした親切が必要となります。丁寧にご説明、店頭商品の使用期限チェック、重い商品であれば交通手段の確認などいろいろありますが、親切は、どんな時にも、誰にでも有効です。お客様に寄り添い、ちょっとした心配りができれば、必ずお客様に伝わります。 逆に分析結果を元に、ターゲット顧客がきた!と勇んで対応すると、お客様にはその気持ちが伝わりますのでご注意ください。 |
以上、「対人業務強化戦略⑤~小売りを極める!」となります。
少しでもコラムが薬局経営のお役になれば幸いです。
👆薬局経営のワンポイント 対人業務と会社変革の現在地
5回にわたり、「薬局経営に欠かすことのできない対人業務」を色々なテーマでコラムに書いてきました。 厚生労働省が「患者のための薬局ビジョン」で繰り返し、薬剤師は対人業務に注力するよう求めています。 また、第三期医療費適正化計画(2014年度〜2023年度)に、特定健診・保健指導の実施率向上、後発医薬品の普及、糖尿病の重症化予防、重複・多剤投薬の是正が挙げられております。薬剤師業務で考えると上記課題の解決には、対人業務能力が必要ですし、対物業務では超高齢化社会到来で膨れ上がる医療費を適正化できないと結論づけていることを意味しています。つまり、支出が増えていく国としては、財源面でも対人業務強化推進の傾向は益々続くと思われます。
薬局経営では、対物から対人へと思考を切り替えていくことは、簡単ではありませんが、待ったなしの状況です。しかし、会社を変革できるのは経営者のみです。先頭に立ち、経営の陣頭指揮をするしか会社は変われません。コツは、「知恵」と「行動力」がものを言うと思います。この5回シリーズの対人業務のコラムは、薬局経営の「具体的な知恵」を意識して書きました。少しでもお役に立てれば幸いです。
弊社では、薬局専門の経営戦略や運営のお手伝いなど薬局経営サポートを行っています。 大部分の薬局は、国の方向性に準拠できれば、収益が上がることはご存じで、戦略を現場のオペレーションに活かすことや、組織を強化することが、課題として悩んでらっしゃることと思っております。
薬局で解決できない時には、ホームページより無料相談を承っていますので、気軽にご連絡頂ければ幸いです。ちょっとしたコツで組織はガラッと変わることも多くあります。 |
著者紹介
鈴木 素邦 有限会社クラヤ代表取締役
2004年城西大学薬学部卒業。2017年グロービス経営大学院経営研究科(MBA)卒。
学校法人医学アカデミー薬学ゼミナールにて講師・商品開発・組織開発・マネジメント業務に従事。大手薬局、地域薬局、スタートアップ薬局にて薬剤師業務を経験。
現在、有限会社クラヤ代表取締役。薬局向け経営コンサルティング(クラヤコンサルティング)、人事評価システムの導入、処方箋単価向上、店舗開発、有料職業紹介業等のサービスを展開。